38. 2010年11月25日 01:06:35: 2cIUw2Wa0Y
ビートたけしの小沢評 笑ってしまうのは、さんざん政治献金問題で叩かれて秘書が逮捕されたころに、地方回りをしていた時の笑顔。おいらと対談していた時の顔と全く同じなんだよ。いわゆる選挙用の顔だったわけで、おいらもまんまと騙されちゃったのかと思ったね。 あの頃、おいらも小沢さんには少しは期待していた。それで小沢一郎は原辰徳みたいだと言ったんだ。つまり、東海大相模から巨人まで、ずうっと陽の当たる場所を歩いてきて、第二の長嶋になれるかと思ったらくすぶってしまった。小沢さんも名監督になれるかどうか、いよいよ勝負の時だって。 でも、あれから十年経って考えてみると、小沢さんは原辰徳ではなくて、星野仙一になってしまった。北京オリンピックの時に、日本代表チームの監督に就任して「星野ジャパン」と騒がれた。「やってくれるんじゃないか」と誰もが期待した。本人も「金メダル以外はいらない」と大見得を切る。ところが、蓋を開けてみれば、金どころか、銀も銅も取れなかった。 小沢さんも、何か最初はやってくれそうな気がしていたんだけど、実際、民主党が政権取っても、日本は何もよくならない。星野監督が国民の期待を裏切ったのとそっくりだよ。 小沢一郎が政治家として「大物」でいられるかどうかは、そのときの社会状況によるんだ。今の日本や国際情勢を見ていると、もう小沢さんのような政治家が出る幕はない。せいぜいバブルの時代までで終わっている。 今の時代には、こういう典型的な「大物」はもはや必要ないんだ。良い意味でも悪い意味でも、この手の「大物」は過去の遺物になりつつある。 戦後から高度経済成長期までは、業界の利権をたくみに使って私腹を肥やしているような政治家がたくさんいた。そういう田中角栄に代表されるような政治家の流れを汲む最後の政治家が小沢さん。でも、その流れは今のような時代では、もう流れていく場所を失っている。 政治資金規正法違反がどうのこうのと批判されるけど、昔は、そんなの当たり前のようにやっていたんだよ。だいたいお金も集められないような政治家なんて、たいした政治家であるはずがないってね。その中でも図抜けた金を集めて子分に配れる政治家が派閥の領袖になった。 ところが、世の中が不景気になって、庶民の生活も苦しくなってきてしまうと、世間がそういう政治家を許さない。そういう意味で、「大物」政治家の存在理由がなくなってきていることに気づかないといけないんだ。 この人はしょせん選挙屋としか呼べない人でしょう。野球賭博のハンデ師とか、そういうタイプだね。現場で野球をやっているわけではないのに、「勝った」「負けた」だけで騒いでいる。ハンデ師のくせに偉そうな顔をしている連中と同じだ。ハンデ師に頼まなければ勝てない民主党も情けないよ。 ハンデ師と言って悪ければ、テキ屋の親分かな。外歩いているお客を呼び止めて、いかにモノを売りつけるかをよく考えている。つまり、そこらを歩いている兄ちゃんやお姉ちゃんに票を入れさせる方法をよく知っている。 縁日か何かに行くと、テキ屋がヘビや毒虫を屋台に並べておいて、客の足を止めて、「この軟膏は、ヘビの毒にも効く」とか言って客に売りつけている。それって、「暫定税率を止めます」とか「天下りを止めさせます」とか言って、大衆の関心を引くのと全く同じ手口だよ。そこへ集まっているサクラが小沢ガールズ。すっかり客は騙されて、役に立たないものを買わされてしまう。 それでもテキ屋に文句を言う客はいないもの。下手にクレームつけたら、危ない兄ちゃんが出てくるかもしれないから、泣き寝入りで「だまされた自分が悪い」で終わり。民主党の政策も同じようなことになるんじゃないか。 しかし、事業仕分けには笑ったな。事業仕分けを統括している枝野幸男を水戸黄門にして、仕分けグループのリーダーをやっていた寺田学や尾立源幸が助さん、格さん。それで蓮舫が女忍者を演じる由美かおるだって。だったら、蓮舫の入浴シーンを見せたら、もっとウケたはずだよ。要するに、事業仕分けって、大衆ウケを狙った見世物にしかすぎないんだ。 小沢さんという政治家はテキ屋としての手腕は見事だけど、何一つ国のことを考えてないんじゃないか。「普通の国を目指す」とか言っていたけれど、言ってることの内容は区会議員のレベルだよ。だけど面白いことに、日本では国会議員から区会議員までだんだんレベルが下になるに従って、言うことが大きくなる。 