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【永田町異聞】
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官僚王国の迷宮「特別会計」(3)
テーマ:政治
昨年末から書き始めた「官僚王国の迷宮・特別会計」シリーズ。埋蔵金の在り処を求めてさまよいこんだ迷宮の闇は、想像をはるかに超えて深く、手ごわい。
今日はその3回目である。初めて読む方は(1) と(2) にも目を通していただきたい。
これまで、カネの流れる道が迷路のように入り組み、巨額資金がどのように使われているのかわかりにくい特別会計の仕組みと、そこにぶら下がっている独立行政法人や公益法人など天下り組織を概観してきた。
今日からは、個別の会計のなかに入っていきたい。
社会資本整備事業特別会計。これだけでは何のことかわからない。というのも、いくつかの特別会計が平成20年度に統合されて、この名前の看板に付け替えられたからである。
道路をつくったり維持管理する「道路整備」、空港を建設したり管理運営する「空港整備」、ダム建設を進める「治水」など、もともと独立していた5つの特別会計がひとつにまとめられたわけだ。
とはいえ、それぞれ「勘定」という名で、別個に予算、決算が組まれているから、統合されたといっても実質はさほど変わらない。
特別会計の数を減らせば、予算が少なくてすむというほど、生やさしいものではない。いったん手にした蜜の味にしがみつくのが、人間とその集団だ。
まず、「道路」からはじめよう。この勘定の収入源は、いわゆるガソリン税や石油ガス税、自動車重量税など道路特定財源と呼ばれてきたものだ。
ガソリン税が道路建設の特定財源となったのは1954年のこと。
戦後の復興期を過ぎ、経済の高度成長をめざすために全国に道路網を張りめぐらせることは、重要な国家的課題だった。
しかし、それから半世紀以上が経ち、インフラ整備が全国に広がって、少子高齢化社会に向かいつつあるいま、地方分を含め5兆円をこえる道路特定財源を、道路だけでなく、一般財源にまわすべきではないかという世論が湧き起こった。
そうした声を受けて、福田前首相が道路財源の一般財源化を宣言、今年度から道路特定財源は廃止された。ところが現実には、自公政権がつくった今年度(平成21年度)予算において、その大部分が道路に注ぎ込まれる実態は変わらなかった。
たとえば平成20年度決算における、道路整備勘定を見ると、ガソリン税収から直接入ってくるのは6825億円だが、約2兆円ほどが一般会計を経由して繰り入れられ、その他収入を含めた歳入合計は3兆6700億円にのぼっている。3兆7000億円だった前年度とほとんど変わっていない。
おそらく、21年度決算でも、似通った数字となるだろう。官僚の前年踏襲主義が、この国の時代対応を遅らせている。
問題は今般、初めて鳩山政権によって編成された22年度の一般会計当初予算案で、公共事業費が18.3%削減されたことにより、道路整備勘定に入ってくる資金量がどれだけ変化するかだ。
この予算案によると、21年度と22年度の当初予算比較で、道路関係が1兆6645億円から1兆2464億円へ、空港関係が1429億円から1131億円へ、港湾関係が2195億円から1655億円へ、ダム関係が1498億円から1316億円へと、それぞれ縮小される。
政権交代により、公共事業削減の方向に舵を切ったという点ではひとまず評価できる内容だが、まだまだ削れるはずだというのが世間一般の見方だろう。
それには、予算額が飛びぬけている道路建設計画を大幅に見直し、無駄な道路をこれ以上つくらないようにすることが第一だ。
このため、前原国交相は就任早々、自民党道路族の利権の象徴、国幹会議を廃止することを決めた。この国の高速道路建設に事実上の決定権を握ってきた道路族の牙城といえる会議だった。
ただし、これで道路予算が適正化されると考えるのはまだ早い。国交省道路局は与党の中から新たな道路族議員の発掘を進めるだろう。いくら陳情窓口を党幹事長室に一本化したとはいえ、与党議員には地元の票をちらつかせた利権勢力が近づくに違いない。
しかも、道路整備勘定に余剰金がたっぷりあれば、独立行政法人や特殊法人を通して、補助金や委託契約金の名目で天下り組織にどんどんカネが流れ込む。
社団法人「国際建設技術協会」が、世界銀行のデータやウィキペディアを安易に引用し、約1億円もの代金をもらって国交省発注の「海外道路情報調査報告書」を作成したが、資料として使い物になるシロモノではなかった。
これなどは、協会の仕事をむりやりつくるのが目的であることが丸分かりであり、呆れるというより、笑うしかなかった。
2008年2月、国会でこの件を追及したとき、民主党の細野豪志は、道路特会から56の天下り団体に1890億円が流れていることを明らかにした。
こうしたルートを断ち切るためには、官僚の意のままになっている特会のあり方を見直し、関連する独法、公益法人の廃止や整理縮小を進めることが必要だ。
会計法の原則を無視した随意契約や指名競争入札もやめさせねばならない。随意契約は発注先が固定化するし、参加者限定の指名入札も談合の温床となる。
すべての契約を、一般競争入札によって決めるようにすれば天下り組織の増殖に歯止めがかかるだろう。平等に競争すれば官製企業に勝ち目は薄いからだ。
一般財源化された道路特定財源を、不要不急の道路建設ではなく、いまこの国に真に必要とされる事業に振り向けることが、鳩山内閣の政権維持にとっても重要な意味を持つだろう。
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