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【神州の泉―高橋博彦】
2009年12月14日 (月)
小沢ー鳩山ラインの壮大なサバイバル戦略
サンデープロジェクトに自民党清和政策研究会の町村信孝氏が出ており、普天間問題や日米安保について語った。町村氏は竹中平蔵氏とともに、小泉政権時代に米国朝貢作戦を敢行した日本破壊者であり大戦犯の一人である。この人物が国民洗脳を担当とするサンデープロジェクトに出ることは、本格的に鳩山政権を攻撃する意図であることは明白だ。
町村氏曰く、普天間問題は辺野古に移るとかそういう問題ではなく、日米共通のアジア戦略の問題であり重大な防衛の要でもあると言った。加えて、民主党には国家防衛認識が欠落していると言う。これは日米安全保障条約徹底堅固の立場であり、戦後日本の属国意識の典型である。自民党清和会が堅持してきた日米関係は、吉田ドクトリンという属国被支配体制の最悪の展開として結実したものである。その最大の状況が小泉政権であった。
要は、鳩山首相の普天間問題に対する一見煮え切らない態度と、結論を先延ばしにすることを、日米関係に重大な支障を及ばすかの言い方に収斂していることだ。これは産経グループの鳩山政権批判とまったく同じである。また、田原総一郎氏は、中国の習近平国家副主席が15日に天皇陛下と会見する段取りになったことを、一ヶ月ルールを敢えて破ってまで民主党が強行したことを振ったが、町村氏はこれは小沢さんの指令ですよと言った。
宮内庁の羽毛田信吾長官は「たいへん異例のことだが、まげて陛下にお願いした。こういったことは二度とあってほしくない」と述べた。中国側の強い要望を外務省はいったん断ったが、それにもかかわらずそうとう強い要望があったらしい、鳩山首相が平野博文官房長官に会見の実現を指示した。これが天皇陛下の政治利用ではないかと今、かなりの問題になっている。同番組に出ていた国民新党の亀井亜紀子氏も反対の意を表した。これが中国政府の意を汲んだ鳩山政権のごり押しであるなら、明らかな憲法違反であり許される行為ではないが、マスコミの言い分をそのまま信じてもいいだろうか。
宮内庁にも米国CIAの影響が強く及んでいる可能性を考えれば、宮内庁長官の今回の記者会見のニュアンスにも留意する必要がある。しかし、言われるように、小沢幹事長が党所属国会議員143人を含む600人を引き連れて中国訪問をしたことと、習近平国家副主席が天皇陛下に会見を求めたことがある種の政治的バーターだとすれば、確かに大問題である。しかし、もう一方の視点として、小沢幹事長と鳩山首相は、壮大な国防的計画に基づいて動いている可能性を感じる。
鳩山首相は普天間問題で否応なくぎりぎりの折衝を迫られ、表面的には態度を保留しているが、実は彼は最終の腹が固まっていて、日米安保条約を根本から変質させようと考えているのではないのかと思う。これには小沢一郎幹事長の「第七艦隊発言」が因を為しているように思う。つまり小沢・鳩山ラインの本音は、普天間問題の決着案を、基地周辺域の住民の安全と安寧(あんねい)を確保するという一点に絞っているように見える。米国の宗主国命令に可能な限り抵抗を試みる魂胆ではないのか。
鳩山首相と小沢幹事長の真意は、米国と旧自民党政権が、普天間飛行場をキャンプ・シュワブ沿岸部に移設するとした日米合意に対し、基本はその案の見直し、つまり県外移設を主張する覚悟ではないだろうか。これについて解答を引き延ばしているのは、国民にこの問題を知らせるためであり、地元住民の苦痛と沖縄米軍基地問題の深刻な歴史を考えさせるためではないだろうか。
国民は米軍に軍事防衛を肩代わりしてもらっているという前提で、毎年多額の税金と便益を米軍施設に与えているが、その税負担感と地元住民の強いられている苦痛を日本人全体に察知してもらう意図もあると思う。80年代の日米経済摩擦が90年代になって深刻な対日経済侵略になったことを鑑みれば、いざという時に米軍が日本防衛のために動くと思うのは、実は大きな錯誤ではないだろうか。守るかどうかわからない他国の軍隊を自国領土に駐留させて置くことこそ、国家として異常である。
日米安保は欺瞞の条約である。友好国なら経済侵略は行わないはずだが、現実は冷戦終結の後に、年次改革要望書という対日経済占領プログラムを発動し、日本の優良資産を徹底的に奪い尽くす暴挙に出ているのが米国だ。その収奪計画の中心に郵政民営化がある。鳩山政権はこれを寸前で食い止めている。同盟国が対日経済占領を実行する事実は、軍事同盟自体が当てにならないことを意味している。
日本人自身の中に洗脳的に対米依存の習慣性が刷り込まれており、そうとうの覚醒がない限り脱却できない。この洗脳状態を恒常化させて米国の言いなりになってきたのが、55年体制の自民党であり、その属国意識の究極点として小泉政権が登場した。この政権がやったことは国民生活の破壊であった。先見の明があるエコノミストの植草一秀さんは、小泉政権が発足する一年ほど前、もし小泉純一郎氏が国政の舵を切ると仮定した場合、はっきりと暗澹たる未来を予感した。
植草さんの予感は的中し、小泉・竹中政策は日本を奈楽の底に沈めた。彼は亡国ベクトルを修正すべく、経済学者として小泉政権の間違いを声高に指弾してその手を緩めなかった。ここにもう一人、政治の世界で小泉政権の亡国性を強く憂える人物がいた。当時の小沢一郎自由党党首だった。2002年(平成14年)、民主党と自由党は相互協力して政権交代を目指すことに合意した。
