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「日本一新運動」の原点(29) ── 民主党政治が劣化した原因は何か
■民主党政治が劣化した原因は何か
柳田法相の放言による辞任、仙谷官房長官の度重なる暴言・失言をめぐる問責決議案の提出などで、補正予算の審議遅延、そして北朝鮮による韓国砲撃で、菅首相のリーダーシップが問われている。
11月23日(日)、反小沢で名を売った、生方衆議院議員の選挙区である千葉県松戸市で市議選が行われた。民主党は11人の候補を立てたが、当選はわずか新人2人だけであった。現職4人全員が落選し、法定得票に満たない候補が3人いたという大惨敗である。
また、来年の統一地方選を調査している著名な機関によれば、西日本(関西・中国・四国・九州)で民主党は壊滅的とのこと。10月末の帰省のとき、民主党高知県連で同党公認で立候補予定者数人から、新しい形で出馬したいがどうだろうかとの相談があったが、この状況を民主党国会議員がどれだけ知っているのか、はなはだ疑問である。
菅政権が、国会運営を始め外交・内政あらゆる面で機能を喪失している原因は、直接的には「小沢排除」の政治を続けていることにある、と言えば反論する人もいようが、私に言わせれば昨年の政権交代のときから事実上「小沢排除」が始まっていたのだ。「政策の協議と決定に関わらない与党幹事長」で議院内閣制が運営できるはずはない。
昨年3月から麻生自民党政権が仕掛けた「小沢の政治と金」は、政治捜査で政権交代を阻止し、小沢氏を政権から排除する政治謀略であった。鳩山氏はそれを理解していたが、菅氏は民主党内の反小沢グループに同調し、「小沢はずし」を工作していたと私は推測している。昨年8月の政権交代の前後、「旧さきがけ」関係者の小沢批判と小沢下ろしは異常であった。それは麻生自民党政権と検察の方針を事実上継承するものであった。
鳩山民主党政権が発足した時期、細川元首相は私に「細川政権を潰したのは小沢さんではない。"さきがけ"に問題があったのだ。日本新党から"さきがけ"に移った人たちは、人間として性格が悪く、誠実さがない」と民主党政権の行方を危惧していた。
菅政権が発足して、民主党政治が政権交代の原点から離れ、自民党政治より悪質になった状況を心配した鳩山元首相は、小沢氏を参加させた挙党体制を再生させようと努力した。しかし、菅首相は拒否して九月の代表選となる。代表選での菅首相の言動から本性を知った国民の中には、その能力に疑問を持ち、今日の状況を予期した人たちは少なくない。
小沢氏は、菅首相が劣化させた政治に反省を求め、民主党政治を正常化し、日本経済を回復させ「国民の生活が第一」の政治を実現すべく、多くの出馬反対論を排して代表選に挑戦した。小沢氏が「代表選出馬反対論」に乗って、「静かにして」いたなら、この危機的状況で民主党は、国民からどう批判を受けたか自明である。政権交代の大義は泡となって消え去っていたのである。小沢氏が代表選で、混迷する日本を如何にして再生させるか、具体的提案をしたことが、民主党がどうにか国民に支えられている一筋の糸といえる。反小沢の先鋒マスコミを任じている、サンケイ新聞の世論調査で、望ましい首相のトップに小沢一郎氏が8.6パーセントと躍り出たことが何よりも証明している。
現在の悲劇的ともいえる菅政権の政治劣化の責任は、筋論からいえば「代表選での菅首相で菅代表に投票した人たち」にある。党員・サポーターはマスコミの俗論に影響されてのことであろう。国会議員の中には政治体験の浅い人たちもいるので強く責めるつもりはない。
また、小沢排除の確信派すなはち、欲に凝り固まって自分本位で動き、善良な国民を裏切る輩は論評するだけでも無益である。
一方、自民党時代から小沢氏と政治行動を共にしてきた「渡部恒三・藤井裕久・石井一」らの責任は論じておかなければならない。彼らはマスコミなどを通じて小沢氏を誹謗し、時代背景も読めずに「代表選に出馬すべきでない」と論じた。ニンジンを鼻先にぶらさげられてのか、毒マンジュウに当たったのか知らないが、貴方がたは何のために、何年政治家をやっていたのか。他の2人に関しては自民党時代からの行状はいやというほど知っているので何も期待はしない。しかし、藤井氏は、私が衆議院事務局時代からの知り合いで、政治家としては同志であった。私たちの積年の課題であった政権交代をなし得た今、小沢排除による日本政治を劣化させた氏の責任は重大である。
■民主党はどうすべきか
この日本の危機に、私がもっとも残念に思うのは、民主党国会議員の大多数が小沢一郎という政治家の実像を知らないことである。否、知ろうとしないことである。政権交代を阻止しようとする国家権力が、約30億円という税金と、1年数ヶ月という時間を使って、小沢氏のあらゆることを捜査して不起訴となった問題を、憲法違反の権限をもつ検察審査会を怪しげに操作して、小沢氏の政治活動を停止させる事態を、座して見過ごしていてよいのか。それで社会の木鐸といえるのか。
しかも、政権交代以後は民主党内で小沢氏の活動を封印しようとする動きが目立った。わけても小沢氏に近い人たちでさえ、強制起訴となり刑事被告人となれば政治活動はできない。ましてや、首相になることは不可能だと思い込んでいる国会議員がいることが残念だ。
国会議員たちが議会民主政治の精神を理解しておれば、強制起訴を止めることもできるのである。麻生政権が指示し、検察権力が民主政治に仕掛けてきた事件であるという認識を、国会議員が認識しないところに今日の問題があると同時に、小沢氏の国会での説明を国会対策の駆け引きに利用するという悪例を放置しておくことは、なんとも情けない政治家どもである。
今一度、小沢氏に代わる政治理念と高い見識を持つ政治家が他にいるのかと問いたい。民主党が再生政権交代の原点に立ち返り、外交も内政も国民が安心して生きていける日本とするために、小沢一郎という政治家を民主党政権の「ど真ん中」で活動できるようにするのが、喫緊の課題であり、民主党が再生するには他に術はないと断言する。
違憲で違法の強制起訴を阻止するのが、当面の重要課題である。劣化した司法関係機関が強制起訴裁判とし、万が一「刑事被告人」と呼ばれても、内閣総理大臣に就任しても憲法上何の問題もない。衆議院事務局に奉職し、後に参議院議員に転じても、一貫して憲法に照らした議会民主政治の実現に生涯を託した私だから自信を持って断言する。
これらはむしろ、日本に真の議会民主政治を確立できる絶好のチャンスともいえる。ここ数年の小沢氏に対する国家権力の弾圧は、戦後民主主義を誤って生きてきた、私利私欲に生きた日本人の足掻きであった。小沢グループといわれる政治家は、せめてこのことを肝に銘じておくべきである。
http://www.the-journal.jp/contents/hirano/2010/11/29.html
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