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2010年12月21日
記者クラブ幹事社から事情聴取された 〜前編〜
http://tanakaryusaku.seesaa.net/article/174388163.html
「Business Media誠」のディレクターがインターネット動画中継したところ、記者クラブ幹事社から「中止命令」を下された。
(今年1月26日、総務省・記者会見室。写真:亀松太郎氏撮影)
「記者クラブ制度」とは、ひとことで言うと土佐藩の身分制度である「上士」と「下士」のようなものである。省庁での取材活動においては、上士にあたる記者クラブが下士であるフリー記者やネット記者の“生殺与奪”を握っているからだ。
総務省の記者会見を例に挙げてみよう。フリー記者、ネット記者が記者会見に出席するには、先ずクラブ幹事社の許可を頂かなければならない。幹事社が「よし」と首を縦に振れば「登録」されたことになり、めでたく出席可能となる。
21日、この「登録」をめぐってちょっとした“事件”があった。フリージャーナリストの上杉隆氏は総務省の「ICT検討委員会」のメンバーだったことから館内通行証を持っている。有効期限は平成26年(2014年)までだ。
ジャーナリストであることを証明する「館内通行証」なので、記者会見室に入った。ところが幹事社の知るところとなりお咎めを受ける羽目に。幹事社のX社と Y社の記者が2人して上杉氏に詰め寄った。「ここは記者クラブ主催なので・・・」と言い、「(入室は)登録をしてからにして下さい」と暗に退去を迫った。
(途中経過省く)上杉氏は“退去勧告”には従わず、最後まで片山総務相の記者会見に居続けた。これが無名のフリー記者だったら間違いなくツマミ出されていただろう。
晴れて登録されても「オブザーバー資格」というのがある。雑誌協会、専門紙協会、インターネット報道協会などの組織に属していない場合だ。「オブザーバー」は質問権がない。ただ黙って聴くだけだ。質問権のあるフリー記者、ネット記者が「二等市民」とすればオブザーバーは「三等市民」となる。
ご法度と「身分差別」だらけなのが総務省記者会見だ。それを世間に知られると困るのか、記者クラブはインターネット報道協会以外の記者がネット中継することを認めていない。
今年1月「Business Media誠」のディレクターが原口一博大臣の記者会見をウェッブカメラで中継した。(この模様は拙稿にまとめているのでご覧頂きたい※)
案の定、記者クラブから中止命令が下った。幹事社がディレクター氏に「次から認めませんからね」と告げたのである。
フリー記者の畠山理仁氏は「ネットの動画中継を認めて欲しい」と記者クラブに懇願し続けて一年が経つ。
このほど記者クラブ幹事社から畠山氏に「フリー記者たちの意見を聞きたい」との連絡があった。事情聴取である。
『やっと願いがかなうのだろうか?』畠山氏はじめフリー記者たちは期待に胸膨らませて総務省に出かけたのだが・・・・・・
(つづく)
※参考記事
記者クラブはなぜ「ネット生中継」を嫌うのか?
http://www.janjannews.jp/archives/2439140.html
2010年12月23日
記者クラブ幹事社から事情聴取された 〜中編〜
http://tanakaryusaku.seesaa.net/article/174623582.html
スマートフォンを使えば誰でも動画中継できる。テレビ局にとっては脅威の的、目の仇だ。
(9月14日、民主党代表選挙を動画中継する畠山氏。写真:筆者撮影)
フリー記者の畠山理仁氏は「開かれた記者会見」を目指して、数年間にわたって各省庁の記者クラブとの交渉を続けてきた。日本最強のカルテル集団である記者クラブとの交渉は悪戦苦闘を極めた。
記者クラブに直接話しかけても相手にされないかスカされるだけだ。畠山氏は非常手段として大臣の記者会見で「記者クラブ問題」をよく追及する。
総務大臣の記者会見では10日、17日と連続して片山善博大臣に「記者会見に出られる人と出られない人の基準は何か?」と質問した。
21日にはこんな質問をした。「掲示板の(A4用紙)発表事項を撮影したら記者クラブの受付嬢(広報課スタッフ)から『画像を削除して下さい』と言われた。それ(発表)は機密事項なのか?」。
世界のどこにもないような取材規制だ。記者クラブによる規制はことほどさように些細なことにまで及ぶのである。唖然として次にバカバカしくなる。
まだ内戦が続いていたスリランカの高度警戒区域で写真を撮っていた時のことだった。同区域は軍が指定したもので「写真撮影禁止」の看板が数十メートルおきに立っている。
