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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20101210-00000001-bshunju-pol
文藝春秋 12月10日(金)12時12分配信
米国では、日本人の元妻に子どもを「連れ去られた」元夫たちの訴えが社会問題化している。九月末には米下院が「元夫の承諾なく日本に連れ帰る行為は『拉致』だ」という決議を、ほぼ全会一致で採択し、大統領・オバマに突きつけた。中間選挙の敗北で議会対策に苦しむオバマにとって、菅がこの問題で踏み込んだ発言をしてくれれば、この上ない援護射撃だった。だが、菅は十三日のオバマとの首脳会談でこの話に触れなかった。
そればかりか、翌日のカナダ首相・ハーパーとの会談では「母親がDV被害者である場合など、国内に慎重意見が多い」と発言して欧米諸国をがっかりさせた。菅政権が稚拙なのは外交だけでない。国会対応の拙さを示す象徴的な出来事が起きたのは、十五日、尖閣ビデオの扱いをめぐり、野党側が民主党に統一見解を求めて国会が混乱していた時だ。
民主党の国対部屋に自民党国対委員長・逢沢一郎らが出向いた時、自民党側が封筒から文書を出し「こういう内容にしたらどうか」と示すと、民主党国対幹部たちは「なるほど。それでいいんですか」とつぶやき、それがベースとなって民主党の統一見解ができた。そして国会は正常化した。野党が与党に助け舟を出す国会。自民党が与党ボケしているともいえるが、民主党は与党としての最低限の訓練もできていない。
このような状況下、面倒な判断は官房長官・仙谷由人のもとにどんどん滞留する。それでも新しい仕事を背負おうとする性癖が仙谷にはある。例えば、現在休眠中の党シンクタンクを再開させて近代史の研究を行おうという話が党幹部の間で起きた。仙谷がすかさず「じゃあ、それは俺がやろう」と言いだし、周囲があわてて「それは長官の仕事ではないでしょう」と止めた。
仙谷の秘書官は一時、計十二人まで膨れあがった。菅の秘書官が六人だから、二倍になる。官房長官を首相の女房役とすれば、完全なかかあ天下だ。菅も、もとはといえば「俺が俺が」というタイプ。女房役がしゃしゃり出ることは心地よくない。ただ、ここで夫婦げんかを始めるわけにはいかない。二人の共通の敵は、自分たちに牙を剥き始めた「小鳩」なのだ。
二十四日夜、菅と仙谷は東京・東麻布の中国料理店・富麗華で夕食を取った。菅政権が誕生してから約半年、初めての「二人だけの外食」だった。二人の不仲が囁かれ始めたのを打ち消すためのパフォーマンスだったのか。翌日夜、紀尾井町のホテルニューオータニでは仙谷が会長を務める凌雲会の会合が開かれた。ゲスト・スピーカーは仙谷が東大生の時からの盟友で内閣官房参与の松本健一。松本は近代思想史の話をする中で「デモクラシーの訳語は、最初は『下克上』だった」と紹介した。政権の中枢にいながら、どん底からの巻き返しを図ろうという仙谷には示唆に富んだスピーチだった。
公明党の接近が当面期待できない今、菅が秋波を送るのは与党では国民新党代表の亀井静香。野党では、たちあがれ日本共同代表の与謝野馨だ。菅は十八日夜、与謝野を首相公邸に招き意見を聞いた。与謝野は菅が野党と個別に党首会談を行うことを提案。野党の政権へのスタンスの違いを浮き彫りにさせて与党の枠組みを再編するのが与謝野の狙いだ。たちあがれの与党入りも念頭に置いていることは推して知るべしだ。
与謝野の進言を受けた菅は二十四日、野党党首と会談することにしたが、その前に亀井と会った。菅は、人脈の広い亀井に、連立を離脱した社民党を含めた野党への働き掛けを期待している。その亀井は十一月下旬、赤坂にある行きつけの料亭で、自身が自民党時代領袖を務めた派閥・志帥会の元同志と酒宴をもった。
この席で亀井は「今のままでは大変なことになる」と強い危機感を示した。メンバーの古屋圭司や衛藤晟一は自民党、小林興起は民主党。この他にも志帥会の元メンバーにはたちあがれ日本代表・平沼赳夫らがいる。今はバラバラだが「保守」を軸に再結集すれば、看過できない勢力になる。百戦錬磨の亀井のこと。菅の期待通り現政権維持で動き続ける保証はない。小沢につくか、それとも野党・自民党に近づくか。目が離せない存在であることは間違いない。
菅は二十七日昼、鳩山と会食し、友人の助言を引用する形で「内閣支持率が一%になっても辞めない」と協力を懇請した。今の力関係では鳩山の方が優位に立っているように見える。だが「小鳩」の方も不安定だ。時は遡るが、十一月五日、小沢は親しい中堅・若手議員と中華料理屋で酒を飲んだ。小沢の元秘書の環境政務官・樋高剛らがセットした会合で、農水政務官・松木謙公らが参加した。政府入りした議員から現状報告を受け、小沢が自分の体験談や人脈を語るという会だった。
だが後日、この会合から外れた議員から横やりが入った。政府入りした人間が先に「大将」と酒を飲み、政府入りできなかった人間は宴席も外されたというやっかみの声があがったのだ。小沢グループの重鎮・奥村展三はこうした声を樋高に伝え、「こけにされたと思っている者もいる」と毒づいた。小沢や鳩山の側近の中でも、勝ち組と負け組の格差が生まれ、風通しが悪くなっているのだ。
小沢は来年早々にも、政治資金規正法違反で起訴され、当分は刑事被告人としての日が続く。その間、代表選で確保した「二百人」の目減りをどの程度に食い止めることができるか。そして目指す政局シナリオは倒閣か、政界再編か。倒閣ならポスト菅の候補は誰か。政界再編なら最大野党・自民党内にどう楔(くさび)を打ち込むか。いずれも絵は描き切れていない。
二〇一〇年も年の瀬を迎えた。二〇一一年の政局を占うのは元旦、東京・深沢の小沢邸で開かれる新年会だ。一〇年の元旦は、副総理だった菅も含め百六十六人の党所属国会議員が集まった。数と質で前年を上回れば小沢健在をアピールすることになる。小沢の師・田中角栄も元旦、目白の自宅に集まる田中軍団や官僚の顔触れをみて、その年の政局シナリオを練っていたという。 (文中敬称略)
(文藝春秋2011年1月号「赤坂太郎」より)
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