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【社説】年のはじめに考える 支え合い社会の責任
政権交代の年は明けましたが私たちは歴史の大きな転換期のただ中にいるようです。
厳しい時代への覚悟と明日のための賢明な決断が世代的責任です。
ベルリンの壁崩壊と時を同じくした平成の歩みも二十二年目。
昨年の即位二十年に臨んでの天皇、皇后両陛下の記者会見は印象深いものでした。
冷戦の終結で期待された平和とは裏腹な世界の動き。
その無念さと人々の暮らしへの憂慮がにじんでいたからです。
国境の壁が消えて、一気のグローバル化が日本に見舞ったのは一億総中流社会への直撃弾でした。
◆歴史が問いかけている
市場原理主義は、企業に果てなき生産性向上とコスト削減競争を強い、年功序列や終身雇用の日本的慣行を捨てさせました。
不安定雇用と低賃金労働は格差と働く貧困層を生みだしただけではありません。
人々の行動と考えをカネ万能へと歪(ゆが)めました。
長期化する世界同時不況がより深刻なのは、百年に一度どころか十八世紀以来の資本主義そのものの行き詰まりの色彩を帯びていることです。
石油などの化石エネルギー資源は無限でなく、環境面からも資本主義の「永遠の成長」には限界があることがはっきりしてきました。
少子高齢化も人類の経験にはない難問です。
今回の政権交代は、そんな歴史からの問いかけと、それでも進むグローバル時代をどう生きるかへの一つの回答だったかもしれません。
正確な未来予測は人知を超えるにしてもビジョン提示への最大限の努力は私たちの世代の任務です。
二〇一〇年度の政府予算案で新政権が実現させた子ども手当は、ベーシック・インカムの一種だともいわれます。
政府が無条件に現金を給付して毎月の最低限の生活を保障しようとする新しい思想で、
高校教育無償化や農家の戸別所得補償政策にもその新しい考えが流れているようです。
◆主体者としての覚悟は
高度経済成長時代に企業と家庭が担った福祉はグローバル経済下では不可能になりました。
働く夫と専業主婦がモデルだった家庭も共働き夫婦に姿を変えています。
子ども手当には、未来の担い手は社会が育てるとの理念とともに雇用不安と格差社会での新社会政策の側面が含まれます。
「コンクリートから人へ」の財政配分も時代の要請でしょう。
医療や介護、教育や保育などはだれもが必要とする社会サービスで、やはり国が提供すべきでしょう。
結婚したくてもできない、子どもを産みたくても産めない若者の増加をこれ以上見過ごすことはできないからです。
国の所得再分配機能と平等化が重要になっていますが、生活安心のための施策に財源の裏付けを要するのは言うまでもありません。
月二万六千円の子ども手当には毎年五・五兆円の恒久的財源が、
〇七年度に九十一兆円だった医療、年金、介護などの社会保障給付額は、二五年度には百四十一兆円に膨れると試算されています。
財源問題をどうするのか。
歴史的と呼ばれた昨年の政権交代の真の意義は国民自身の手で政権交代を実現させたことでした。
国民の一人一人が統治の主体者として責任を負ったのです。
政治や社会の傍観者であることは許されず、どんな社会にするかの主体的覚悟をも問われたのです。
福祉や社会保障は弱者救済や施しの制度ではありません。われわれ自身の安心のためのシステムです。
企業や家庭からみんなが支え合う時代へと移りつつあります。
個人の自己責任でリスクに備えるよりみんなで支え合う方が有効ですし、失われてしまった社会連帯の精神を取り戻すことにもなるはずです。
政府も税や社会保険など国民負担について率直に語り、論議は深められていくべきです。
消費税ばかりでなく所得税も。
一九七〇年代は75%だった最高税率は現在40%、税の累進制や社会的責任の観点からこのままでいいかどうか。
グローバル時代に適合する公平・効率の税制が構築されるべきです。
わたしたちもその責任から逃れることはできません。
◆明日に希望がみえる
天皇は国家と国民のために祈る存在です。その天皇が先の即位二十年の会見で願われたのは「みなが支え合う社会」。
高齢者や介護を必要とする人々のことを心に掛け、支えていこうという人々が多くなってきていることが感じられ、心強く思うとも語っています。
そこに明日の希望がみえます。
権力の監視と批判を本来任務とするメディアの役割も重大です。
新政権の打ち出す政策が真に国民みんなのためのものかどうか検証しなければならないからです。
メディアもまた試されていることを胸に刻みたいと思います。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2010010102000072.html
>二〇一〇年度の政府予算案で新政権が実現させた子ども手当は、ベーシック・インカムの一種だともいわれます。
>政府が無条件に現金を給付して毎月の最低限の生活を保障しようとする新しい思想で、
