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米国・大統領選の混戦・憂鬱 !
過激極右&革命的左派が圧勝 !
−反エスタブリッシュ旋風渦巻く !
自民党政治の正体は ?
(www.huffingtonpost.jp: 2016年02月14日 より抜粋・転載)
畑恵・元参議院議員の主張:
米国大統領選挙の候補者指名争い第2戦、序盤のヤマ場となる予備選が、2月9日ニューハンプシャー州で行われました。
☆不動産王にして「暴言王」のドナルド・トランプ氏、
"政治革命"を呼びかけるバーニー・サンダース氏が圧勝 !
結果は、共和党が不動産王にして「暴言王」のドナルド・トランプ氏、民主党は「民主社会主義者」を自称し"政治革命"を呼びかけるバーニー・サンダース上院議員が、ともに2位の候補に約20ポイントもの大差をつけ圧勝。
共和党の主流派候補や、民主党の本命とされるヒラリー・クリントン前国務長官を大きく引き離しました。
☆ポピュリズムと反エスタブリッシュメント が吹き起こす旋風 !
前回のブログで「混迷の時代こそ"中庸"なる政治を」とタイトルを打ち、「反動的で復古的な保守にも、現実を見失った理想主義にも、人類の明日はない」と明言した者としては、眩暈がしそうな結果でありますが、ポピュリズムと反エスタブリッシュメントが吹き起こす旋風が、日毎に遠心力を増し、政治を"中庸から極端へ"と向かわせていることは厳然たる事実のようです。
☆35年に及ぶ政治経験を持つ、"社会主義者"議員、サンダース氏 !
もちろん、35年に及ぶ政治経験を持ち、市長から下院議員、そして、上院初の"社会主義者"議員となったサンダース氏を、トランプ氏と同列に扱っている訳ではありません。
☆トランプ氏は、人種差別主義者であり、女性蔑視発言の常習者だ !
なにしろ、トランプ氏は、メキシコからの数百万人の移民を「麻薬の売人やレイプ犯」と呼び、イスラム教徒の移民を即時・無期限に禁止せよと、発言して憚らない、人種差別主義者であり、「軍隊内での性的暴行は予想通り」と言い放つ、女性蔑視発言の常習者です。
ただそんな両者に今、世論から吹く風には、明らかに同質のものがあります。
◆「反エスタブリッシュメント」という風 !
第1の風は、「反エスタブリッシュメント」という風です。
言うまでもありませんが、エスタブリッシュメントとは、社会的に確立した制度や体制、またはそれを代表する支配階級や組織を意味します。
つまり、既成政党の主流派はエスタブリッシュメントであり、国務長官を務めたヒラリー候補はまさにその真骨頂と言えます。
経済格差の拡大やテロの恐怖など、米国民が抱えている不満や不安は増大する一方です。にもかかわらず、それを解決する権力と責任を担っているはずの主流派議員たちは、明確な対応を一向に示してくれない。
ならばいっそのこと、政治経験のない民間人やしがらみのない非主流派議員、つまり「アウトサイダー」に票を託し一気に世の中を変革してもらおう。
というのが、現在米国に吹き荒れる「反エスタブリッシュメントの風」の正体でしょう。
殊に「経済格差」を背景に噴出するこの風は今後も猛威を奮い、クリントン候補を悩まし続けると私は思います。
フランスの経済学者トマ・ピケティがその著書『21世紀の資本』で明らかにした通り、「上位1%の富裕層に米国全体の3割の富が集中している」という事実は、やはり米国を不安定化させる元凶の一つとなっています。
格差社会に対する不満と憤りという米国の土壌なくして、同著が発売から半年で50万部を売り上げ、全米ベストセラーリスト1位となることはなかったでしょう。
何しろこの本、日本語版で728ページととんでもなく分厚く、価格も税別で5500円とかなり高額。
ブームに乗ってつい購入してしまうという訳にはいかない一冊です。
(ちなみに、日本でも13万部以上売れているそうです。)
話が逸れましたが、若年層から高い支持を得ているとされるサンダース候補は、ニューハンプシャーでは中高年にまで支持層を拡大しました。
女性の支持もクリントン候補を上回り、特に若い女性の「ヒラリー離れ」が顕著です。
格差問題に批判的な有権者が多い35歳以下のいわゆる「ミレニアル世代」は、85%近くがサンダース候補に投票し、クリントン候補が過半数を得たのは65歳以上の高齢者と年収2000万ドル(約2400万円)以上の富裕層のみ。
政治権力の中枢で実績のあるクリントン候補より、財界などの利権から遠く「正直で信用できそう」なサンダース候補を、ニューハンプシャーの有権者は支持するという結果になりました。
◆「ポピュリズム(大衆迎合主義)」という風 !
