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なぜ、ロシアの女子フィギュアは強いのか ?
宮原ら日本勢との差はどこに ?
(headlines.yahoo.co.jp:2018年2/24(土) 5:00より抜粋・転載)
THE PAGE:
なぜロシアの女子フィギュアは強いのか。宮原ら日本勢との差はどこに?
宮原知子(19、関大)が、初出場となる五輪の舞台で、感動的なノーミスの演技で、自己ベストを更新した。坂本花織(17、シスメックス)も、伸びやかな演技にまとめて6位に食い込んだ。
だが、金メダル、アリーナ・ザギトワ(15、OAR)と銀メダル、エフゲニア・メドベージェワ(18、OAR)の異次元のメダル争いとは、大きな実力差があった。
3位のケイトリン・オズモンド(22、カナダ)は、ミスをしたのに、宮原は、8.64点差をつけられて、メダルに届かなかった。
競技後、宮原は、「海外の選手に食い込めるように、頑張りたい」と課題を口にしたが、この差は、いったいどこにあるのか。
THE PAGEで評論をお願いしている元全日本2位の中庭健介氏は、まず宮原の敗因をこう分析した。
◆ジャンプの質は、プログラムコンポーネンツ
(演技構成点)にも影響を与えます !
「宮原さんは、ここ一番の演技を五輪の大舞台で見せました。怪我の影響で、つい数か月前まで試合に出られるか、どうかという状態だったことを考えると、今できる最高のパフォーマンスを演じました。素晴らしい努力と練習量の成果でしょう。
しかし、ノーミスの宮原さんとオズモンド選手に、差を生んだのは、GOE(出来栄え点)の部分です。高くてスピードと幅もある、ダイナミックなオズモンド選手のジャンプ、そして、宮原さんのコンパクトで美しい軸のジャンプとも、加点はつきましたが、今回は、オズモンド選手のそれに、軍配が上がった結果になりました。
ジャンプの質は、プログラムコンポーネンツ(演技構成点)にも影響を与えます。それらの小さな積み重ねが、8.64点になりました。
結果的に宮原さんは、素晴らしい演技をしましたが、逆転はかないませんでしたね」
オズモンドは、3回転ルッツをステップアウトするミスをして、GOEではマイナス1.40点を減点されながらも、GOEの合計は14.38点で、ノーミスだった宮原の12.36点を上回った。
演技構成点では、オズモンドは、5部門のすべてで9点を超えてきて、計75.65点と評価されたが、宮原が、9点を超えたのは、「動作/身のこなし」と「音楽の解釈」だけで、71.24点だった。ここでも差をつけられた。
怪我の影響もあり、今季は、この部分を磨く時間が足りず、五輪に入ってからは、回転不足の修正問題で、目いっぱいだったのかもしれない。
さらに宮原、坂本の日本勢とロシアとの差は大きい。金メダルのザギトワと、宮原の得点差は、SPで6.98点、FSでは10.21点もあった。
前出の中庭氏が続ける。
◆ジャンプのGOEにて、限界まで極めているのが、ロシアの2人だ !
「ジャンプのGOEにて、その部分を現在のルールで、限界まで極めているのが、ロシアの2人メドベージェワ、ザギトワなのです。
ジャッジは、どうしてもジャンプの入りや空中、着氷への工夫、流れや美しさなどが素晴らしいメドベージェワ、ザギトワのジャンプをGOE満点の3につければ、必然的に他のライバル選手らへのGOE評価は上がりにくくなります。ロシアの2人は、技術点、演技構成点のすべてにおいて、一段階上に抜け出たところにあります」
◆GOEと、演技構成点で、大きな差が生まれている !
フリーの7つのジャンプの技術基礎点で言えば、宮原が、47.54点で、メドベージェワの46.73点を上回っているのだが、GOEと、演技構成点で大きな差が生まれている。
ザギトワと、メドベージェワは、ジャンプのほとんどに手を上げる工夫を加え、GOE評価につなげている。
またジャンプの前後に、複雑なステップを入れ込み、これもまた加点と、演技構成点への評価を高めている。
これらの差は、どこから生まれているのか。そもそもなぜ、ロシアは、これほどまでに強いのか。
◆ロシアの国家的プロジェクトの成功が、
今回の平昌五輪へとつながっている !