平野貞夫氏の「わが友・小沢一郎」によれば、この当時の小沢幹事長は「これ以上、小泉政権の棄民政治を続けさせるわけには行かない。日本に残された時間は長くない」という強い危惧の念を持っていた。この時期、植草さんと小沢氏は小泉政権に対して同じ亡国の危機感を共有していたようだ。小沢氏は小泉・竹中政治が敷いた亡国ベクトルを変える唯一の方図こそ、自由党と民主党の合併による政権交代であると腹を決めていた。そのためには自由党の解党という屈辱を受け入れて、民主党に合流する道を選んだ。平野貞夫氏はこれを、「得るは捨つるにある」と形容していた。
翌年2003年、合併は成し遂げられた。この年の五月に、植草さんはりそなインサイダー疑惑を糾弾し始めていた。しかし、民主党には小泉・竹中路線と内通する勢力や労組組織の既得権にすがる勢力、自民党族議員と変わらない勢力など、一枚岩とは程遠い状態であり、まともな政党とは言いがたかった。これは国民もよく知っていた。紆余曲折があり、小泉氏の歴史的暴挙である郵政解散総選挙では、民主党は惨敗した。岡田代表が引責辞任、前原誠司氏が代表になったが、小沢氏の思惑とは離れ、前原体制は自民党と親和的な路線を取った。
2006年4月の代表選で小沢氏が選ばれた。旧自公政権やマスコミは小沢氏を執拗に攻撃し、いよいよ政権交代実現が濃くなってきた2009年3月、東京地検特捜部は西松建設の献金問題で小沢氏の公設秘書を逮捕した。明らかに小沢氏本人の政治生命を奪うための国策捜査であった。植草さんが二度の国策捜査に狙われ、小沢一郎氏も国家ヤクザに狙われたのは明らかな理由がある。両者とも、アメリカを睨んだ救国意志を実践活動に反映したからに他ならない。
それは小泉政権の国策性格を知ればよく見えてくる。自民党55年体制と小泉政権は、政官業トライアングルの癒着構造と官僚主導体制は共通した悪弊であったが、決定的に異なっていた部分もあった。それは政官業癒着に外国資本が加わり、対日金融収奪という新たな破壊的構造が出来上がったことである。経世会政治は政官業癒着の悪弊はあったが、国民への再配分は持続していた。
しかし、小泉政治が国策に、市場原理至上主義と外資優遇政策を含めてから、国民への再配分は露骨に減少し、家計を逼迫させた。しかも官僚主導は是正されなかった。かくして国民生活は破壊された。それが小泉・竹中構造改革であった。小泉初期政権は国民にとって最悪だった。国内的には財務省が財政再建原理主義を強行して経済を失速させ、これと連動して、国外的には外資勢が日本の優良資産を掠め取った。郵政民営化は対日収奪の中心的計画である。
アメリカは冷戦中の庇護国家から一転して略奪国家へ変貌し、日本の富を奪い去ることばかり考えている。彼らが日本の国防を肩代わりするなど、幻想の最たるものだろう。しかし、国家の自主性を失った戦後政治の劣化は、アメリカの山賊気質を見抜けないまでに堕落してしまった。小沢氏や鳩山首相は、戦後政治がもはや属国状況の受容では持たないという切迫した認識を持ったのではないだろうか。何らかの方法でアメリカの桎梏を外さないと、日本のサバイバルはできないという共通認識に至っているものと思える。
パフォーマンスと言われようが、600人の訪中団を引き連れて中国行脚を行ったのは、米国の圧力に対する牽制以外の何物でもないと思う。中国を中心とした東アジア諸国と連帯して、アメリカの支配の手を緩めようという腹だと思われる。今まではこれを中途半端に行ってアメリカに叩かれている。ここまで思い切ってアジア連帯構想を打ち出せばアメリカも下手に手出しをしにくいと思う。小沢幹事長は国家存亡の危機意識の中で行動しているように思う。中国は問題が山積する国家だが、この方法以外に有効なサバイバルがあるだろうか。
在日外国人の地方参政権の件は、私も大反対であるが、これもアメリカから離脱するための道程なのだろうか。アジアを味方に付けるための必須要件として計画に入れたのかもしれない。小沢氏はこれについて、国内の反対を想定しており、自らは積極的に推進しているという動きをしているのだろうか。とにかく今はアジアのパワーを結集させることを第一に考えているのかもしれない。
このように見ると、小沢氏がアジアに極端に傾注するような動きは対米戦略の一環に思える。交戦権を発動できない日本が、アメリカの属国状況から抜け出す方法はアジアを取り込むしかないような気がする。これについては異論や反感もあると思う。私も中国に対しては反感も強い。しかし、アメリカが衰亡を避けようとして、なりふり構わず日本の資産を剥奪する腹であれば、日本が破産国家になるのは目に見えている。この国家存亡状況で、小沢氏が選択した起死回生の一手は他に選択肢がないことを示している。
東西冷戦時代は日本の庇護国となっていた米国は、現在はその存在が最大の経済的脅威になっている。鳩山首相の普天間懸案と、小沢幹事長の訪中、訪韓は対アメリカ戦略で連動していると思う。小沢氏の中国傾斜は戦略である。第七艦隊発言の真意が国防にあるのなら、中国への属国化を小沢氏が歓迎することはありえない話である。
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