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「表現の自由と自由なる取材
宮崎学である。
まずは12月28日の午後に入ってきたニュースから。
小沢一郎さんが来年の通常国会の政治倫理審査会に出席する意思を表明したというものだ。
これについて「これで民主党内の混乱が収まり、菅政権が続く」などと論評する「ジャーナリスト」もおるようだが、そんなことはない。小沢さんは今までの主張をわかりやすく繰り返しただけである。
この「ジャーナリスト」氏の見解とは逆に、党内の亀裂はますます深くなるだろう。
その理由は、反小沢三派連合が「ポピュリズム」を党内対立抗争に持ち込んで民主党内の対立構造を激化させたことにある。これで、党内自治が壊れてしまったのだ。この手法は、小泉の郵政民営化時の守旧派批判と同質のもので、その根底にあるのは新自由主義的な思想である。
前置きが長くなってしまった。今回は検察とメディアの問題を考えてみたい。新検事総長関係で新聞をチェックしてみた。なぜか今回は毎日新聞が異常なまでに好意的である。
「ひと:笠間治雄さん 第26代検事総長に就任 2010年12月28日 0時27分 毎日 検事任官から36年余。法務省での勤務経験は一度もなく、現場一筋で歩んできた。東京地検特捜部の在籍は計12年。部長在任中は、KSD事件の村上正邦元労相を含めて計4人の国会議員や元議員を汚職や詐欺で起訴し、永田町から恐れられた。
だが、素顔は決してこわもてではない。高齢の政治家を汚職で逮捕した事件では、勾留期限を待たず、8月10日に起訴して捜査を終結させた。「お盆前に家に帰してあげたかった」。反省の態度を示した被告への配慮だった。「末端の部下一人一人の意見をよく聞き、上司にも物が言える」と、苦楽をともにした後輩たちの信頼も厚い。総長以外の検事の定年は63歳。来月2日の誕生日で検察庁を「卒業」するはずだった。「悠々自適に暮らします」。師走に入ると、送別会であいさつし、知人には「特捜部改革ができなかったのが心残り」と淡々と語っていた。
「君が適任だ」。郵便不正事件と証拠改ざん・隠蔽(いんぺい)事件を受け、辞任を決意した前任総長から後継指名された。その姿は、ロッキード事件の主任検事を務めた吉永祐介元総長と重なる。5億円の闇献金を受領した金丸信・元自民党副総裁を罰金で済ませて検察が非難を浴びた際、信頼回復の「切り札」として登用された。
「現場に何ができるか、しっかり考えたい」。図らずも火中のクリを拾う形になった「たたき上げ」の総長に、検察の命運がかかる。【三木幸治】
【略歴】かさま・はるお 愛知県出身。中央大卒。趣味は写真。印象に残っている本は、旧日本軍が敗れた原因を分析した「失敗の本質」。62歳。」
あと郷原信郎弁護士がツイッターで笠間についてつぶやいているので、参考までに主要部分をピックアップしておくが、詳しくは http://twitter.com/#!/nobuogohara を参照のこと。
「2010-12-16 22:16:18 総長辞任は当然、遅すぎたぐらいです。これで、笠間検事総長が実現するのはうれしい限りです。笠間氏が最高検にいれば、昨年以来の東京特捜の暴走もなかったはずです。検察再生に向けての貴重な一歩です 2010-12-17 05:56:05 24日に公表される最高検検証結果が厳しく批判されることは必至、それで責任を追及されて辞任に追い込まれるより、先に辞意を表明する方がましとの判断では?
