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郷原信郎:2010年年頭メッセージ【最初の10年間で、21世紀の日本の経済社会の重要な課題が見えてきたように思います】
http://www.asyura2.com/10/senkyo76/msg/1185.html
投稿者 クマのプーさん 日時 2010 年 1 月 05 日 14:57:07: twUjz/PjYItws
 

http://www.comp-c.co.jp/pdf/20100105.pdf

2010年年頭メッセージ

名城大学コンプライアンス研究センター長
郷原総合法律事務所 代表弁護士

          郷 原 信 郎


 新年明けましておめでとうございます。
 恒例の年頭メッセージをお送り致します。

 昨年は、4月から、2004年のセンター開設以来所属していた桐蔭横浜大学を離れ、名城大学総合研究所教授となり、コンプライアンス研究センターも名城大学に所属することになったほか、2月の「思考停止社会〜『遵守』に蝕まれる日本」(講談社現代新書)に続いて、9月に「検察の正義」と2冊の新書を公刊するなど、私にとっても大変重要な年になりました。
 コンプライアンス研究センターの活動は従来どおり、東京・六本木中心ですが、昨年秋からは名古屋駅近くの名城大学サテライトキャンパスで、毎月、企業コンプライアンス研究会を開催するなど、名古屋方面での活動も拡大していきたいと考えております。
 郷原総合法律事務所の方も、企業の不祥事・危機対応案件などコンプライアンスに関連する業務を中心に業務が拡大してまいりましたが、年末には、検事、公取委任期付職員の経験のほか、米国留学経験もある郷農潤子弁護士(ニューヨーク州弁護士)、桐蔭横浜大学法科大学院での私の門下でもあり、私と同じ東大理科系出身、17年間の製薬会社の知財業務の経験もある華房徹弁護士の2名の弁護士を新たに加え、私を含めて弁護士6名の体制となりました。検事時代の公取委出向以来の私の専門分野でもある独禁法案件や一般の民事・刑事の案件も含め、多方面のニーズに対応することで、社会の要請に応えていきたいと考えています。
 コンプライアンス研究センター、郷原総合法律事務所ともども、引き続き、よろしくお願い致します。


 さて、昨年で21世紀の最初のdecade(10年)が終わり、今年から次のdecadeに入りました。
 この最初の10年間で、21世紀の日本の経済社会の重要な課題が見えてきたように思います。
 「社会の要請に応えること」という意味のコンプライアンスと、それに関連する制度や運用の問題に関して言えば、重要な問題として次の3つを指摘できると思います。


 第一に、経済構造改革の一環として行われてきた公的事業の民営化に関して、社会の要
請にバランス良く応えていくというコンプライアンスの視点を欠いたまま民営化を進めることの問題です。
 それが端的に表れたのが日本郵政をめぐる問題です。小泉元首相の「郵政民営化に賛成か、反対か」という単純な二分法的な問いかけによって民営化が決定され、日本郵政株式会社が設立されましたが、それが、どのような社会の要請にどのように応えていくのかが明確にされず、どのような社会の要請に応えるために、どのような組織を作ることが合理的なのか、という視点もなく、持ち株会社と4つの事業会社という企業組織が作られ、株式会社としての事業運営が行われていったことが「かんぽの宿」問題を始めとする、日本郵政グループをめぐる多くの問題が発生した根本的な原因です。
 全国津々浦々に郵便局があることによって維持されてきた都市と地方との発展の均衡、地域の雇用の確保など郵政事業がかつて果たしてきた役割と、物的資産の売却や有効活用などによる経済的利益メリットを高めること、という二つの価値の関係を基本的にどのように考え、どのような方針で日本郵政という民営化された組織を運営していくのかということが明確にされず、経営上の意思決定プロセスについてのルールも不明確なまま、株式会社組織としての事業が始められたわけですから、多くの問題が生じるのは当然のことです。
 昨年秋の政権交代によって、日本郵政グループの経営形態が見直され、持ち株会社と郵便事業会社、郵便局会社を統合した新会社の下に、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の金融2社を置く3社体制に移行する方針が明らかにされていますが、いずれにしても、これまでの日本郵政のコンプライアンスとガバナンスに関する問題を十分に検証した上でなければ、民営会社としての経営を健全化することはできないと思います。
 総務省が、これまでの日本郵政をめぐる様々な問題についてコーポレート・ガバナンスを検証する委員会の立ち上げが検討されているのも、まさにそのような検証を行い、その結果を、今後の日本郵政グループのコンプライアンス、ガバナンスの改善に結びつけていくことが目的だと思います。私も、総務省顧問・コンプラアインス調査室長の立場で、この検証に関わっていくことになるのではないかと思います。
 かつては官が行っていた公共性の高い事業を民間に移行するのであれば、民営化によって設立される会社には、自由競争への対応に加えて、応えるべき社会的要請を把握し、多くの要請にバランス良くに応えていくというコンプライアンスの視点が不可欠です。いわゆる小泉・竹中路線の民営化論者の最大の誤りは、それが、単純な「法令遵守」と自由競争の組み合わせだけでうまくいくと考えたところにありました。
 そういう意味で、今行われようとしている日本郵政の見直しは、公共性の高い事業の民営化について「社会の要請に応える」という意味のコンプライアンスをいかに機能させていくのかを問う試金石になるのではないかと思います。


