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法人税減税に異議を唱える赤旗
「ポスト・デモクラシー」という難題
JP モルガン証券株式会社 北野 一
• コリン・クラウチは、イギリスの経済社会学者である。クラウチが2003 年に
書いた「ポスト・デモクラシー」(青灯社)は、今、日本人が改めて読んでみ
る価値のある本だ。クラウチの基本理念は、「市場経済を前提としつつも、
人間の尊厳を守るために資本の動きや大企業による営利追求にある程度
の枠をはめ、政府が再分配を行うことを求める社会民主主義である」(山口
二郎北海道大学教授)。
• クラウチによると、「資本主義の性急なグローバル化に、民主主義は決し
て追いついていけない」ことによってもたらされた現在の困難な状況は、皮
肉にも革命前のフランスに似ているという。すなわち「税金を免除された君
主と貴族が政治権力を独占し、納税する中産階級と農民は政治的権利を
認められなかった」時代である。
• むろん、当時の君主や貴族ほどの露骨さはないが、現在のグローバル企業
は「政府に耳を貸してもらえなければビジネスセクターは繁栄せず、したが
って政府の主な関心事である経済発展も危うくなると脅かすことができる」し、
「企業はある国への投資を続ける意思がある場合、法人税の削減を求める
かもしれない」という。
• 実際には、「グローバルにはほど遠い企業が多く、巨大な多国籍企業でさ
え、既存の投資パターンや専門知識、ネットワークにしばられており、最低
の税金と最悪の労働条件を求めて世界中を転々とするどころではない」の
だが、誇張されたグローバル企業の力は、民主主義の圧迫要因になってい
る。言うまでもなく、「民主主義は国家のレベルを超えるのが難しいシステ
ム」だからである。
• 政府は16日、法人税率の引き下げを含む来年度の税制改正大綱を閣議
決定する。日本経団連の米倉弘昌会長は14日、「菅総理の決断に敬意を
表する」とコメントを発表している。クラウチが懸念している力学が日本でも
働いているようだ。因みに、クラウチは、「ポスト・デモクラシー」の主題は「政
府の、そして中道左派を含めた政党の政策立案機関が、企業エリートの権
力に取り込まれてきた経緯」の分析であると言っている。
• こうしたなか、権力に立ち向かうのは誰か。日本共産党の赤旗は、ちょっとし
た抵抗を試みていた。「日本のトップ大企業の利益にかかる法人課税の実
際の負担率が優遇措置によって30%程度であることが本紙の試算で分かり
ました」として、経常利益の上位100 社(単体)の負担率は平均33.7%であ
ったと書いている。
図表1 は、赤旗が掲載していた「おもな大企業の実際の法人税負担率(法人税
+法人住民税+法人事業税/税引き前当期純利益)」のリストである。なお、赤
旗と同じ手法で当方でも再計算したが、数字に誤りはなかった。より正確には、
法人税等調整額を分子に加える必要があろう。それも計算したが、全体像には
大きな違いはなかった。民主党政権は、本来、冒頭で紹介したクラウチの理念
を実現するような理想をもって誕生した筈であるが、菅政権になって、かなり方
向が変わってきたように思われる。
図表 1: おもな大企業の実際の法人税負担率
企業 %
ソニー 12.9
住友化学 16.6
パナソニック 17.6
三井不動産 18.8
京セラ 18.9
ブリジストン 21.3
三菱地所 22.5
村田製作所 23.6
本田技研工業 24.5
クボタ 24.6
リコー 26.8
神戸製鋼所 28.3
小松製作所 28.6
積水ハウス 29
三菱重工 29.7
トヨタ自動車 30.1
住友金属工業 30.8
住友金属鉱山 30.8
花王 33.6
キャノン 34.6
100社平均 33.7
出所: しんぶん赤旗よりJ.P.モルガン作成
注:2003〜09 年度決算データから試算
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