2010-12-17 06:56:35 確かに個人的な思い入れもあります。私が長崎地検次席検事から東京地検に異動になり、公判部ヒラ検事で干されている時、唯一人、私を支援してくれたの笠間さんでした。その後、私が、経済刑法、コンプライアンス等の研究の道に転じ、今の私があるのも笠間さんのおかげです。
確かに、表面的に見ると、特捜検察の構造を正していかなければならないのに、特捜部長出身の笠間氏が検事総長になる、ということに違和感があるかも知れません。
しかし、私は、今の検察の最大の癌は、最近の検察の暴走を止められなかったどころかそれを主導してきた関東軍的な一部の検察幹部だと思っています。関東軍が司法メディアと結託し歯止めが利かなくなったのは、笠間氏が2年余り前に最高検次長から広島高検検事長に異動した後です。笠間氏が最高検の中枢にいてくれたら、ここまで状況が悪化することはなかったと思います。まずは、そういう関東軍的暴走の芽をつむことが先決です。戦前の日本の関東軍の暴走も、軍の中枢に事態を客観化できる良識のある人間がいれば止められたかもしれません。
今後を検察組織を抜本的改革していかなければならないと思いますが、それに対して立ちはだかるとすれば、検察組織内の関東軍だと思います。特捜検察の構造的問題についても、笠間氏は、自らの体験を踏まえて、客観的にとらえることができる人だと思います。」
ちなみに郷原弁護士は、ワシがアップした村上正邦氏「司法・検察の抜本的改革の実現をめざすために」について
「そういう批判はあり得ると思います。しかし、まず必要なのは最近の「暴走検察」を正常化すること、そういう意味では、特捜検察での経験を有し、なおかつ、適切な判断力を持っている人が特捜検察を含めた検察の総責任者として適任です、その上で、検察組織の構造的な問題を明らかにし、抜本改革をめざしていくことが必要になりますが、それは、検察内部だけでは無理です。まさに検察の在り方検討会議での議論を深めていくことが必要です。笠間氏が検事総長に就任することがベストかどうかはわかりませんが、少なくとも現場経験が乏しい法務官僚よりはベターだと思います。」
と書いている。
もう一つ、こんなのもあった。日歯連事件でも死人が出ておったのだ。
「吉田前議員の第二秘書自殺 日歯連事件で東京地検の聴取受ける 2004.03.02 東京朝刊 39頁 (全424字) 読売 日本歯科医師会(日歯)の政治団体「日本歯科医師連盟」(日歯連)の政治資金規正法違反事件に関連し、東京地検特捜部に事情聴取を受けた吉田幸弘前衆院議員(愛知三区、昨年の総選挙で落選)の公設第二秘書だった夫馬(ふま)嘉彦さん(29)が、東京都内の自宅で自殺していたことが一日、分かった。
知人から連絡を受けた警視庁代々木署員が先月二十九日午前二時ごろ、渋谷区代々木四の自宅を訪れ、首をつって死んでいる夫馬さんを発見した。玄関は施錠され、遺書があったという。検視結果などから、死亡したのは同二十七日午前十時ごろとみられている。
東京地検などによると、夫馬さんは同二十六日、吉田前議員の他の公設秘書経験者らとともに、事情聴取を受けた。それ以前にも聴取を受けており、この日は午後一時半ごろから夕食をはさんで同九時半ごろまで行われたが、特に変わった様子はなかったという。二十七日も聴取予定だった。
同地検の笠間治雄次席検事の話「謹んでご冥福(めいふく)をお祈りします」」
死亡記事はともかく一連の新聞記事は、いったい何なのであろうか。
私は文章を書くことを生業とすることになってから、とりわけ表現の自由には神経質になっている。そして、当たり前のことであるが、「表現の自由」の根底には「取材の自由」があると考えるに至った。
その視点から見ると、これらの記事は「自由なる取材」によるものではない。笠間新総長様に対して"新聞的な"エールを送ったに過ぎない駄文である。その思惑は、今後の検察への取材がやりにくくなることを回避しようとするもので、それは「自由な取材」を放棄することを宣言したものである。
「自由な取材」という立場を取るのであれば、たとえば日歯連事件の際に不起訴や処分保留にした政治家についても言及すべきであろうし、村上正邦さんのKSD事件については特捜部の「虚構のストーリーありき」による捜査手法の有無を追求すべきである。
先日紹介した村上正邦さんの「司法・検察の抜本的改革の実現をめざすために」の一文を改めて引いておく。
「笠間氏の検事総長就任人事を報ずる新聞各紙は、笠間氏は特捜検察の経験が長く、東京地検特捜部長として辣腕をふるい、4人もの政治家を逮捕したことを「実績」として高く評価している。 しかし、この「実績」に問題があるのだ。笠間氏自身が、いま国民の批判に晒されている特捜検察の捜査手法を駆使し、ストーリーありきで幾多の事件を作り上げてきた中心的存在の人物なのではないか。
いま我が国の検察が直面しているのは、今回の大阪地検特捜部の「事件」が何故起きたのか、そしてその根本にある「検察文化」とは一体、如何なるものだったのかを、自ら真摯に問うことである。
あわせて、笠間氏が指揮をとった全ての「事件」の検証があってしかるべきことは、論をまたない。 」
27日に引責辞任した大林宏前総長と笠間新総長の「差」にメディアが強調するようなものなどない。私の友人がよく使う「ウン○味のカレー」と「カレー味のウン○」くらいのもんである。
メディアはことさらに「新総長様の現場の経験の長さ」を評価しているが、その現場こそ「大阪地検特捜部の証拠捏造」を生んでいたところではないのか。
私に引きつけて言うと、このメディアの「ゴマすり構図」というのは、実話雑誌がヤクザを批判しにくいことと同じように思える。その批判しにくい構図の中にあっても表現を工夫し、時にはリスクを覚悟して表現していくべきだと考える。
こんなレベルのメディアから情報を与えられるこの国の国民は不幸である。
投稿者: 宮崎学 日時: 2010年12月30日 07:58 | パーマリンク」
http://www.the-journal.jp/contents/miyazaki/2010/12/post_109.html
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