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東京都の<青少年健全育成条例の改正案>。案は、6月に都議会で一度否決されている。だが、「性に開放的な海外でも子どもは対象外。(日本は)野放図になり過ぎている」(時事通信)と語る石原氏が知事をつとめる都は、一部の文言を削除、条文を修正ずるなどして12月都議会に再提出した。
ちばてつや氏、秋本治氏、やまさき十三氏、本そういち氏ら著名漫画家が、三つの漫画家団体を代表して反対声明を出し、先月29日には、講談社、小学館など大手出版社の幹部らとともに都庁で記者会見して、<都の性描写規制条例案>に断固反対する姿勢を明らかにした。
(JCJふらっしゅ「Y記者のニュースの検証」=小鷲順造)
これについて、ちばてつや氏は、「若い作者が萎縮しているのを身近に感じる。条例案をこれでもか、これでもかと出してくる都の趣旨が分からない。漫画、アニメの文化がしぼんでしまう」(共同通信)と発言している。同じ記事によると、『釣りバカ日誌』原作者のやまさき十三氏は「私たちとの話し合いがないまま、条例案が出るのが理解できない。フィクションを現行法で罰しようとするのは無理だ」と主張、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の秋本治氏は、「(規制対象が広がれば、主人公の)両さんが普通の生活しか送れなくなる」と訴えている。
日本ペンクラブ(阿刀田高会長)は11月25日、3月に次いで2回目の反対声明を出した。「あいかわらず根本において、公権力が人間の内面や言論・表現の自由の領域に関与・介入することに対する謙抑的な配慮が感じられない」「戦前の日本の為政者たちが青少年の健全育成をタテに、まず漫画を始めとする子ども文化を規制し、たちまち一般の言論・表現の自由を踏みにじっていった歴史を思い起こさないわけにはいかない」と、言論表現の自由にかかわる根本的なところからの批判を出した。
東京弁護士会が若旅一夫会長の反対声明を出したのも同じく25日、(1)表現の自由を侵害する恐れ、(2)インターネットの利用について、家庭教育の自由を侵害し、保護者に対しフィルタリングサービスの契約・利用を事実上強制する内容など、法案がもつ根本問題を指摘し、子どもが性的搾取や虐待・有害情報にさらされている現状については、子どもを権利主体とした条例の制定が必要(改正案は単に青少年育成条例の改正に過ぎず、こうした理念に立脚していない)という立場を明らかにした。
26日には、日本雑誌協会など出版4団体で作る出版倫理協議会(鈴木富夫議長)が、「言論・表現の自由をゆがめる」など厳しく指摘する反対声明を発表した。
2日には、日本シナリオ作家協会(西岡琢也理事長)は、「曖昧な文言が羅列され規制範囲が拡大、規制対象の線引きがますます困難かつ不明瞭になっている」(毎日新聞)と批判し「断固異議を申し立てる」反対声明を発表した。
3日には、漫画家の竹宮恵子氏や出版関係者が都庁で記者会見、「(漫画家の)表現全体への規制が始まる。危険な条例だ」(共同通信)と反対する意向を表明した。
毎日新聞によると、都青少年・治安対策本部の担当者は、「違法な性行為を不当に賛美や誇張したアニメや漫画だけが対象。表現の自由は侵さない」と話したという。
都が執拗に導入をもくろむ<青少年健全育成条例案>=性描写規制条例案。都議会6月定例会で「表現の自由を侵すおそれがある」と否決された。その原案を修正して、<規制対象を、刑法や条例に違反する性的行為を過度に描いた作品という趣旨により明確化した>(毎日新聞)という。
同紙によると、都の現行条例は、性器を露骨に描写した作品だけを規制対象としており、「子どもの性に関する判断力をゆがめないため」(都青少年・治安対策本部)に規制を強化したいのだということらしい。今回の改正案の柱は、1)法令に触れる性的表現などを過度に含む漫画やアニメを18歳未満が買えないよう、店頭で区分陳列する対象図書などを拡大、2) ▽児童ポルノ根絶に向けた都民全体の努力義務、3)子供のインターネット利用に関する事業者や保護者らの責務の明示などという。
原案は、性的行為の過度な描写を含む漫画やアニメを子どもに売ったり、見せたりしないよう関係業界に区分陳列するなどの自主規制を求める内容で、強姦など反社会的な性的行為を肯定的に描いたものは、子どもへの販売を禁止する不健全図書の指定対象に追加したが、「規制範囲があいまい」と批判の声が上がり、著名な漫画家からも反対表明が相次いだ。
