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今年度補正予算が成立した。
あわせて、仙谷由人官房長官、馬淵澄夫国土交通相の問責決議が可決された。これを機に野党が全面的な審議拒否に踏み切れば、多くの重要法案が日の目を見ずに終わる。64日間の会期で補正がほぼ唯一の「成果」となる。
成果においても、審議の質の面でも、今国会の惨状は目を覆うばかりである。論ずべき重要課題は多いのに、傾聴に値する議論がほとんどない。
その典型が、北朝鮮による韓国領砲撃をめぐる論戦である。
衆参両院の集中審議で野党は、政府の初動の遅れをこぞって取り上げた。「非難」の表明は発生から約7時間後。迅速さを欠いた面は否めない。しかし、もっと語るべき問題がある。
北朝鮮は、民家にまで砲火を浴びせた。その国が、核も、日本を射程に収めるミサイルも保有している。
これは対岸の火事ではない。
日米韓がどう連携し、中国を引き寄せ、北朝鮮の挑発を押さえ込むか。万一南北が戦火を交える事態に至った場合、在韓邦人をどう救出するか。各国と情報を共有するため、どのような機密保全策をとるのか。朝鮮半島の平和構築の道のりをどう展望するのか。
これほどの事態に直面しても、大局を見据えた議論を深められない国会論戦には失望を禁じ得ない。
尖閣諸島沖の事件も同様だ。台頭する中国とどう向き合い、日本のかじをどう取るかよりも、ビデオの流出や公開に議論が集中したのは寂しい。
外交・安全保障のみならず、暮らしも財政も危機の中にある。足の引っ張り合いにふけっている余裕はない。
政府はたがを締め直し、自ら批判の種を振りまくのをやめて大局を論じる土俵をつき固めなければならない。
野党は政治を停滞させるのでなく、前進させるために批判してほしい。
問責決議も、旧態依然の抵抗戦術と見ざるを得ない。ビデオの問題を、主要閣僚の進退に直結させるのは短絡だろう。官房長官の立場で自衛隊を「暴力装置」と呼ぶのを適切とは言わないが、謝罪すれば済む話ではないか。
問題の軽重にかかわらず問責を連発し、辞任に応じなければ審議を拒み、政府を追いつめる。そんな繰り返しの国会では、国民が損害を被る。
論戦の質を高めるには工夫もいる。砲撃のような安全保障問題では、野党は機微に触れる情報に接することができず、実のある議論が難しい場合がある。秘密会を開き、情報を共有したうえで審議することもあっていい。
小泉純一郎元首相がよく引用した言葉に「大事争うべし、些事(さじ)構うべからず」がある。権力者の逃げ口上にも使われかねず、現にそう使われもした。しかし、昨今の国会論戦を見るにつけ思い出される警句ではある。
http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit1
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