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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/2397
2009年12月17日付
中国の習近平国家副主席は、天皇にお辞儀こそしなかったが、甘い言葉をかけた〔AFPBB News〕
012年に胡錦濤・中国国家主席の後を継ぐ最有力の後継者候補と見られている習近平副主席は今週、日本の天皇のもとを訪れた。こうした訪問は通常数カ月前からお膳立てされるが、中国政府は数日前に通知しただけだった。
これは、皇室の作法からすれば、午前3時に隣人の家のドアをドンドンと叩き、コップ1杯の砂糖を貸してくれと頼むようなものだった。
このような短期間の通知でも拝謁を許可するよう求めた鳩山由紀夫首相の要請は、国内の一部、とりわけ右寄りの人々に批判された。彼らは一連の出来事の中に、中国政府にこびへつらうことを厭わない中道左派の新政権の姿を見て取った。
皇室の予定を管理する、厳格で秘密主義の宮内庁では、普段は控えめな長官さえもが、天皇を外交の道具として使うべきではないと公然と異議を唱えた。
【小泉時代とは様変わり】
このちょっとした騒動は、より重要な事実を覆い隠してしまった。それは、仮にも天皇との面会が実現したという事実である。習副主席は、お辞儀はしなかった(バラク・オバマ大統領と違って)。だが同氏は、明らかに全く準備なしの即興的な発言の中で、相手の気に入るような甘い言葉をかけた。「私の訪問が両国の友好的協力の発展に寄与し、両国民の友好を促進してくれることを期待します」と語ったのだ。
小泉首相(当時)の靖国参拝に抗議し、北京で繰り広げられたデモ〔AFPBB News〕
トーンの変化がいかに驚くべきものであるかを理解するには、数年前の状況を振り返るだけで十分だろう。
小泉純一郎氏が首相を務めた6年近くの間(小泉政権は2006年に終了)、両国は、台本が用意されたこまやかな配慮をやり取りするよりも、外交的な非難を浴びせる可能性の方がはるかに高かった。
小泉氏が、中国政府が忌み嫌う靖国神社の参拝にこだわる姿勢を示していたことは、事実上、同氏が中国に足を踏み入れることを禁じられていることを意味していた。
2005年には、日中関係は危険な領域に入った。国連安保理事会の常任理事国入りを目指した日本の(失敗に終わった)努力がきっかけとなり、3週間にわたる反日デモが起き、中国全土で日本の商業施設や外交施設が攻撃されたのだ。
【反日カードが効きすぎた? 安倍政権下で歩み寄り】
安倍首相(当時)は就任早々に訪中した〔AFPBB News〕
こうした集団抗議行動は中国政府に、反日カード――天安門事件の後、長年愛国心を育てるのに役立った――が行き過ぎたと思わせたのかもしれない。
共産党指導部は、小泉氏の後に首相に就いた安倍晋三氏が前任者以上にあからさまな国家主義者だったにもかかわらず、同氏に対して和解の意を表すのに尽力した。
相互互恵関係を構築するという両国の約束が一気に多くの外交行事を引き出し、細心の注意を払って演出された胡錦濤国家主席と温家宝首相の訪日も執り行われた。
注目すべきことに、こうした緊張緩和――具体的な行動によって築かれたというよりは、美辞麗句で織り上げられたもの――はそれ以来続いており、花開いてさえいる。これを、この地域の他の重要な関係のお粗末な状況と比べてみるといい。
中国とインドは、領土と地政学的影響力を巡る一段と険悪な論争で膠着状態に陥っている。普通なら太平洋で一番仲のいい友人同士である日本と米国でさえ、同盟関連の争点、特に沖縄の米軍海兵隊基地の移設という10年がかりの計画の承認を渋る鳩山首相の抵抗によって仲違いしている。
【中国が日中関係の改善を望む理由】
それに比べると、日中関係はかつてないほど良好だ。これは主として、中国政府がそうあってほしいと望んでいるからだ。だが、なぜだろうか。
理由の1つは、日本との関係改善は、中国の台頭が脅威ではないということを世界に納得させるための宣伝活動の役に立つことである。また中国は、なお中国が学ぶところが多い戦後日本の発展のいくつかの面を称賛している――そしてそれを小声で囁いてもいる。
【実は日本に憧れる中国人】
環境を例に取ってみよう。40年前、日本の大気や河川は今の中国とほとんど同じくらい有害だった。以来、日本は公共政策と技術的解決策を総動員して、世界で最もきれいで最もエネルギー効率の良い国の1つになった。中国政府は、その方法を知りたがっている。
中国人は寿司や鉄板焼きも好き〔AFPBB News〕
一般大衆のレベルでも――その関係はまさに心からの憎しみによってこじれてきた――、日本は驚くほど大きな影響力を持っている。我々は中国人が米国のライフスタイルに憧れていると思っているが、実際には彼らの憧れの多くは日本に向けられている。
多くの中国人は寿司や鉄板焼きを食べ、新幹線で旅行し――今中国のあちこちで敷設が進んでいる――、日本のファッションを真似したがっている。
日本も、数年前から最大の貿易相手国となっている中国から得るものは沢山ある。中国は、高コストで技術的に進んだ成熟経済が必要とするものをすべて持っている。巨大で安価な労働力や、大きくて拡大している消費市場などだ。両国が互いにうまくやっていこうと思わない理由があるだろうか?
実際、アジアという文脈の中に自国をより強固に組み込むための戦略の一環として、中国にさらに接近することは、鳩山政権がはっきり打ち出した政策目標である。だが、アジアで最も刺々しい関係の1つだった日中関係から、永久に刺が抜かれたと宣言するのは早すぎるかもしれない。
【再び反日カードを切る可能性も】
こと、本質的な問題――争点になっている海底ガス田を巡る境界線紛争の解決を図ろうとする長年の取り組みなど――になると、具体的な進展はほとんど見られない。美辞麗句は、歴史的な傷跡を癒やすうえで限界があるのである。
また、日本政府に対して行儀よくするよりも意地悪くする方が中国政府にとって役に立つ時が来る可能性もまだ残っている。共産党がいつか国内問題から注意をそらしたいと思ったら、その時はまた反日カードを切る衝動に駆られるかもしれない。