http://www.asyura2.com/10/senkyo101/msg/207.html
Tweet |
中央大教授刺殺 懲役18年判決(東京新聞 2010年12月3日 朝刊 / 東京ウェブ)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2010120302000025.html
東京都文京区の中央大で昨年一月、理工学部教授の高窪統(はじめ)さん=当時(45)=を刺殺したとして殺人罪に問われた卒業生の山本竜太被告(29)の裁判員裁判の判決公判が二日、東京地裁で開かれ、今崎幸彦裁判長は「妄想性障害の影響で心神耗弱状態にあった」と認定し、懲役十八年(求刑懲役二十年)を言い渡した。
今崎裁判長は、妄想性障害の影響で「高窪教授を中心とする団体が自分の命を狙っていると考え殺害を計画した」と動機を指摘。一方で、殺害を決意し、実行するまでの行動には「被告の性格やものの考え方に起因する部分が大きく、妄想の影響は限定的だった」として、被告の刑事責任能力を認めた。
↓
これに関連して、東京新聞12月3日(金)朝刊 11版S 29頁 記事を引用します−−
○「妄想以外正常 周囲気付かず」専門家が指摘
妄想性障害について日本神経学会の元理事長で東北福祉大大学院の佐藤光源教授は「妄想の内容を話さなければ、感情も会話も普通で正常。家族や友人も心の病気だとは捉えにくい」と説明。
(中略)
裁判で争点となった場合、@本当に妄想性障害か A妄想がどこまで判断や行動に影響したか Bその影響がどの程度なら心神耗弱や心神喪失と認めるか−という「極めて高度な判断を迫られる」と佐藤教授。「専門知識がない裁判員にとってはかなりの重荷になるだろう」と気遣う。
(引用おわり)
記事からは、取材は今回の判決以前のもののように思われます。
--------------------
重大な殺傷事件について裁判員裁判で扱うことの問題点がつぎつぎとあらわれ、それらはいずれも、そもそも制度そのものに無理があることを示しているように思われます。
1.
横浜2人殺害:被告に死刑判決 裁判員裁判で初 横浜地裁(毎日新聞 11月16日 / 毎日jp)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20101116k0000e040023000c.html
男性2人を殺害したなどとして強盗殺人など9罪に問われた住所不定の無職、池田容之(ひろゆき)被告(32)に対し、横浜地裁は16日、裁判員裁判では初の死刑判決を言い渡した。・・・
(中略)
朝山裁判長は死刑言い渡し後「重大な判断になったので控訴を勧めたい」と異例の説諭をした。
(コメント)
裁判長のこの「説諭」の真に意味するところはわかりません。審理期間の短さが原因ともいわれています。
しかし、第一審とはいえ完結すべき裁判として態をなしていない、破綻しているのは確かでしょう。
2.
石巻の3人殺傷:死刑判決 少年、身をこわばらせ /宮城(毎日新聞 11月26日 / 毎日jp)
http://mainichi.jp/area/miyagi/archive/news/2010/11/26/20101126ddlk04040201000c.html
(前略)
◇評議実質2日半 「時間不足」疑問の声も
少年の裁判員裁判は15日から5日間、公開の審理をし19日に結審したが、週末や祝日を挟んだため、判決まで非公開の評議は実質2日半だった。言い渡し当日も話し合いを重ねたとはいえ、裁判員裁判初の死刑となった横浜地裁判決(16日)の3日間より短い。専門家からは「時間不足では」などと疑問の声が上がった。
今回の評議は祝日の23日は開かれず、22、24日と25日午前だった。仙台地裁は評議に要した時間を公表していないが、当初2日間は夕方まで話し合ったとすれば計20時間弱。最高裁がまとめた全国平均7・5時間は超す。
ただ今回の評議で問われたのは「少年と死刑」という難題だ。元家裁調査官で京都ノートルダム女子大の藤川洋子教授(犯罪心理学)は「少年事件は成人の事件より考慮すべき要素が多いのに、評議が数日とは」と首をかしげる。調査官時代は3週間かけて成育歴などの調査をまとめ、その過程で新事実が分かることもあった。短時間の結論に関し「裁判員も後々『これでよかったのか』と悩むのではないか」と指摘した。
(コメント)
少年事件を裁判員裁判の対象とすることの問題点、とくに審理、評議期間の短さの問題については、多く指摘されています。阿修羅にもすでに多くありますので、ご参照ください。
3.