案の定、軍の警備隊に見つかった。シンハラ語で怒鳴りあげられパスポートを取られた。それでも「映像を削除しろ」などとは言われなかった。ワンカットたりとも失うことなく無事日本に持ち帰ることができたのである。
記者クラブは、世界の人権団体が糾弾するスリランカ軍事政権にもまさる弾圧機関と言えよう。
話を元に戻そう―
片山大臣の回答は3回とも「両者(記者クラブとフリー記者)でよく話し合って下さい」ということだった。
片山大臣から突き放された10日(1回目)の記者会見の後、畠山氏は記者クラブに幹事社を訪ねた。幹事社からは「忙しいので追って沙汰する」と言われ相手にされなかった。
山芋のように粘り強い畠山氏が17日に2回目の質問をしたところ、携帯電話に総務省の記者クラブ幹事社から連絡が入った。「フリー記者の方々のお話を聴きたい」と。
畠山氏は早速、ツィッターやメールで仲間のフリー記者たちにそれを報せた。
“記者クラブそれも幹事社様がフリー記者やネット記者の話を聞いて下さる” 筆者は天にも昇る思いだった。身に余る光栄だった。でも不安だった。思うところをそのまま言上しようものなら「無礼者!」とお叱りを頂戴しないだろうか。椅子以下のフリー記者は斬り捨て御免だ。
お手打ちに遭っても恥ずかしくないように、筆者は新しいパンツにはき替えて総務省に向かった・・・
2010年12月25日
記者クラブ幹事社に事情聴取された 〜後編〜
http://tanakaryusaku.seesaa.net/article/175575479.html
記者クラブのいかつい看板。「○○組」とでもした方がお似合だ。「関係者以外立ち入り禁止」の貼り紙がある。
クリカラモンモンのお兄さんが「おいオマエ、何しとんのや?」と出てきそうで怖かった。
(総務省8階。写真:筆者撮影)
記者クラブ幹事社による事情聴取は21日、片山総務大臣記者会見の後行われた。聴取に応じたのは畠山理仁氏、上杉隆氏はじめ6人のフリー記者。
「任意の聴取」と告げられていたが“油断してはならない”と肝に銘じた。お手打ちに遭っても闇に葬られるだけだ。警察、検察は記者クラブと身内の関係にあり、フリー記者が6人程度行方不明になっても捜査に乗り出すようなことはない。実際、警察幹部から「フリージャーナリストなんてのはなあ、銀バエと同じなんだよ」と言われたフリー記者もいる。
我ら6人が消えても世間は知りようがない。記者クラブがフリー記者による動画中継を禁止しているからだ。とにかく生きて帰ることだけを考えた。
聴取が始まった。幹事社のX社・A氏とY者・B氏の2人は至って誠実そうな人柄だった。「ご要望はなんでしょうか?」と丁寧に聴いてきた。畠山氏が記者会見で記者クラブの非常識(記者クラブにとっては常識)を幾度も大臣に質すため座視できなくなったのだ。
フリー記者側からの要望は大きく分けて二つだった。「動画中継を認めてほしい」「記者会見出席の登録にあたって制限をなくしてほしい」。大臣への質問と同じ内容である。
動画中継はほぼ1年前から畠山氏が要望してきたものだ。ところがA氏B氏共に「それは聞いていない」というのだ。前の幹事社から引き継がれていないのである。別段驚きはしなかった。幹事社は2〜3ヶ月ごとに交代するが、その際の引継ぎ事項とならないのだ。
畠山氏は何年も前から各省庁の記者クラブに記者会見のオープン化を求めてきた。返事は決まって「クラブ総会にかけないと・・・」だ。そこでクラブ総会の結論を聞こうとすると幹事社が交代している。これが畠山氏と記者クラブとの交渉の歴史だ。歴史というには余りにも内容が空疎すぎて悲しくなるではないか。
幹事社交代は彼らにとって実に都合のよい「消去装置」だ。X社とY社の幹事社の任期は12月末までという。任期が残り10日になったところでフリー記者側の要望を聞く。返事をしなくても済む。次期幹事社に回答を求めても「聞いていない」だ。
筆者はそれを見越して次のように迫った。「おふたり(X社のA氏、Y社のB氏)が幹事社のうちに回答を頂けませんか?1年間『聞いていない』で通されたんだから次の幹事社が回答するとは思えない」
A氏が「クラブ総会にかけてからでないと・・・」と苦しそうに答えた。総会は28日に開かれるそうだ。各社の見解は「会社に持ち帰ってから」となる。会社の上司に相談もしないだろう。したとしても「ダメだ」ということになるのは必定だ。
来月からは新しい幹事社となる。こちらが返事を聞きに行っても「聞いていない」あるいは「要望は認められない」と答えられるのがオチだ。要望が却下された理由を追及すると「クラブ総会で決まったから」となる。絵に描いたような光景が目に浮かぶ。
最近、筆者は思うようになった――
「記者クラブ総会」とは国権の最高機関である。憲法改正だって可能かもしれない。
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