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北朝鮮が韓国の延坪島に砲撃を行なったことに対し、メディアの多くは北朝鮮問題という独立の事象と捉えて報道しており、菅総理のコメントや政府の対応も同じようなスタンスになっていますが、そうした捉え方だけでは不十分ではないでしょうか。日本の外交の迷走がこの問題に少なからず影響を与えているのであり、その意味で日本政府の責任も重いことを忘れてはいけません。
■北朝鮮の思惑
私はかつて、1994年の朝鮮半島危機後に設立された朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)に出向し、北朝鮮問題に3年間従事しました。北朝鮮には6回行き、合計滞在期間3ヶ月弱。地方都市にも何度も行きました。ちなみに、米国のボズワース北朝鮮担当特別代表はKEDOの初代事務局長です。そのときの経験から、個人的な憶測としては、北朝鮮は今回の砲撃を更に拡大することはないと思います。
なぜ砲撃したかについては、専門家の方がコメントしているように、いろいろな可能性が考えられます。金正恩が金正日の後継として表舞台に出る一方で劣悪な経済状況が続いているので、国内の不満を抑え求心力を高めようとしたのかもしれません。6カ国協議を有利な形で再開する、または米朝協議を優先することを狙ったのかもしれません。
ただ、ボトムラインとして、北朝鮮は中国を怒らせることはできないはずです。食料やエネルギーなど、様々な面で中国の支援と後ろ盾を必要としているからです。中国は朝鮮半島が戦争状態に入ることは絶対に望みませんから、北朝鮮はこれ以上の軍事行為には踏み込まないのではないでしょうか。
もちろん、上層部の命令の不徹底などに起因する北朝鮮軍の末端レベルでの偶発的な暴走が起きる可能性は否定できません。自分の経験から、北朝鮮の指揮命令系統は意外としっかりしていないと感じるからです。
■日米同盟の揺らぎを起点に問題が連続して起きている
でも、韓国側の犠牲者の方には申し訳ないですが、日本の政策を考える立場から言えばそれよりも重要な論点が存在します。それは、日本の外交無策が今回の北朝鮮の行動の遠因となったのではないか、ということです。
今回の北朝鮮に限定せず、ここのところ日本の周りでは国際政治面で不安定な動きが多いと言わざるを得ません。
まず中国漁船が尖閣諸島沖で日本の領海を侵犯しました。次にロシアのメドベージェフ大統領が北方領土を訪問しました。そして、今度は北朝鮮です。保有するウラン濃縮施設を公表した翌日に、砲撃という暴挙にまで出ました。
このように日本の周りで連続して問題が起きる背景の一つとして、日米同盟という東アジアの安全保障の重要な枠組みが揺らいでいるという事実も、間違いなく影響していることを忘れてはいけないのではないでしょうか。
民主党政権(正確には鳩山前首相)が日米同盟を破壊したからこそ、周辺国が動きやすくなった面は大きいはずなのです。外交の世界はある意味でビジネス以上にシビアで、「池に落ちた犬は叩かないと」という側面があることを忘れてはいけません。
つまり、中国の尖閣、ロシアの北方領土、北朝鮮の砲撃という事象を個別の“点”として捉えてはいけないのです。むしろ、日米同盟の揺らぎを起点にそれらが連続して起きている、という“線”で捉えるのが正しいと思います。
その意味では、先日横浜で開催されたAPEC首脳会合も、その“線”の延長線上で捉えるべきです。メディアは中国、ロシアとの首脳会談のことばかりを報道していましたが、本質的にもっとも重要なのは、日米安保50周年という節目にオバマ大統領が来日したにもかかわらず、共同声明などのイベントが何も行なわれなかったことです。
それだけ日米同盟には大きな亀裂が入っているのです。もしかしたらそうした日米同盟のヒビを確認できたということも、今回の北朝鮮の行動の遠因になっているのかもしれません。
■民主党政権は外交無策を改めよ
そのように考えると、今回の北朝鮮の砲撃に対する民主党政権の対応に見える責任感と緊張感のなさには怒りすら感じます。
自分たちの外交無策が日米同盟を破壊したことも遠因の一つと認識していれば、もっと主体的かつ迅速に行動しているはずです。
しかし、そもそも日米同盟を早急に修復しようという意思や動きは政権からまったく感じられません。米国は砲撃の4時間後(現地時間の真夜中)に声明を出しているのに、官邸が声明を出したのは7時間後です。かつ、菅総理は「許し難い蛮行」と人ごとみたいなコメントしかしていません。それを言うなら、日米同盟を破壊した行為の方がよっぽど蛮行ではないでしょうか。
ついでに言えば、報道によると、民主党幹部は「北朝鮮砲撃は神風だ」と発言したようですが、安全保障の非常時に国内政局しか考えられない人が幹部を務める政党に政権担当能力があるとは言えません。
いずれにしても、日米同盟を破壊したツケはまだこれからもいろいろな形で出て来かねません。今月28日の沖縄県知事選もその“線”の延長です。仮にそれを乗り切れても、北朝鮮をはじめとする周辺国でどういう不測の事態がまた起きるか分かりません。
例えば、日本政府も北朝鮮に関する情報収集を頑張っているでしょうが、北朝鮮の内部情報とか国境周辺からの情報については、諜報活動をちゃんとやっている米国や韓国に頼らざるを得ません。でも、日米同盟にヒビが入っている状況で、米国や韓国がどこまでしっかりと日本に情報を提供するかとなると、不安に感じざるを得ません。その情報の遅れが致命傷になることもあるのです。
民主党政権が経済政策について無策&無知であることは既に分かっていましたが、この数ヶ月の“線”を辿り、かつ北朝鮮の砲撃への対応を見ていると、外交政策についても同様に無策&無知であることが明らかになりました。いったい日本はどうなっていくのでしょうか。
http://diamond.jp/articles/-/10209
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