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朝日新聞が12月2日付け朝刊の社説(3面)で、「政治資金報告 1つの『財布』で、透明に」と題して、「政治とカネ」について論説している。まず、冒頭「好むと好まざるとにかかわらず、企業・団体献金には頼れなくなる」と宣言している。その予兆が「2009年の政治資金収支報告書(中央分)」に感じられるのだそうである。
社説は最後のところで「カネで手勢を養う政治から、もう卒業したい。党が資金を管理し、公正に分配する仕組みを検討してはどうか。ほかにも多くの論点がある。1つは個人献金を伸ばす方策だ。私的な見返りを求めない小口の献金が増えれば、政治家のふるまいも変わるだろう」といかにも得意に主張している。
しかし、新聞は、購読料金と広告収入で成り立ち、民放テレビは広告料金だけで経営している。広告収入の大半は、企業からのものである。政府広報を請け負えば、国からの税金で賄う部分があるということだ。NHKは、国から税金の投入を受け、そのうえ視聴料金を強制徴収して経営している。
広告は、スポンサーの意向に影響を受けやすいので、新聞も民放テレビも、中立公正、不偏不党性を維持できない。この弊害を排除するには、企業・団体からの広告収入を全廃するしかない。そして、出来れば、新聞は購読料金のみ、民放テレビは、も、個々人、個々の家庭から視聴料金を徴収する。不偏不党性を維持するために、是非実行して欲しい。そのうえで、政治献金について論じるべきである。
朝日新聞は、広告収入と企業との関係、不偏不党性を維持が歪められる危険について少しも論じないで、政治資金に対しては、個人献金のみでやれと主張している。ただそれだけを言い放しにして、その先の「個人献金の風土のない日本で、どうやって個人献金を伸ばすか」について、具体策を何も提案していない。これは、極めて無責任である。
この個人献金一本の政治献金制度を主張する大前提として、社説は「党が資金を管理し、公正に分配する仕組みを検討してはどうか」と述べているけれど、政党助成金で賄われる政党に入党時、候補者として公認されなければ、政治活動や選挙活動用の資金提供は受けられないので、入党者でも未公認候補者はもとより、政党院無所属候補者は、資金提供を受けられないため、事実上、差別扱いされることになる。
そして、政党が一種の国家機関と化して、やがて政党政治家が、国家公務員か地方公務員化してしまう。こうなると、政党政治家のサラリーマン化は、ますますひどくなるのは、だれの目にも明らかである。これは、自由と民主主義を体制原理としている国家とは言えず、半ば国家統制された社会主義国家に変質していくのは、避けられない。自由と民主主義では、政治の世界においても、「自助努力」が当たり前のことであり、政党にしても、本来なら税金を投入されるべきではない。
朝日新聞が、個人献金一本化を主張するなら、選挙に立候補する際に要請されている「供託金」について、全廃を提案すべきである。なぜなら、この制度は、日本国憲法第15条第3項「普通選挙を保障」規定に反してる選挙権を事実上、制限しているからである。要するに、成年に達すれば、だれでも立候補できるはずなのに、貧乏人は、立候補できず、金持ちしか政治家にはなれないのである。というように、朝日新聞のこの社説は、「画に描いたモチ」を掲げているようで、空疎であり、どこか変なのである。
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