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今日、首都圏発売の『週刊朝日』に「石原慎太郎東京都知事が画策する東京都議会マンガ規制条例可決? の愚」と題する記事を書いた。東京都議会の民主党の姿勢が決まるのもあと数日で、もう余り時間の猶予がない。東京都青少年条例だから、ついその問題点も細かいところに行きがちだ。けれども、『週刊朝日』の記事は次のように始まっている。
〔引用開始〕
石原慎太郎東京都知事(78)が『太陽の季節』で鮮烈な文壇デビューを果たしたのは1956年のことだった。旧世代に挑発的なこの作品は若者たちを熱狂させた。しかし、半世紀を経た今、石原知事は漫画などの性的描写を「不健全」として取り締まる条例の制定に乗り出している。
作家としてデビューした当時、石原知事は雑誌のインタビューでこんなことを話していた。
「おとなにとって罪にも見えるし、不倫にもみえるんだろうけれども、ぼくなんかの年代はおとながおぞましいと思うようなものに対して気がとがめないということはやっぱり大きな差だと思うんです」(『小説公園』1956年6月号)
〔引用終了〕
ここから先は、ぜひ雑誌を読んでほしいので引用は止めるが、今日は雑誌に書き切れなかったことを中心にまとめてみたい。そもそも「青少年条例」の正式名称は、青少年健全育成条例だ。この「青少年健全育成」とは何かという疑問が、この問題を考える上での前提にどうしても頭をもたげてくる。先日、出版された『マンガはなぜ規制されるか――有害をめぐる半世紀の攻防』(平凡社新書・長岡義幸著)がこの半世紀の推移をくまなくまとめている。『小説公園』も同書からだが、もう少し引用してみたい。
〔引用開始〕
「太陽族」という言葉は我々若い世代のどのような人間にも当てはまる呼称ではなかろうか。若い世代がその肉体の生理と健康さゆえに、価値紊乱(びんらん)者として有りうるのだ。いわば、既成のものとは異なった価値世界に住もうとしている人間である」(『中央公論』1956年9月号「僕にも言わせてもらいたい」)(『マンガはなぜ規制されるのか』12〜13頁 長岡義幸・平凡社新書)
〔引用終了〕
「価値の紊乱者」を自称していた石原知事が、「青少年健全育成のための陣頭指揮」に熱くなり、マンガ本を「反社会的」として「不健全図書」に指定して、出版社の自制を促すという構図は何を物語るか。ここは、石原都知事の人物論にあまり入り込む気はないが、そもそも「青少年健全育成って何だろう」という素朴な議論の土台が存在することだけは確認しておこう。
春に廃案になった青少年条例に代わって、今回の都議会に提案された東京都条例は、「18歳未満に見える非実在青少年」という枠組みを取り下げて、「刑罰法規に触れる」「近親者間における」→「性交または性交類似行為を、不当に賛美し又は誇張するように描写し表現するように」した「マンガ・アニメその他(実写を除く)」の自主規制を出版社などに求める内容となった。
第7条第2号「漫画、アニメーションその他の画像(実写を除く。)で、刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為又は婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為を、不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げ、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの」
この「刑罰法規に触れる」性的行為を不当に賛美し又は誇張して描くことは、18歳未満に関わらず、大人も対象とする。逆に言えば、18歳未満も含んでいるということになる。「非実在青少年」という言葉は、直接的な条文からは消えたが、しっかり根を残していた。
「刑罰法規」と言えば、罰則のある法律・条例のことで、たとえば軽犯罪法なども入ってくる。マンガは、想像の産物である。作者と読者が現実社会を風刺したり、笑い飛ばすのに、「社会常識からの逸脱」が描かれるが、下手をすると「当局の解釈次第」ということになってしまう。また、法的には罰則のない近親間の性行為も規制対象となるという条文は、今回の条例で初めて登場した。 そして、東京都が不健全図書として指定する対象に次の条文が加わった。
第8条第1項第2号 販売され、若しくは頒布され、又は閲覧若しくは観覧に供されている図書類又は映画等で、その内容が、第7条第2号に該当するもののうち、強姦等の著しく社会規範に反する性交または性交類似行為を、著しく不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を著しく妨げるものとして、東京都規則で定める基準に該当し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの。
つまり第7条第2号で業界に「自主規制」を求めた表現物のうち、「強姦等の著しく社会規範に反する性交または性交類似行為を、著しく不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現する」ものを不健全図書とするということだ。強姦「等」の「等」がどこまでの範囲なのかは当局の裁量の範囲だし、「いちじるしく社会規範に反する」という規定も、たいへん曖昧だ。
「業界への自主規制」も「不健全図書の指定」も「青少年の性に関する健全な判断能力の形成を著しく妨げる」「青少年の健全な成長を阻害するおそれがある」という東京都の判断が大義名分となっている。東京都青少年条例は、社会良識・社会的規範からの逸脱した性行為を賛美し誇張するマンガ・アニメなどを規制対象としている。それなら、東京都が推奨する「13歳」「15歳」「17歳」の「性意識」についての「健全な判断能力」「健全な成長」のポジティフな具体像とはいかなるものなのか。18歳の誕生日まで受験勉強に集中したり、スポーツに汗を流し、プラトニックな恋愛小説などに心ときめかせる程度なのか。都議会の議論に注目したい。
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