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最高裁による裁判官統制 〜生田弁護士が明かす「ヒラメ」の秘密〜
http://www.janjanblog.com/archives/25949
2010年 12月 10日 22:28
12月10日、東京地裁705号法廷では、13時10分から、杉原則彦裁判長の下、5件の判決が一斉に言い渡された。その5番目は、元大阪高裁判事・生田暉雄(いくたてるお)弁護士の提起した「公文書公開拒否処分取消」訴訟(平22〔行ウ〕第32号)である。杉原則彦裁判長は次のように言い渡した(他に波多江〔はたえ〕真史裁判官、財賀〔さいか〕理行裁判官)。言うのに要した時間は、約10秒程度、言い終わると杉原裁判長らは、無言のまま壁の向こうに消えた。
一、本件訴えを却下する。
一、訴訟費用は原告の負担とする。
正面入り口とは反対側から見た最高裁判所。傍聴人が法廷に入る時は、ご丁寧に一人ずつ金属探知機による検査まである。そこまでされると自分が〈主権者〉であることを忘れて、何か悪いことをして調べられているような錯覚に陥る。(撮影・三上英次 以下同じ)
生田弁護士が求めた「公文書公開拒否処分取消」訴訟とは、具体的には「最高裁の人事評価基準を情報開示せよと」というものだが、そもそも、どうして生田弁護士は、最高裁の人事評価基準の開示を求めるのか――。その根底には、私たち国民の生活にも多大な影響を及ぼす、最高裁による裏金疑惑、そして不透明な人事による裁判官統制がのからくりがあった(注1)。
生田弁護士によれば、憲法上、裁判官は身分を保障され(憲78条)、良心に従って独立して職権を行使(憲76条3項)することになっているが、最高裁をトップとするピラミッド型の司法制度にあって「裁判官は、為政者や最高裁の意向ばかりを気にする体質」(P9)になってしまっているという。
そのような体質がどうして出てくるのか――。生田弁護士は、著書『裁判が日本を変える!』(日本評論社)の中で、「裁判官の報酬表」をもとに生々しく説明している。
生田氏の著作に載っている「裁判官報酬月額」の表。最高裁長官の月給は2071000円(平成18.4月実施)となっている。
同書によれば、裁判官は8号給(月額50万3000円)から4号給(同84万3000円)までは、ほぼ機械的に昇給して行くという(注2)。しかし、3号給(同99万4000円)からは昇級する者としない者とで差が出て来るとのことである。
しかも「3号から昇級に差が出るからといって、そのときになって良心的裁判をやめて急いでゴマスリ裁判をやり始めても間に合わない。3号をめざして最初からゴマスリ判決をしていなければならないのです」(P109)というから、それが事実とすれば、ずいぶんと国民を馬鹿にした話である。
「裁判官の統制」の問題について、生田弁護士は「相当の期間裁判官を経験した者は、多かれ少なかれ、経験していることです。彼らがみずからの経験を公表することが、日本の裁判所を国民のための裁判所にするためには不可欠です。ところが、〈勝ち組〉の裁判官は、あえて公表する必要性を感じないし、〈負け組〉の裁判官は、公表することはプライドが許さない、というのが真実かもしれません」と言う。
「正義を重視する良心的裁判官は昇級に不利で、ゴマスリ裁判をする反民主的裁判官は早く昇級すること」(P109)、「〈陽のあたる場所〉でばかり転勤する者と、〈ドサまわり〉の者とに分かれていくこと」(P107)等を生田弁護士は紹介し、「正義などと無縁の裁判がまかり通るようになっていきます」と、最高裁の恣意的な人事制度の弊害を説く。
給与に差の出る3号給は、任官後だいたい20年目ぐらいからであると説明され、「任官後21年目というと、大学生・高校生の子どものいる時期ですから収入の多寡(たか)は切実であり、だれしも昇級をと焦る時期です」と、生田氏は裁判官の苦しい内情を突く。そして、そのようなゴマスリ昇進レースの結果として「4号地方都市勤務」と「1号大都市勤務」では年収で〈900万円〉の差がつくこと、さらに「3号になるべき時期から65歳の定年までの約20年間の年収・退職金・恩給を合計すると、いくら少なく見積もっても〈億〉単位以上の差異となる」ということを生田氏は説明して行く(P109)。
生田弁護士の表現は、かなり過激だ。――「良心を売った見返りに、笑いのとまらぬオイシイ生活を得ることになります」(P109)、「完全に馬車馬の前のニンジン対策」(P110)、「その意味では、今の日本の裁判官なんて実にカワイソーな職業なのです」(P110)と続くが、その次の一文を読むと、私たち国民が笑ってばかりいられないことに気づかされる。