 第二に、独占禁止法をめぐる動きです。2000年以降の10年、独禁法は大きく動ました。
独禁法の抜本改正の契機となった私が法務省法務総合研究所研究会の時代に手がけた「企業犯罪研究会」の報告書が公表されたのが2001年、その後、様々な議論の末、2005年には課徴金の大幅引き上げ、リニエンシー制度の導入等を柱とする独禁法改正法案が成立、2009年には、不当廉売等の不公正取引への課徴金導入等を内容とする改正法が成立し、2010年1月から施行されました。そして、政権交代の影響で、今年は、民主党がかねてから主張していた審判の廃止を内容とする独禁法改正法案が国会に提出される見通しです。
 この間、公取委の独禁法運用で一貫して行われてきたことは、談合の排除を中心とする価格競争の徹底でした。公共調達をめぐっては、「談合があったか否か」、「官が談合に関わったか否か」と落札率の高低だけに関心が集中し、高度成長期から続いてきた談合構造も、ゼネコンの分野を中心に崩壊するに至りました。しかし、こうした極端に価格競争に偏った競争政策が日本の経済社会に何をもたらしたのでしょうか。止めどのない価格競争は、深刻なデフレをもたらし、一昨年秋のリーマンショック以降の不況の影響で、物価の値下がりにはさらにドライブがかかり、賃金の下落、雇用の不安定化が一層深刻になっています。
 本来、経済社会における競争は、品質・価値と価格の両面から行われるべきものです。商品・サービスの性格と市場の実態に即した、品質・価値と価格のバランスのとれた競争を実現する方向に独禁法運用を抜本的に改めることが、今後10年の日本経済の大きな課題なのではないかと思います。
 審判の廃止の問題など、独禁法の制度問題に関しても、今年は重要な年になりそうです。平成17年改正でドサクサに紛れて導入された現在の「事後審判制度」には手続の公正さに重大な問題があり、早急に改めるべきであることは、私が、内閣府の独禁法基本問題懇談会でのヒアリングやジュリスト論文等でかねてから指摘したところです。そういう意味では、今年予定されている法改正で現在の審判制度が是正されるのは当然だと思いますが、一方で、私がかねてから指摘してきた「経済司法の貧困」、とりわけ裁判所の経済問題への対応能力不足の状況のままで、独禁法審判を全面廃止し、すべてを裁判所に委ねるというところに一足跳びにいくのが良いのかについては、若干疑問が残るところではあります。とりわけ、不公正取引などについては、競争政策的判断も重要であり、裁判所でその判断が適正に行い得るのか、問題が残るところです。しかし、今年から施行される平成21年改正で、不当廉売等の不公正取引に課徴金が導入するというような、独禁法体系の整合性を大きく損なう改正が行われたことから、不公正取引を審判廃止の対象から除外することも困難です。
 こうした独禁法の制度の根幹に関わる危機的事態を招いたのも、21世紀に入って以降、竹島委員長の下での公取委が、小泉・竹中路線の先兵となって「談合排除」キャンペーンを推し進めるなど、極めて政治色の強い動きを続けてきたことの咎めと言うべきだろうと思います。
 この数年で水膨れした公取委の組織体制の見直し、審判廃止と併せて民主党がかねてか
ら主張してきた公取委の取調べへの弁護士立会等による審査手続の適正化などの独禁法をめぐる重要な問題についても、積極的に発言していきたいと考えています。


