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http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/campus/chiji/20101228-OYT8T00778.htm
政治家への道
元々、自分の家は古紙業、商売人で、自分も家業を手伝っていた。28歳で検察官を目指して司法試験の勉強をしたが、約10年間も受けて挫折した。
人生の再挑戦をかけて臨んだが、毎日勉強している大学生と、仕事をして妻子もいる自分が一緒の土俵で闘わなければならず、不利だった。人生、もう一度挑戦できる社会の制度をつくるべきだと思った。社会の仕組みとは法律のこと。法律をつくれるのは、政治家、国会議員だから、選挙に打って出た。
政治家になり、北海道で夜に飲む機会があった。接客の女性は、昼は水産業に励んで日本中においしい水産物を届け、夜は笑顔の場を生み出す。多くの人に幸せをプレゼントしていた。年収は300万から400万円。一緒にいた議員や自分は1000万円以上。議員は何を生んでいるのかと感じた。税金を払う方が苦労し、(税金で)食わせてもらっている方が楽をしている。市民並みの給与にと、市長になってからは報酬を800万円にした。
減税政策と政治家
私は、政治家になってからずっと減税を唱えている。衆議院議員では消費税の1%減税、市長になってからは、市民税の1割削減を訴えてきたが、名古屋市では、減税条例案が議会で否決されてしまった。
税を徴収する側は権力。権力は放っておくと膨張し、増税に走る。それに歯止めをかけるため、議員が生まれた。議員がするべき仕事は減税だ。減税をしない政治はいらないのではないか。
「いいものを安く」というのは商売の鉄則。私は元々商売人だった。商売では、厳しい価格競争は当たり前、「財源がない」などという言い訳も通用しない。だから私は、今の政治に逆行して減税を訴え、少しでも安い税金で、よい行政サービスを目指している。
名古屋市では、議員報酬の半減案も議会で否決された。今は〈職業議員国家〉になっている。政治を生涯設計の場にしてはいけない。政治が家業になると、政治家は税金で食べているから、税金が多い方がよく、増税になる。外国の地方議員はボランティアの側面が強く、大抵2期8年で辞める。民間に身を置いているから、減税を主張する傾向がある。
政治をとりまくうそ
日本の政治をとりまく大きなうそがある。一つめは、「日本の借金は900兆円で財政危機。国債は悪で、増税こそが勇気ある政治」という説。国債は借金ではなく、買い手が国内の金融機関であるうちは貯金だ。もし借金なら、なぜこんなに金利が安いのか。金利が低いのは、金が余っているから。庶民の懐にはないが、銀行には余っている。
最近2年くらいのあるメガバンクの貯蓄投資バランスを見た場合、預貸率は75%。景気の低迷で、残りの25%は、民間で借りる人がいない。金利は下がっても、不況下では借りる人は増えない。だから、政府は金利政策に頼っても、解決にはならない。金は民間で使い切るのが一番良いが、民間や金融機関で余った金は、堂々と政府が起債して使い切るべきだ。
「政権交代すれば、政治も社会は良くなる」というのもうそだ。これは国民が、実感として分かってきたと思う。庶民の苦しみは深い。
行財政改革――市民サービスと減税
民間では価格競争が要求されている。政治も競争するべきではないか。例えば名古屋市は、水道料金を下げた。いま持っている学生定期で、どこへでも乗れるようにした。市役所内から提案があった行政サービスだが、市としても、お金の負担は何もいらない。市民への還元やサービス向上こそが行革だ。
いまの「事業仕分け」についても、全部悪いとは言わないが、問題は多い。例えば、事業仕分けをして10億円が浮いたら、浮いた10億円はどこに行くか。現状では、役所の中で場所が変わるだけだ。商売ならば、浮いたお金の分、価格を下げて客に還元する。政治の場合、納税者への還元方法は減税だ。福祉や教育も大切だが、納税者あっての福祉や教育。まず納税者へ還元だ。
役所に税金を納めて、使途は役所に任せきりにするのではなく、納税者が使い先を決めて、その使途に対して寄付する、という形もできるようになる。
今の政治は減税しないから、金が浮いても役所の中で違う場所を回っているだけ。行革と減税は一体でなければならない。
(2010年12月28日 読売新聞)
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