そこで都は、強姦や児童買春などの違法行為を被害者側が喜んで受け入れていたり、作品の大半を性表現が埋め尽くすものなどのうち、反社会性が著しいものを不健全図書指定の対象とする内容へと<修正>し、自主規制対象を「刑罰法規に触れる性交や婚姻を禁止される近親者間の性交を不当に賛美・誇張して描写したもの」などと定める内容とし、「あいまいと批判された条文をより明確化した」といっているようだ。
<修正>のより具体的内容は、1)規制対象とした描写について、「まん延抑止」を都民に努力義務として課した規定を削除、2)児童ポルノについて「何人もみだりに所持しない責務を有する」との表現を「根絶への自主的取り組みに努める」との文言に変更、3)インターネットで違法・有害な行為をした子供の保護者に対して、「都は必要な調査ができる」との条文を、「情報提供や支援を行う」との表現に修正したとしている。
これらについて、私は日本ペンクラブの声明や東京弁護士会会長の声明などが、大いに参考になると感じた。ここでは、日本ペンクラブの声明を整理しておきたい。
■日本ペンクラブ声明 「東京都青少年健全育成条例の修正改定案に反対する」
1)東京都は12月の定例都議会に青少年健全育成条例の修正改定案を再提出する
2)これは漫画やアニメなどの表現、インターネットや携帯電話などの電子的ツールの法的規制を通じて、青少年の育成環境から有害とされる性情報を排除しようというもの。
3)あいかわらず根本において、公権力が人間の内面や言論・表現の自由の領域に関与・介入することに対する謙抑的な配慮が感じられない。
4)表現やコミュニケーションという民主主義社会の根本にかかわる配慮や規制は、自主的・自立的に行われるべきであり、そこにおける主体的な工夫や試行錯誤が大人社会を成熟させるだけでなく、青少年が多様な価値観のもとで生きていく知恵と力を身につけるために不可欠な経験となることは、古今東西の文学が描いてきた常識である。
5)これまでの、また今回の改定案も、公権力がある表現を「有害」かどうかを判断することについて、何の疑念も抱いていない。しかし、言論・表現にかかわる私たちは、戦前の日本の為政者たちが青少年の健全育成をタテに、まず漫画を始めとする子ども文化を規制し、たちまち一般の言論・表現の自由を踏みにじっていった歴史を思い起こさないわけにはいかない。
6)また今回の修正改定案も、インターネットや携帯電話等に関し、青少年の利用を制限する責務を親たちなどの保護者に、これまで以上に広範に、画一的に求めている。
7)これは、本来プライバシーの空間であるはずの家庭の中にまで行政的規制を持ち込み、私たちの内面の自由、良心の自由を侵蝕するものと言わざるを得ない。
8)私たちはこうした条例が言論・表現の自由をゆがめ、プライバシー空間にまで行政・公権力の関与・介入を許すものとして、改めて反対する。
この反対声明は、都が12月の定例都議会に再提出した<青少年健全育成条例修正改定案>に対する批判であるが、これはそのまま、石原都政がこれまでやってきた学校教育のありようや、思想信条にまつわる種々の対策・施策の類に共通して言えるものであるように思う。
時間と分量などの都合で、ここではこれまで本稿で種々に、また繰り返ししてきたことについては割愛せざるをえないが、私は、この一見すると、都民の生活を守るためのように聞こえる理屈のたぐい、そのきれいごとにまとめあげようとする文言のなかに、日本ペンクラブの声明が指摘するとくに次の二点について、さらけだしてはばからない石原都政の古ぼけた旧支配体制の繰言が挟み込まれるのを見る。そしてそれに対してわき上がる痛烈な違和感を禁じえない。
1)根本において、公権力が人間の内面や言論・表現の自由の領域に関 与・介入することに対する謙抑的な配慮が感じられない。
4)表現やコミュニケーションという民主主義社会の根本にかかわる配慮や規制は、自主的・自立的に行われるべきであり、そこにおける主体的な工夫や試行錯誤が大人社会を成熟させるだけでなく、青少年が多様な価値観のもとで生きていく知恵と力を身につけるために不可欠な経験となることは、古今東西の文学が描いてきた常識である。
言論表現の自由を実現し発展させる力は、自ずと言論表現に携わる者・事業者たちの<営業の自由>に軸足があれば、それは高度に発展した市民社会では受け入れられにくくなる。営利目的の行為に行き過ぎがあれば、それは表現行為の意義や、意義ある表現行為のありようという議論を外れた管理統制の立場をとる側からの反発を強める場合もある。その意味では、私は、ちばてつや氏の「若い作者が萎縮しているのを身近に感じる。条例案をこれでもか、これでもかと出してくる都の趣旨が分からない。漫画、アニメの文化がしぼんでしまう」との発言に注意を向けるべきだろうと考える。