中央大教授刺殺 懲役18年判決(東京新聞 2010年12月3日 朝刊 / 東京ウェブ)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2010120302000025.html
↑
これは冒頭に挙げました。記事は、冒頭引用部分のあと−−
妄想性障害は、今後の裁判員裁判でも事件当時の精神状態や責任能力を争うケースで審理の俎上(そじょう)に載ることが予想される。判決後、裁判員六人と補充裁判員二人の全員が記者会見に出席し、「被告は今も妄想から抜けきれない。どう刑に反映するか悩んだ」などと心境を語った。
「自分にいやがらせや監視をしてくる圧力団体の首謀者が高窪教授だと思った」。山本被告は法廷で、自分に対する圧力団体による盗聴や嫌がらせなど妄想の内容を供述していた。事件の詳しい内容を知り、三十代の女性は「妄想の強さにびっくりした」と話し、五十代の女性は「どこから考えたらいいか分からなかった」と語った。
三十代の女性会社員は「初めは病気なら仕方がないという気持ちもあったが、議論を進める上で刑事責任能力について理解を深めた」と説明。評議では裁判所から過去の類似事件の量刑が裁判員に示されたが、「それがすべてではない。判決は、わたしたちが議論した結果」と話した。(後略)
(コメント)
冒頭引用の、佐藤教授の指摘=「専門知識がない裁判員にとってはかなりの重荷」をご覧ください。
4.
無罪主張の被告に17年 タンク殺人で裁判員裁判(東京新聞 2010年12月2日 夕刊 / 東京ウェブ)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2010120202000201.html
滋賀県米原市で交際相手の小川典子さん=当時(28)=を汚泥タンクに落とし窒息死させたとして殺人罪に問われた会社員森田繁成被告(41)の裁判員裁判で、大津地裁(坪井祐子裁判長)は二日、懲役十七年(求刑無期懲役)の判決を言い渡した。
森田被告は逮捕段階から一貫して殺害を否認し無罪を主張していた。
(中略)
この裁判員裁判では、一部の被告人質問が異例の非公開とされたほか、鹿児島地裁の高齢夫婦殺害事件(十日に判決予定)と並び、裁判員裁判では最長の十日間の審理となった。
東京新聞12月3日(金)朝刊 11版S 29頁 には、以上の記事に続けて、こうあります。
↓
判決言い渡し後、裁判員を務めた五十代の男性は記者会見で、検察側の証拠が少なかったと指摘。
状況証拠だけの立証について「素人には難しい。科学的な捜査のデータがもっと欲しかった」と注文を付けた。
(コメント)
これは重大です。全面否認事件を状況証拠だけで判断するのも難しいでしょうが、この裁判員のかたは、「証拠が少なかった」と言っています。
しかも「証拠は少なかったが十分だった」の意ではなく、どうやら「不足だった」の意味です。
そうすると、疑わしきは被告人に有利に、の原則すら、理解され生かされていたかどうか疑問になります。
5.
天神暴行死の裁判員裁判、ずさん判決と高裁指摘(読売新聞 2010年12月2日 / 読売オンライン)
http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20101202-OYS1T00208.htm
福岡市中央区天神で暴行された男性が死亡した事件で、殺人罪に問われた被告2人に傷害致死罪を適用して懲役10年(求刑・懲役17年)を言い渡した1審・福岡地裁の裁判員裁判について、2審・福岡高裁の裁判長が「判決に法令違反があり、破棄は免れない」と言及したことが分かった。裁判長は、傷害の程度や部位といった犯罪事実が判決に示されていない上に、事実認定にも疑問がある、とずさんさを指摘。控訴審がどのような判断を下すのかが注目される。
11月30日に福岡高裁で開かれた無職楠原崇寛被告(24)(福岡市中央区天神3)の控訴審初公判で、陶山博生裁判長が「1審判決は傷害致死罪を適用しながら、死につながった傷害の部位や程度が示されていない」と発言。判決に不可欠な理由が示されていない法令違反があると指摘した。「事実認定にも疑問点があり、死に至る客観的事実を確認する必要がある」として、司法解剖を担当した医師の証人尋問を行うことなどを決めた。刑事訴訟法では、事実認定に変更や誤認があったり、法令違反があったりした場合、判決を破棄すると規定。裁判員裁判について法令違反が指摘されるのは異例だ。
(後略。引用おわり)
最後の N0.5の事件については現在までの報道からはまだ詳細がわかりません。
しかし、最後 N0.5の事件をのぞいては、いずれも裁判員制度のもたらす様々な問題点の一部が、早くも集中的にあらわれているといえるでしょう。
早急に見直すべきではないかと考えます。
なお、12月10日に判決予定の鹿児島地裁、高齢夫婦殺害事件も全面否認事件です。
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK101掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。