「しかし、裁判を受ける国民はその犠牲になるわけですから、『カワイソー』なんて言っちゃおれません。ニンジンとしての高給のもとは私たちの税金だから、全国民がゴマスリ裁判官を飼育していることにもなります。」(P110)
その上で、生田弁護士は、最高裁が昇級を決めていることは間違いないとしても、「だれが具体的にどのようにして決めているのか、何を基準としているのか、時期・期間はどうなっているのかといったことが一切明らかにされてない」ことを問題視している。
そこで生田弁護士が提起した裁判が、「最高裁の人事評価基準を情報開示せよ」という「公文書公開拒否処分取消」訴訟なのである。
生田弁護士は、「国民が主権者であるという実感が、裁判に関与してまったく感じられないという現実があります」と書き、その上で「このような現実を前にして、主権者であるわれわれ国民は、2つのことに気づくべき」と読者にといかけをしている(P116)。
(1)裁判所は権威主義的にふるまうことによって何かを隠そうとしているのではないか。
(2)国民主権の行使のあり方が不十分なのではないか。
そうした問いかけのあと、生田弁護士は次のように、私たち〈主権者〉の置かれた状況に警鐘を鳴らす。おそらく次の一文を読めば、誰もが、次回以降、高裁での生田弁護士の主張に、深く耳を傾ける気持ちになるのではないだろうか。
「裁判官が主権者たる国民を放ったらかして、自己保身、自己の利益の追及ため、最高裁の意向や上司ばかり気にして、上司が未だ言わないことまでも率先して先取りしていく、恐ろしい状況下に、われわれ国民は置かれているのです。」(P117)
最高裁の裏金作り、そして、恣意的な人事による裁判官統制を、私たちは許してはならない。今日の法廷には、一般紙の報道関係者などは見かけなかったが、最高裁のこうした好ましくない点が放置されてよいはずがない。より多くの人たちが、この問題に関心を持つようになることを期待する次第である。
最高裁の見学を終えた小学生らを乗せた観光バス。次代を担う彼らは、はたして建物の中を見て、本当に最高裁の実態がわかったのだろうか…。
(注1)最高裁の裏金疑惑とは、裁判官を4号給(月額84万3000円)から3号給(同99万4000円)に昇級させるための予算を受けながら、一部の裁判官の昇級を遅らせる等によって、人件費を浮かして裏金を捻出する方法である。生田弁護士の著書P115〜及び、下記の小倉文三記者の記事に詳しい。
(注2)生田弁護士の著書で引用されている裁判官報酬表の数字は、平成18年4月1日実施のものである。現在の報酬額とは多少の相違がある。
生田弁護士の著作 「そのヒラメ裁判官が、刑事であれば警察や検察庁の意向を気にした裁判をし、民事であれば、政府に影響力のある大企業やお役所を相手にした市民の訴えについては、門前払いの裁判をするのです。ヒラメをただすのは、私たち庶民の仕事です。ヒラメもそれを待っているのかもしれません。」(P10)
〈生田弁護士 関連記事〉
◎「最高裁にも裏金疑惑、元高裁判事が指摘」(小倉文三記者による)
http://www.news.janjan.jp/living/0907/0907227533/1.php
◎「〈高知白バイ事件〉の日本史的意味」(同上)
http://www.janjannews.jp/archives/2909309.html
◎「高知白バイ事件・片岡晴彦さんの近況」(同上)
http://www.janjanblog.com/archives/15814
〈裁判官について考える〉
◎東京地裁前で「司法改革」を訴える大高さん
http://www.janjanblog.com/archives/23416
◎裁判官による人権侵害
http://www.janjannews.jp/archives/2833204.html
◎「コピー&ペースト」で判決文を作った最高裁判事
http://www.news.janjan.jp/living/0912/0912033969/1.php
◎「葛飾ビラ配布事件」の松井弁護士も、地裁の無罪判決に対して、原告荒川氏への有罪判決(高裁)を書いた池田修裁判長が、判決後間もなく東京地裁所長に昇進したことについて言及している。
http://www.news.janjan.jp/living/0910/0910191852/1.php
〈参考サイト〉
◎ 本裁判に関心を寄せる原田奈翁雄さんの季刊誌「ひとりから」
http://www9.ocn.ne.jp/~hitorika/index.html
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