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2009年12月17日 (木)
咽元過ぎて熱さ忘れる政策が鳩山政権のリスク
鳩山政権が直面する三大難問は@個人献金、A沖縄普天間飛行場移設、B景気対策・予算編成である。
献金問題については、メディアが懸命に鳩山総理大臣攻撃を展開しているが、首相の進退問題につながるような問題ではないことが明確化しつつある。
政治資金管理団体への貸し付けは違法行為ではない。鳩山首相の母親から提供された資金が贈与にあたると認定されるなら、贈与税の支払いが実行されることになるだろう。税務上の解釈の問題である。
鳩山首相の元公設秘書が政治資金収支報告書に事実と異なる記載を行ったことが政治資金規正法違反に該当するとされる見通しだが、鳩山首相の資金を秘書の独断で個人からの献金と記載したことは、虚偽記載に該当するのかも知れないが悪質性の見地から、重大な問題とみなすことはできない。
「政治とカネ」の問題の本質は「政治権力と大資本の癒着」にある。政治家が企業からの資金を隠ぺいする、いわゆる「ウラ金」や「賄賂性のある資金」が重大な問題なのだ。自民党は通常国会で鳩山首相を攻撃しようとしているのだろうが、「政治とカネ」の問題で本来追及されなければならないのは多数の自民党議員であることを十分に自覚する必要があるだろう。
沖縄普天間飛行場移設問題で鳩山政権は米国のごり押しに押し切られずに、日本国民の利益を守る行動を毅然と示している。鳩山政権を懸命に攻撃しているマスメディアと御用言論人は、ほとんどが心を外国勢力に売ってしまっている
「売国者たち」
売国者たちの末路
著者:副島 隆彦,植草 一秀
販売元:祥伝社
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である。
基軸である日米安保、沖縄の負担軽減、米軍の再編をすべて満たす解を追求するべきである。そのために半年程度の時間を費やすことを躊躇するべきでない。自民党は13年もの時間を要しながら、問題を解決できずに今日まできたのだ。
ヘリコプター離着陸施設の機能と戦闘機離着陸用の滑走路機能とを区分して問題解決を図れば、解を必ず見出せるはずである。辺野古に1300メートル滑走路を建設することを既得権益として離したくない勢力が、即時決着を大声で叫んでいるに過ぎない。
鳩山政権が抱える最大の問題は景気・予算編成問題である。
この点を本ブログで再三指摘してきた。11月27日までの期間、鳩山政権が示していた財政政策運営姿勢は極めて危険なものであった。2009年度は前政権である麻生政権が14兆円もの補正予算を編成したために、強い景気支持予算になった。
ただし、麻生政権が編成した14兆円規模の第1次補正予算には重大な問題があった。公的施設の営繕費2.8兆円や天下りの温床となる58の政府基金への4.8兆円の拠出など、官僚利権に対するお手盛り予算が満載だったからだ。
予算を論じるときには、予算の規模と予算の内容の双方に十分な検討を加える必要があるのだ。鳩山政権が抱えた重大リスクは2010年度に規模の面で超緊縮財政を実行する可能性を高めていた点にある。
『金利・為替・株価特報』にこの問題を詳述してきた。鳩山政権幹部もこのレポートを熟読されていることと思う。11月29日以降、鳩山政権の政策姿勢が大きく変化した。2010年度に向けての「超超緊縮財政運営姿勢」が「中立の財政政策運営」に転換する方向が示されたのである。
『金利・為替・株価特報』099号は12月24日発行予定で、これが年内発行最終号になる。099号に改めて詳述するが、2010年度財政が日本経済に対して強い下方圧力を与える可能性は、現段階で完全に払拭されていない。
この問題が鳩山政権の最大のアキレス腱になると考えられる。
11月下旬にかけて、強い警鐘を発したのは株式市場だった。日経平均株価は11月27日に9081円の水準にまで下落した。9000円の大台割れ寸前に下落したが、この水準はチャート分析上も極めてクリティカルなポイントだった。
日経平均株価終値が7月13日の9050円を下回ると、株価の三尊天井が成立し、株価下落トレンド入りが強く印象付けられる局面だった。
このタイミングで仙谷由人行政刷新相がテレビ番組で「景気配慮型予算編成の考え方」を述べた。これまでの杓子定規な超緊縮財政政策運営を景気配慮型運営に転換する方針を示唆したのである。
この方針転換が12月8日決定の緊急経済対策に反映された。2009年度第2次補正予算規模は当初3兆円弱の規模とされてきたが、これが7.2兆円に拡張された。
政策方針の変化を敏感に反映したのが株価である。日経平均株価は12月4日に1万円の大台を回復した。日経平均株価はわずか5営業日で1000円以上も急騰したのだ。その後、日経平均株価は12月16日に10,177円にまで上昇した。
ところが、12月17日の日本経済新聞朝刊に、2010年度一般会計予算規模が92兆円前後に調整されるとの記事が掲載された。
国民新党と社会民主党は2009年度第2次補正予算と2010年度当初予算を合わせて、2009年度第1次補正後の102.5兆円を下回らないようにするべきとの方針を示している。2010年度当初予算が92兆円規模で編成されると、2009年度第2次補正予算と2010年度当初予算の合計は99兆円強の水準になる。
実際には2009年度第1次補正予算が3兆円弱執行停止になっていること、地方交付税交付金が3兆円程度減額されることなどがあり、細かな再計算が必要である。この点については『金利・為替・株価特報』2009年12月24日号=099号に詳述する。問題は鳩山政権の財政政策運営がもう一度「緊縮」の方向に引き寄せられ始めた点にある。
11月末の株価下落局面は鳩山政権の大きな危機であった。この危機から鳩山政権を救出したのが、国民新党や社会民主党が主導した財政政策運営の軌道修正だった。その成果で株価も上昇し、鳩山政権は一息ついた。自民党は「鳩山政権不況」を喧伝(けんでん)しようと待ち構えていたが、肩すかしを喰らった。
ところが、「喉元過ぎて熱さ忘れる」だろうか。株価反発のなかで、再び緊縮財政論が政府内で息を吹き返してきた。緊縮財政論を主導しているのは菅直人国家戦略相と藤井裕久財務相であるように見える。政権内部での権力争奪戦が展開されているように見えなくもない。
12月17日の株価が前日比下落で取引を終了したのは、同日の日経新聞朝刊が報じた2010年度予算編成方針を背景にしたものであると考えられる。
金融市場は鳩山政権が景気回復と目先の財政収支尻のいずれを重視するのかを注視している。「経済あっての財政」の基本を無視した政権が、過去にいずれも重大な失敗を犯した歴史から、正しい政策姿勢を学ばねばならない。
鳩山政権がもう一度緊縮方向に財政政策運営の舵を切るなら、致命的な結果が待ち受けるに違いない。為政者は歴史と合理性の前に謙虚でなければならないはずだ。
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