 そして、第三は、経済社会における検察の役割をめぐる問題です。
企業活動が経済官庁の行政指導によってコントロールされていた時代は、企業に対しての「指導」と、指導に従わないような異端の企業を「処罰」することが中心の「指導系・処罰系のシステム」でした。経済活動の自由化に伴って、企業が自己責任原則の下で自由に事業活動を行い、法違反に対しては、事後的に、法の趣旨・目的に応じて行為の重大性・悪質性を評価し、それに応じた「制裁」を科すという「制裁系のシステム」への転換が求められています。そういう法を基軸とする「制裁系のシステム」の中核としての役割を果たさなければならないのが検察です。
 しかし、2000年以降の10年間の動きを見る限り、検察がそのような役割を十分に果たしているとは思えません。ライブドア事件、村上ファンド事件など、特捜検察が独自に摘発した事件について、重大性・悪質性の評価や法適用に大きな問題があることは、これまで私が、「『法令遵守』が日本を滅ぼす」「思考停止社会」「検察の正義」等の著書で繰り返し述べてきたところです。
 昨年の小沢氏秘書の政治資金規正法違反事件の強制捜査は、特捜検察が、政治資金規正法という一つの法分野に関して、検察の捜査・処分が法目的に即した「制裁系のシステム」の確立という面で適切な機能を果たしていない疑念を生じさせました。
 昨年末から、小沢氏の政治資金問題に対する検察捜査の動きが報じられていますが、この問題をめぐる検察が行おうとしている捜査・処分が、政治資金規正法という法律の趣旨・目的に照らして適正な制裁の在り方と言えるのか、今後の検察の動きを慎重に見守っていきたいと思います。
 いずれにせよ、経済検察の強化による制裁系システムの確立は、これからの日本の経済社会にとって極めて重要な意味を持つものです。そのためには、「検察の正義」で指摘したように、組織内で完結した「正義」中心の検察の組織を、社会の環境変化に適切に対応できる柔軟性を持った組織に抜本的に改めていく必要があります。


 21世紀の最初の10年、first decadeの間、方向性の定まらないまま迷走を続けてきた日本の経済社会は、今、深い混迷と閉塞感の中にあります。second decadeでは、これまでに顕在化した問題に真剣に向き合い、21世紀の経済社会の基本的枠組みを確立していかなければなりません。今年は、その第一歩を踏み出す極めて重要な年です。
 

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コメント
 
01. 2010年1月06日 19:01:28
郷原氏が着目する経済社会の課題とは、言い換えれば経済犯罪とそれに準ずる行為に関する問題だと思う。
この観点から言えば、氏の言う「社会の要請に応える」経済社会の3つの課題にはひとつ足りないものがあると思う。それは、放送法違反や捏造・隠蔽に明け暮れる偏向マスゴミの解体と是正である。

マスゴミの問題点は国民文化の形成から政治経済にまで渡る広範囲なものだが、とりわけ政治経済面における日常的に歪んだ報道が日本を崩壊させるものとして大問題化している。氏の指摘する3つの点においてもこのマスゴミ問題は密接に関わっている。
マスゴミは国民の木鐸の姿は最早無く自己とそのパトロンである資本家等の利益のため、利権受益側に不都合な事実が隠蔽されたり、歪曲、捏造されたり、官製報道に偏ったりしており真実を国民に隠す報道が跋扈している。このようなマスゴミの加担のお陰で悪徳大企業や反国民的勢力は衆人環視から免れられるため、罪悪感が無くなり一向に暴走や不公正やモラルハザードがあとを断たない現実がある。
したがって、報道の担当省でもある総務省顧問の郷原氏は、このマスゴミの歪んだ報道に対する解体・是正を氏の掲げる3点の改革をするうえでの基本的要件として4つ目に挙げるべきではないか。

このような歪んだマスゴミの問題は、経済社会のみならず政治、教育、文化の向上、司法の公正などすべての分野に係わってくるためどの改革のさいにも最重要課題である。


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