国会議員は「庶民の生活を守る」とかよく言うんだけど、区会議員は「世界平和において、日本は何をすればいいのでしょうか」とか言う。一番せこい議員が一番でかいことを言っていて、大きな社会や世界のことを考えなければいけない議員が、個人の生活とか弱者救済とか言っている。 本来は逆で、個人の生活のレベルは、区会議員が考えるべきことだよ。だから、今の国会議員が考えているレベルというのは、区会議員が考える程度のものでしかない。小沢さんも一緒だね。 対談のときだって、おいらが「憲法改正」だの、「選挙権を制限しろ」だのいろいろ挑発的なことを提案しても、ちっとも乗ってこない。終始、例のニコニコ顔をしているだけ。 ようするに、どぶ板選挙に勝つことしか考えていない。だから勝つためには、ばら撒きだろうが何だってやる。「子ども手当」なんて、路上生活者にふるまわれる炊き出しと何も変わらない。派遣村で、東京都が入所者に就労活動費として一人2万円渡したら、受け取った直後に近くの小売店で酒やたばこを買っていた。一人当たり1万3000円の子ども手当をもらった親もそれと同じ事になるよ。 おいらが育った足立区なんて、給食費すら払わないような親がたくさんいたからね。そんなろくでもない親に配ったら、自分の生活費のために使うのが、関の山だろう。 対談で「僕らが一番重点的に訴えているのは日本人のあり方、教育の問題です」と言っていたけれど、それで民主党政権が決めた政策が高校無償化だって。呆れ果てて笑うしかないね。 マニフェストを読むと、「家庭の経済状況にかかわらず、すべての意志ある高校生が安心して勉学に打ち込める社会をつくる」と目的が書いてあるけど、「意志ある」子どもなら、どんな環境だって奨学金取ったりして頑張れるに決まっている。 無償化したら、今まで以上に漢字も読めない、割り算も出来ないバカな高校生が増えるだけ。こんな政策をしていて、教育を真剣に考えているとはとてもじゃないけど思えない。 主役にはなれない人 おいらと話していたとき、「イギリスでは」とか「英国議会では」とか、そういう話もよく出ていたね。イギリス型の政治を理想としているのかもしれないけれど、あれだって言っていることは浅草の煮込み屋のレベルなんだよ。 安い焼酎、煮込みを売っていながら、「酒はスコッチに限る」「やはりイギリスのシチューは違うよ」と蘊蓄たれる。そのくせ、客には「今、いいモツが煮えているよ」と、モツ煮込みを平気で勧めることができる。 結局、小沢一郎というのは、票にさえなれば、誰にでも頭を下げるし、何でもやる。品物を売るためにはどんなことでもやる商売人と同じ感性の人でしかないんだ。 それにしても、小沢さんも実力政治家と言われるような男なんだろうから、政治資金で自分の不動産を買わないで、民主党に全部寄附したりしたら、どうなんだ。若手の研修所を作りましたとか、もっとパフォーマンスをうまくやればいいのにと思う。自分名義の不動産を増やしただけでは、「せこい」と思われるのがオチだよ。 天皇陛下と中国の習近平国家副主席が特例会見したときに、従来のルールをやぶって「天皇陛下の政治利用」だと批判されて、「ルールって誰が作ったの」「君は憲法を良く読んだのかね、ん?」とか言ってしまう。 おいらが演出するんだったら、「申し訳ないけれど、これは日本の国のためなんだ。私は誰から殴られてもいいと思って、お願いしてしまったんだ」と言わせる。それを「俺のどこが悪いんだ」というような態度を取るから、国民から気にいられないわけだよ。 やっぱり権力者には権力者なりの見得を上手に切ってほしい。歌舞伎にたとえれば、小沢さんという人は、歌舞伎の大御所の何代目団十郎みたいな田中角栄の下にいたワキでしかない。 しょせん、主役にはなれないんだね。よく脇役でうるさい役者というのがいるんだけど、それと一緒なんだ。 田中角栄みたいになりたいんだろうけど、たけし軍団で言うと、松尾伴内が間違って「殿」と言われるようになってしまったようなもんだよ。 おいらみたくなろうとしたら、おいらの真似をしても無理で、まったく別なところから出ないといけない。それと同じで、田中軍団にいて田中角栄の真似をしても、ミニ角栄にすらなれないんだ。小沢さんはそこを明らかに勘違いしているね。 しかし、小沢さんのどこが嫌いなのか考えみたら、それはあの人の人相だよ。昔「北野印度会社」というカレー屋やっていたときに、金を持ち逃げした従業員に顔がそっくりなんだ(笑)。やっぱり人間、顔が全てを語る。 |