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http://www.magazine9.jp/okadome/101201/
全国的に注目された沖縄県知事選は現職で自民党沖縄県連、公明党本部、みんなの党が推薦する仲井真弘多知事の再選となった。仲井真氏が約33万5千票で、社民党、共産党などが推薦する対立候補の伊波洋一宜野湾前市長は約29万7千票、その差は約3万8千票だった。筆者が選挙戦の間に独自に入手した事前予想より票差は幾分大きく、惨敗というべき結果だった。投票率は61%弱で、過去の知事選に比べても二番目に低い数字だった。民主党沖縄県連が独自候補擁立を断念し、自主投票となったことも勝敗に影響したのではないか。
仲井真氏が当選した4年前の県知事選でも、対立候補の糸数慶子氏との票差は3万7千票だったことを思えば、保守対革新という対立構図がいまだに残る沖縄の政治勢力のシェアは基本的に変わっていないということかもしれない。
沖縄における県知事選や国政選挙は、常に「基地か経済か」という二者択一的戦いだった。しかし、今回は両候補とも、「国外移設」「県外移設」を唱え、普天間基地の辺野古移設に「反対」、「困難」という微妙な対立軸での選挙戦となった。
昨年夏の民主党政権誕生で、沖縄県民は初めて普天間基地の県外・国外移設に現実的な期待感を持った。その期待は今年5月の鳩山前総理の「日米合意=辺野古新基地建設」容認発言で見事に裏切られることになるわけだが、7、8割が辺野古新基地建設反対という県民世論だけは形成された。
それを目ざとく感知したのが自民党沖縄県連である。前回の県知事選当時から辺野古新基地容認の立場をとってきた仲井真氏は、つい最近まで県外移設の主張をなかなか明言しなかった。その背中を押したのが、自民党県連である。自民党本部はいまだに辺野古新基地建設の立場だが、自民党県連は独自に県外移設を主張したのだ。自民党は今や政権党でないという気楽さもあるのだろうし、まずは勝つことが先決という、ネジレもヘチマもないという選挙戦術は見事に成功したというべきだろう。タリバン岡田が選挙を仕切る民主党本部とは大違いである。
この選挙戦術にうまく対峙できなかった伊波陣営は争点を失い、肩透かしを食わされた選挙戦となった。有権者から見ても、両者の違いがよく見えなかったのではないか。基地問題が争点にならなければ、現職で知名度もある仲井真氏の雇用と経済に強いというイメージが優勢になるだろう。伊波氏は「経済に弱い」「12年前の県政不況の暗い時代にもどっていいのか」「共産党も支援する伊波氏は反安保イデオロギーの危険な人物である」といったネガティヴキャンペーンもあった。沖縄は全国で所得水準も最低で失業率の高さも全国一である。仲井真氏は県民所得を全国で中くらいに持っていくとアバウトに訴えていた。
仲井真氏は前回の知事選において、普天間基地は3年をメドに閉鎖するという公約とともに、失業率も半減させる。と公言していた。にもかかわらず、公約は全く実現されていない。確か、知事職は一期しかやらないということも当時いっていたはずだ。これは、地元メディアのチェック能力の欠如であり、その責任も免れない。もっとも、公約を次々と撤回する民主党政権を見ていれば、批判される筋合いではないという声もあるだろうが(苦笑)。
ついでに言えば、今回の知事選で伊波氏が負けた責任の大半は民主党政権にあるといっても過言ではない。民主党の豹変ぶりは政権交代に期待した有権者を完全に裏切り、政治不信を大きく助長させた。どうせ、投票しても基地問題は解決しないという諦念が、投票率の低さにも表れていたのではないだろうか。民主党政権の国政、外交における不甲斐なさを見ていれば、積極的に政治に参加する気持がなえてしまうのも当然だろう。
実際、民主党県連は本部の恫喝にもめげず、玉城デニー、瑞慶覧長敏衆議院議員は伊波支持を表明し、山内末子県議兼副幹事長は離党届を提出したうえで、伊波支持に積極的に参加していた。喜納昌吉代表を中心とした他の幹部連は民主党本部に従う立場で、仲井真知事支持を打ち出し、バラバラ状態。民主党県連は分裂状態で、今回の選挙で修復不可能な亀裂が入ったのではないか。
タリバン・岡田は「伊波支持はまかりならん」というオドシをかけ、民主党議員が沖縄入りして伊波候補を応援することじたいを禁じた。沖縄県知事選が盛り上がりに欠けたのは政権与党である民主党が知事選を模様眺めとし、伊波支持を否定しつつ暗黙裡に仲井真知事を支援するというカラメ手の作戦をとってきたためである。民主党沖縄県連は今回の選挙で派手な選挙運動を禁じられたため、存在感も薄く盛り上がりにかける結果となった。選挙戦終盤に入り、下地幹雄氏の国民新党と地元政党「そうぞう」が伊波支持を決めたが、時すでに遅し、の状況だった。
今回の選挙に影響を与えたのではないかと思われる外交上の事件もあった。尖閣諸島における中国漁船衝突事件と北朝鮮による韓国の国境沿いの島・延坪島への砲撃事件だ。この事件のおかげで、尖閣諸島を自衛隊によって強化せよとか、北朝鮮の暴発を想定すれば、日米安保の重要性が高まり、抑止力としての沖縄の米軍基地の存在意義が高まったという見方も流布された。
しかし、東京のマスコミが思うほどに沖縄県民は動揺していない。動揺しているのは、防衛省や外務省、民主党政権である。普天間基地が現実問題として抑止力になっていないことは、沖縄県民にとってはもはや常識の範囲内である。
仲井真知事は当選後、「辺野古移設は困難だ。日米合意を見直し、普天間の問題は日本全体の問題として政府が県外移設に取り組んでもらいたい」と述べている。中国や北朝鮮の軍事的脅威があるから、沖縄は我慢しろという論理はもはや通用しないことを民主党政権も米国も早く気が付くべきである。選挙では負けたが29万5千の県民は普天間基地の国外移設を望む伊波候補に投票した事実をきちんと認識し、仲井真知事は県民党的立場で日米両政府に沖縄の世論をしっかりと伝える役回りを担わされたことを自覚してほしいものだ。間違っても基地振興策とリンクする形で辺野古新基地建設を容認するような県民への裏切りだけは止めて欲しいものだ。
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