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小沢民主党幹事長らが大挙して官邸に乗り込んで、鳩山首相らに国民の声として伝えたのは「道路特定財源の暫定税率の存続」だった。
民主党が新しく決めた陳情ルールは、何かと物議を醸(かも)していた。私もあまり芳(かんば)しいことだとは思っていなかった。小沢氏は、2800件の陳情があったと誇らしげに語っていた。そうして国民の声を反映した結果が、「道路特定財源の暫定税率の存続」だった。いったい誰を見て、誰の声に耳を傾けたのか。唖然とせざるを得ない…。
私が唖然としたのは、その結果ではない。わずか“2兆円ちょっとのこと”で、民衆革命を崩壊させる行動に唖然としているのである。この言動は、一昨年の参議院選挙後の“大連立騒動”を彷彿とさせる。あの時は、民主党の幹部が反対して事無きを得た。が、今回、小沢民主党幹事長は民主党幹部が居並ぶ中で「道路特定財源の暫定税率を存続せよ」と宣(のたま)ったのだ。鳩山首相が唯々諾々とこれを受け入れたら、鳩山内閣は早晩行き詰まる。小沢幹事長は、またもや国民を裏切ろうとしているのだ。
鳩山首相は、これまでこの問題で一回もブレなかった。「廃止すべきモノは、一旦廃止すべき」と主張してきた。それが正しいのだ。それこそが、税に対する正しい態度であり、政権交代の基本に忠実な態度である。政権交代の基本は、「興一利不若除一害」である。新しいこと(興一利)は、できなかったらできないで仕方がない。しかし、国民の多くが止めて欲しいと望んでいることだけは、命懸けで止めなければならないのだ(除一害)。
普天間基地移設問題に関して、私は鳩山首相の態度を支持してきた。だが、道路特定財源の暫定税率に関して、鳩山首相が小沢民主党幹事長らの“要望”を受け入れることは、支持できない。それは政権交代に託した国民の夢を打ち砕く所業だからである。道路特定財源の暫定税率の廃止によって、国民は2.5兆円の減税の恩恵を受ける。2.5兆円は90数兆円の国家予算の中ではわずかな額である。だから、私は“わずか2兆円ちょっとのこと”と言ったのだ。
額の問題ではない。道路特定財源の暫定税率をどう考えるかという問題なのだ。税は国政の基本である。その基本を間違うと、トンでもないことになる。国民を舐めてはならない。年末までに、鳩山首相はこの問題に対して態度を明確にしなければならない。すでに与党ボケしている閣僚や民主党幹部を向こうに回して、鳩山首相は決断しなければならない。実に難儀なことである。しかし、この問題で筋を通さなければ、鳩山首相は頓挫する。そして、新体制そのものが頓挫するのである。まさに正念場である。