前出の中庭氏は、「浅田真央選手は、世界のトップを極めました。日本人と欧米人との肉体的な違いは関係ないと思います。
それよりも、この差につながったのは、ジュニア世代からの練習環境、生活環境、コーチング、サポート組織の違いだと思います。
ロシアの練習拠点には、学校まであり、フィギュア選手の育成に必要なものすべてが、一箇所に揃い、練習に集中、専念できる環境が整っていると聞きます。
2010年頃から、ソチ五輪を成功させるため、海外に流出していた、コーチを呼び戻すなどしてきた、国家的プロジェクトの成功が、今回の平昌五輪へとつながっていると思います」という。
ロシアには1970年に創立された「サンボ70」というナショナルトレーニングセンターがあり、その中に、2003年に設立された専用スケートリングを備えた、フィギュア専門施設がある。ザギトワ、メドベージェワも、この施設から誕生した。
施設内には、フィジカルのトレーニング施設は、当然のこと、ダンスやバレエのスタジオや、医務設備や陸上練習用の場所まであるという。
◆キーマンは、“鬼コーチ”としての、エテリ・トゥトベリーゼ女史だ !
そして、キーマンが、“鬼コーチ”としての、エピソードが漏れ伝わってくるエテリ・トゥトベリーゼ女史(43)だ。
ソチ五輪で、キャンドルスピンが有名になり、団体金メダルを獲得した、ユリア・リプニツカヤ、メドベージェワ、ザギトワらは、すべて彼女の門下生である。
今回、ペアで4位に入ったロシア(OAR)のエフゲニア・タラソワとウラジミール・モロゾフが福岡で直前合宿を組んだため、中庭氏は、その練習風景を見学している。1つのペア組に様々な分野のスペシャリストがついていて、そのスタッフ人数の多さにびっくりしたと言う。
◆ロシアは、日本よりも多い競技人口があり、
選りすぐりの選手、学校もある !
「ロシアのトゥトベリーゼコーチが、具体的にどんな指導を行っているかは、ベールに包まれています。私たちも知りたいですが…なかなかわかりません。
ただ今回ペアの練習を見て、わかったのは、あらゆる分野の専門家を集めてチームを組み、選手をサポートするという組織力です。
ロシアでは、ソチ五輪の成功で、フィギュアをする子供達が増え、多くの選手が8歳から3回転を跳ぶとも言われています。
日本よりも多い競技人口があり、選りすぐりの選手が、学校もある、リンクもある、ダンスやバレエを学ぶ場所も集中してあるという環境で育成されるのですから、ほとんどが、クラブ単位の運営努力に任されている日本とは違います。
加えて国内競争の激しさがあります。
ザギトワが7つのジャンプを後半に集めるプログラムにしたのは、そうしなければメドベージェワに勝てないことがわかっていたからでしょう。
きっと怪我がなければメドベージェワも3回転ループを後ろにつける難解な連続ジャンプに挑んだはずです」
ザギトワは15歳、メドベージェワは18歳。当然、4年後の北京五輪も狙える年齢だが、その下には、北京五輪に照準を定める、強力なジュニア世代が控えている。
昨年12月に名古屋で行われたジュニアグランプリファイナルでは、優勝がアレクサンドラ・トゥルソワ(13、ロシア)、2位がアリョーナ・コストルナヤ(14、ロシア)、3位がアナスタシア・タラカノワ(13、ロシア)とロシア勢に表彰台を独占された。
トゥルソワは、回転不足と判定されたが、冒頭で4回転サルコーに挑戦している。トリプルアクセルを成功させた日本の紀平梨花(15、関大中)が、4位に食い込んだが、5位がダリア・パネンコワ(15、ロシア)、6位がソフィア・サモドゥロワ(15、ロシア)と上位をロシア勢で独占されたのである。
トゥルソワ、コストルナヤは、いずれも200点超え。
トゥルソワは、4回転だけでなく、3回転ルッツ+3回転ループの連続ジャンプまで決める。
しかも、6位のサモドゥロワを除き全員が、トゥトベリーゼコーチ傘下の選手なのだ。
◆ロシアに対抗できる1番の国は、日本ですが、
ロシアの“王国”は続くでしょう !
「日本の女子も様々な努力や試みにより、ジュニア世代には、有望選手が増えています。ロシアに対抗できる1番の国は、日本ですが、ロシアの“王国”は続くでしょう。
日本はさらに国内競争のレベルアップを図る必要があります」というのが、中庭氏の見立て。打倒・ロシアには、オール日本のプロジェクトが必要かもしれない。
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