>高校教育無償化や農家の戸別所得補償政策にもその新しい考えが流れているようです。
子ども手当ては、「“子ども版”“ミニ”ベーシックインカム」といった類のものでしょう。
すなわち、「民主党の子ども手当とベーシックインカムの間には、規模にもやり方にも、まだまだ相当の開きがある」(山崎元)
といえるでしょう。
ベーシックインカム派の経済評論家・山崎元氏も、子ども手当てを以下のように論評しています。
前略。子ども手当のベーシックインカム的でない点は、
(1)「子ども」のいる家庭にしか手当がない点、
(2)それで生活できるというレベルの金額ではない点の二点だ。
特に、子どものいない高額所得の家庭はこの子ども手当の創設で負担が増える。
また、この子ども手当は、子どもを持つことに対して国がインセンティブを与えるもので、
個人の生活スタイルに対する介入でもある。
前者に対する可否は、民主党の鳩山代表が言うように、
子どもを社会で育てるという考え方にどの程度共感するかによるだろうし、
少子化への対策の必要性に対する評価にもよるだろう。
現状と比較すると、かなり強力な少子化対策であり、民主党政権が実現化して安定すると、
出生率に顕著な影響が出るかも知れない。
私は、少子化対策そのものの必要性に対してはあまり積極的でない(人それぞれの勝手だと思っている)ので、
この点を大いに評価するわけではないが、大方の国民が少子化対策に前向きなら、
民主党案は効果があって副作用の小さな少子化対策であると考えていいと思う。
もっとも、一人を年齢に関係なく平等に扱い金額ももう少し大きくなるはずの本来のベーシックインカムが実現した場合には、
子どもを持つことのインセンティブはさらに大きくなるはずだ。
民主党の子ども手当とベーシックインカムの間には、規模にもやり方にも、まだまだ相当の開きがある。
しかし、この子ども手当は、長期的な財源の多くを行政のムダを削ることから捻出することになっている点も考えると、
行政サービスの規模や役人の権限を縮めて、いわば「中抜きの少ない」所得再分配を行う
「既存行政のベーシックインカムへの置き換え」的な方向の政策として、まずまず好ましいものではないかと思う。
http://blog.goo.ne.jp/yamazaki_hajime/e/83ba7c64b637af4ced5c17437ff1c20c
配り先を限定しないのが、完全ベーシックインカムです。
財源については、たとえば、前出の山崎氏は、以下のように述べています。
例:一人月5万円のベーシックインカムについて。
前略。一人月5万円×12ヶ月×1億2千万人=72兆円、は一般会計と比べると確かに巨額ですが、特別会計はもっと巨額です。
閣議決定された2009年度の予算案では、21ある特別会計の歳出総額は355兆円で、
重複を除いた数字(「純計ベース」と呼ぶようです)で169兆円です。
ベーシックインカムに置き換えるターゲットは主に特別会計でしょう。
発想を変えて、72兆円を今の財政構造に追加すると考えてみましょう。
ちょっと数字が古いのですが、2005年ベースで国際比較すると、
財政学でいう一般政府支出の対GDP比は日本が38.2%、フランスが54%です。
差が15%強ありますが、日本のGDP500兆円の15%というとこれだけで75兆円あります。
フランス人並みの負担をすれば、現状に上乗せする形でベーシックインカム月5万円が調達できます。
なお、可哀相なことにフランス人は軍事費をGDPの2.5%も負担しています。
日本は1%なので、その差1.5%に相当する7.5兆円はベーシックインカムに余計に回せます。
http://blog.goo.ne.jp/yamazaki_hajime/e/39789e023a0ba7d25be7d882d9fc84d8
その他、京都府立大学・小沢修司教授は、
「週刊金曜日」09年3月6月号や「週刊SPA!」09年5月5日・12日合併号において、
以下のような試算を紹介しています。
前略。申告所得税を含めた所得税全体では、
合計所得金額245.7兆円のうち所得控除による非課税分は123兆円で
課税対象所得は、122.6兆円、徴収される所得税総額は12.5兆円である。
(財務省が2009年度政府予算の説明に際して国会に提出した「租税及び印紙収入予算の説明」より)
つまり、BIにより、所得控除が不要になれば、課税対象額は2倍以上に膨れ上がり、
増収分は、BI財源に回せることになる。
次いで、社会保障への影響についてである。
まず、年金がBIに一本化されるため、年金保険が不要となる。
(ただし、65歳以上は、老齢加算BIの支給もあり)
その額は2005年度の社会保障給付費87.9兆円のうち、44.7兆円である。
その他、児童手当(子ども手当て)、生活保護や雇用保険から支給される失業等給付費などを加えると、