都の性描写条例案そのものと、それを取り巻く環境が、作品の実作者たちを萎縮させている。これほど恐ろしく、また一方でおそろしく滑稽な構図も石原都政というゆがんだ政治の特徴そのものだろう。
ちばてつや氏らが三つの漫画家団体を代表して出した声明は、上記の漫画・アニメ文化の将来を憂いつつ、都の改正案についていう。
☆年齢規定がなくなったため前回案より規制範囲が拡大し要件もあいまい
☆18歳未満とのみだらな性交を禁じた都条例なども刑罰法規に含まれるため、実際には前回案以上に登場人物の年齢が恣意(しい)的に判断される懸念がある
そして、<改正案の販売規制は、不健全図書への指定じは、コンビニエンスストアでの販売を事実上困難にさせる>との指摘も含む。都の性描写条例案に心情的に賛成の立場をとりやすい人たちの中には、こうした業界事情などに高い関心を示して、作家たちの<不健全な営利事業>をこきおろす層も存在する。
だが、ひとつには、日本雑誌協会からは、「出版物の自主規制はこの5年ほどで進んでおり、これ以上何をすればいいのかという段階だ」との状況説明も出ている。雑誌協会など4団体でつくる出版倫理協議会は、11月中旬に「児童と表現のあり方検討委員会」を設けて、議論を重ねていくことを決めたと報じられている。また前述したちばてつや氏による漫画・アニメの時代の担い手を育成する立場からの発言とあわせて、秋本治氏の「自由度があるのが漫画の世界。子どもたちは良いことも悪いことも学ぶ。いいのか、どうなのかとなると萎縮してしまう」との話も参考になる。
政治家や役人が、表現の管理統制に走ろうとする見事にこっけいな姿は、グーグルやインターネットなどをめぐる中国の規制とそのまま酷似する。中国の事情と日本の事情は異なるにしても、そういう行為に出ようとする政治家が日本の首都の知事などをつとめている。このことのほうが問題であることを、日本ペンクラブや東京弁護士会の声明から読み取る力こそ、いまの日本社会には不可欠となっている。
私が都のこうした動きで最も問題と感じることは、東京弁護士会会長の声明のなかにある<インターネットの利用について、家庭教育の自由を侵害し、保護者に対しフィルタリングサービスの契約・利用を事実上強制する内容など、のことである。漫画・アニメを含む表現に対する公権力からの規制の動きには、およそ前哨戦がある。都の教育現場への強圧の数々はいうまでもない。パソコンやインターネットの都の公的サービスの場で、この<フィルタリング>はかなり前から駆動している。
東京都の図書館など公的サービスの場で使われている<フィルタリング>の中身、つまりフィルタリング・コードは、現代市民社会に適合しているか、恣意的に包括的な<閲覧禁止>のコードが、無軌道に導入されていないだろうか。
都が繰り返し繰り返し、これでもか、これでもかと出してくる都の性描写条例の案。だが問題への対処の方法が、根本から間違っている。都は、公的サービスの場において、フィルタリング・サービスの名目で、実質的な<閲覧規制>をほどこしているのではないか、と私は長く疑っている。今回の<性描写>にかかわる表現規制の動きは、そうした<実態>を正当化するための一里塚ではないのか、との疑いも打ち消すことはできない。表現の自由に対する抑圧が、そのまま言論の自由に対する抑圧に直結していたり、直結していったりする悪政の数々を私たちは忘れるわけにはいかないのである。
日本ペンクラブの声明がいうように、<言論・表現にかかわる私たちは、戦前の日本の為政者たちが青少年の健全育成をタテに、まず漫画を始めとする子ども文化を規制し、たちまち一般の言論・表現の自由を踏みにじっていった歴史を思い起こさないわけにはいかない>のである。
東京弁護士会会長の声明が最後に結んでいるように、<本件条例案には反対であり、都議会定例会において、慎重かつ十分な審議が行われることを求める>必要があろう。繰り返すが、都は、問題への対処の方法を根本から間違っているとしかいいようがない条例案だからである。
この条例案に、自民、公明は賛成の方向で、最大会派の民主党も賛成ないし反対しない方向であるとの報道がある。条例案そのものに含まれる危険と、その副作用に最大限の注意を注がねばならない。市民とジャーナリストは連携して、広く素早くこの動きについて問題意識を共有し、強く警鐘を打ち鳴らしていく必要が出ている。
(こわしじゅんぞう=日本ジャーナリスト会議会員)
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