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「毎日、記者の目:検察審査会の強制起訴制度、強大な権限に見合う仕組みに」
http://www.asyura2.com/10/nametoroku6/msg/800.html
投稿者 検察審査会を審査する会 日時 2010 年 11 月 01 日 11:28:21: K9T65PPaYkgBE
 

http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20101019k0000m070137000c.html
記者の目:検察審査会の強制起訴制度=和田武士
 ◇強大な権限に見合う仕組みに
 一般市民11人で構成される検察審査会は09年5月に権限強化され、検察が不起訴とした容疑者を強制的に起訴できるようになった。その現状と課題を探る朝刊連載「検察審査会」(9月20日から5回)を担当し、審査員経験者十数人を取材した。やりがいや司法制度への思いを語る姿に市民参加の意義が垣間見えた。同時に、制度の将来に不安も感じた。「感情論が先行しているのでは」との懸念もあり、強大な権限に見合う仕組みになりきっていないと思う。

 連載で紹介したが、審査員経験者の斎藤猛さん(48)=山口県宇部市=は冤罪(えんざい)被害者だ。02年、勤務先の焼き肉店の売上金を着服したとして逮捕、起訴され、1審は実刑判決。控訴審中に別人物の関与をうかがわせる証拠が見つかり、逆転無罪が確定した。

 ◇起訴=犯人視 冤罪被害の恐れ
 私が会った審査員経験者の多くが「公開された裁判で有罪・無罪を判断すべきだ」との考え方だったが、斎藤さんは「人ごとだから言えること」と批判した。起訴されれば99.9%が有罪になる現状や、それを背景にした報道が多い実態も踏まえ、「社会は起訴された人を犯人だと見る。検察審査会の判断がいつも正しいとは言えず、冤罪被害を生む危険がある」と語った。

 刑事裁判の原則は「無罪推定」だが、現実には起訴されれば、最終的に冤罪が晴れても多大な不利益を被る。「やっと胸のつかえが取れた」。郵便不正事件で無罪が確定した厚生労働省の村木厚子元局長(54)が、約1年3カ月ぶりに職場復帰した際の言葉には裁判中の苦労がにじむ。

 「あなた方の議決で強制起訴された人が無罪になったらどう思うか」。審査員経験者たちに尋ねた。40代男性は「一般人の場合、起訴されただけで人生が終わってしまうようなところはある」と漏らしたが、別の年配男性は「ある程度仕方ない」と話した。答えの多くは、法廷に立つ「被告」の境遇について、どこか人ごとという印象を受けた。

 検察の不起訴に納得できず、公開の裁判での真相解明を求めて検察審査会を頼る被害者・遺族の心情は理解できる。兵庫県明石市の歩道橋事故(01年)やJR福知山線脱線事故(05年)で出された起訴議決は、そんな思いをくみ取ったものともいえるだろう。

 だが、民主党の小沢一郎元代表を政治資金規正法違反で起訴すべきだとした東京第5検察審査会の議決は、その当否は別にして、理由に疑問を感じた。議決要旨(10月4日公表)で「国民は裁判所によって無罪なのか有罪なのかを判断してもらう権利がある」と明記したが、ある法曹関係者は「当事者ではない事件にまでそんな権利があるという解釈はあり得ない」と指摘する。「国民の責任で黒白をつけようとする制度である」とも書いたが、「国民の責任」との表現に違和感を持つ人も少なくないと思う。

 ◇助言者発言権や情報公開強化を
 連載中、大阪地検特捜部の主任検事による証拠改ざん事件が発覚した。検察の信頼は失墜し、その在り方が問われる中、検察審査会は存在感をより増していくだろう。だからこそ、健全に機能させるためには改善すべき点が多い。

 一つは審査の密室性だ。審査員の自由な議論を確保するための守秘義務があるとはいえ、開示される情報があまりに少ない。不当な圧力などから審査員を守るために匿名はやむを得ない。しかし、少数意見や反対意見を含めて11人それぞれの意見、議論に費やした時間などは公表しても差し支えはないはずだ。

 審査に加わり法律的な助言をする弁護士(審査補助員)の位置付けも再考の余地があろう。裁判員制度はプロの裁判官も評議に加わるが、検察審査会はあくまで市民だけで判断する。このため、審査補助員は法律で「自主的な判断を妨げるような言動はしてはならない」とされている。取材では、審査補助員が誘導にならないよう意識しすぎて萎縮(いしゅく)している印象を受けた。政治家が関与する事件や被害者の多い事故では、感情的な議論になるとの指摘もあり、法律の専門家として「助言」にとどまらない一定の発言権を確保することも必要ではないか。現在は「1人」と規定されているが、複数にするのも選択肢の一つだろう。

 負担が大きいとされる検察官役(指定弁護士)をどうバックアップするかも課題だ。

 検察審査会は裁判員制度のスタートと同時に権限強化されたが、裁判員の陰に隠れ、議論不足だったとも言われる。これまでの起訴議決4件を詳しく検証し、課題をあぶり出して速やかに解決することが不可欠だ。市民で構成される検察審査会が、市民から共感を得られない機関になってはならない。(東京社会部)

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毎日新聞 2010年10月19日 0時09分

 

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