BIにより取って代わりうる現金給付部分は総計50兆円にも上ることになる。中略。
この金額もBI財源に回せることになる。
この他、年金保険料の徴収・維持・管理の費用も要らなくなるし、
現行の福祉制度に必須とされるミーンズテスト(資力調査)を実施するための費用や労力も不要となる。
【注】所得控除廃止後の課税対象額は約2倍なのに、税収が20兆円以上増えて2.5倍以上と予測するのは、
累進税率により、適用される税率がアップする人がほとんどと考えられるからである。
>福祉や社会保障は弱者救済や施しの制度ではありません。われわれ自身の安心のためのシステムです。
>企業や家庭からみんなが支え合う時代へと移りつつあります。
>個人の自己責任でリスクに備えるよりみんなで支え合う方が有効ですし、
>失われてしまった社会連帯の精神を取り戻すことにもなるはずです。
本社説に同感です。
北大の山口二郎教授が指摘している通り、
巨視的に見れば、一握りの勝ち組以外は、皆同じようなリスクにさらされているのです。
( http://www.yamaguchijiro.com/?eid=512 等)
特別な運や才能には恵まれていない普通の人々にとって、
安定した働き口を見つけることや結婚し子供を作ることが、
どんどん困難な課題になりつつある。
この種の難題も広い意味でリスクと呼べば、
職業生活や家庭生活に関するリスクは普遍化しつつある。
そのことが単身者の増加と人口減少をもたらし、社会の活力の低下の原因となっている。
リスク社会を生き抜くために必要な大前提は、
すべての人が災難を他人事と思わないということである。
今のところ、自分たちだけはリスクと無縁だと考えている「強い人々」と、
目の前にあるリスクが見えない「普通の人々」とが自民党・公明党&新自由主義を支持している。
リスクが高まれば高まるほど、今まで落ちなかった人も落ちていってしまうことに気づくべきだ。
>国の所得再分配機能と平等化が重要になっていますが、生活安心のための施策に財源の裏付けを要するのは言うまでもありません。
>政府も税や社会保険など国民負担について率直に語り、論議は深められていくべきです。
>消費税ばかりでなく所得税も。
>一九七〇年代は75%だった最高税率は現在40%、税の累進制や社会的責任の観点からこのままでいいかどうか。
>グローバル時代に適合する公平・効率の税制が構築されるべきです。
>わたしたちもその責任から逃れることはできません。
本社説に同感です。
そこで、次の順番で、財源を捻出し、日本は、高度福祉社会に移行するべきでしょう。
【1】官僚の天下りを根絶するべく、その“受け皿”となっている独立行政法人等の公益法人を原則廃止するとともに、
特別会計を原則廃止(予算の全面組み替えを)するなど、行政システムを根本から変えることによって、
無駄遣いを排除し、財源を捻出。
長妻議員(現厚労大臣)が指摘していたHAT−KZ(ハットカズ)システム、
すなわち、「税金や保険料の無駄遣いを自動的に発生させるシステム」の解体。
H:ひもつき補助金システム
A:天下りあっせん・仲介システム
T:特別会計システム
K:官製談合システム
Z:随意契約システム
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【2】富裕層からそれなりの税金を取る
経済学者の飯田泰之氏は、著書の中で、
「日本のいびつな再分配を是正するだけで、ほとんどの問題は解決するのではないか、
日本と予算規模がほぼ同じイギリスと同じ対策をやれば、
日本は北欧に次ぐ世界トップクラスの平等社会になる」とまで言い切ってます。
こうも言ってます。
「一番大きいのは、金持ちを減税していることなんです。
75%とっていた人から40%しかとらなくなったら、そりゃ財政が悪くなります。」
「脱貧困の経済学」92ページより
↓
【3】消費税率引き上げ
上記、【1】【2】を実施した上で、消費税率引き上げでしょう。
未曾有の少子高齢化を考慮すると、15%程度に引き上げることもやむを得ないのではないでしょうか。
(このまま出生率が劇的に改善せず、さらに若年層・壮年層の自殺が止まらないならば、近い将来、この国の4割は、65歳以上に)
もし、【1】【2】を実施しなければ、消費税率を30%に引き上げても足らなくなるかもしれません。
自民党・公明党政権は、【1】を実施できなかった。
【2】に至っては、「実施できなかった」どころか、
「金持ちを減税して、低所得者層の負担を増やす」という逆のことをやってきた。
【1】も【2】も実施せずに、消費税率を引き上げようとしているのが自民党。
では、民主党・社民党・国民新党・新党日本による現連立与党はどうか。
昨年は、9月16日に政権発足だったので、時間がなかったともいえるが、
今年は、1年丸々使える。
今年こそ、【1】【2】をどこまで実施できるかが、問われている。