第2の風は、「ポピュリズム(大衆迎合主義)」という風です。
下劣ながら実はそれが庶民の本音とも言える、移民排斥やアジアへの攻撃的発言を繰り返し、とにかく明るくエネルギッシュに「偉大な米国の復活」を唱えてくれるトランプ氏。
公立大学無償化や国民皆保険など北欧型の福祉国家を掲げ、公共事業への1兆ドルの拠出、最低賃金の1時間15ドルへの引き上げ(現在7.25ドル)など、夢のような「政治革命」を高らかに謳ってくれるサンダース候補。
いずれも現在のところ、有権者の熱狂的な支持を獲得しています。
☆相手国を礼節も戦略も無く刺激し続ければ、
戦争、バラマキを続ければ、財政破綻 !
もちろん大衆に迎合していても、大衆の判断自体が、正しければ何も問題はないわけですが、相手国を礼節も戦略も無く刺激し続ければ、戦争になりますし、収支のバランスや見通しもないまま、バラマキを続ければ、財政破綻に陥ります。
実際、ポピュリズムは、過去に、フランス革命後の惨劇や第一次大戦後のナチスの台頭など、数多くの悲劇を引き起こしました。
社会が混迷し、閉塞感や不安感が高まる中、快刀乱麻を断つ如く、難問を解決すると語る候補者が、登場すれば、耳目を集めるのは必定でしょう。
しかし、短期利益を優先すれば必ず中長期的にそのツケは回ってきますし、急激な変化はその振り幅が大きければ大きいほど、より高いリスクを伴います。
論理的根拠や具体的なデータに裏打ちされない、夢か魔法の如き解決策の裏には、必ず大きな落とし穴がある。
そのことを有権者が、認識していなければ、歴史は、またもや悲劇を繰り返すことになるでしょう。
☆民主主義を正しく機能させるためには、有権者の正しい判断を可能にする
環境整備が必須だ !
民主主義を正しく機能させるためには、有権者の正しい判断を可能にする環境整備が必須です。
一つは、有権者が適時適切に正確で多様な情報を低コストで得られるよう、メディアやシンクタンクなどが政府や政治家(あるいは候補者)と有権者の間の媒介者となって、政治情報を十分に流通させること。
☆有権者には、必要十分な情報を自ら収集・
分析し、正しい判断が行える能力が、不可欠だ !
もう一つは、有権者が必要十分な情報を自ら収集・分析し、正しい判断がを行える能力を身に付けられるよう、幼い頃から教育すること。つまり、「主権者教育」です。
今回の米国大統領選を他山の石として、日本が学ぶべきことは実に多いのではないでしょうか。
*補足説明:エスタブリッシュメント
(kotobank.jpより抜粋・転載)
「既存体制」と訳されることもある。イギリスでいわれはじめたもので,社会改革をはかろうとする者から攻撃される既成の社会秩序の総体をいうが,通常は国家,政府機関,支配階級,特権階級などをさす。
*補足説明:ポピュリズム
(知恵蔵2015の解説: kotobank.jp/wordより抜粋・転載)
ポピュリズム:
政治に関して理性的に判断する知的な市民よりも、情緒や感情によって態度を決める大衆を重視し、その支持を求める手法あるいはそうした大衆の基盤に立つ運動をポピュリズムと呼ぶ。
ポピュリズムは諸刃の剣である。庶民の素朴な常識によってエリートの腐敗や特権を是正するという方向に向かうとき、ポピュリズムは改革のエネルギーとなることもある。
しかし、大衆の欲求不満や不安をあおってリーダーへの支持の源泉とするという手法が乱用されれば、民主政治は衆愚政治に堕し、庶民のエネルギーは自由の破壊、集団的熱狂に向かいうる。
例えば、共産主義への恐怖を背景にした1950年代前半の米国におけるマッカーシズムなどがその代表例である。民主政治は常にポピュリズムに堕する危険性を持つ。
そのような場合、問題を単純化し、思考や議論を回避することがどのような害悪をもたらすか、国民に語りかけ、考えさせるのがリーダーの役割である。
(山口二郎 北海道大学教授 / 2007年)
出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵2015」
一般的に、「エリート」を「大衆」と対立する集団と位置づけ、大衆の権利こそ尊重されるべきだとする政治思想をいう。ラテン語のポプルス(populus)=「民」が語源。
こうした考えの政治家はポピュリストと呼ばれる。
複数の集団による利害調整は排除し、社会の少数派の意見は尊重しない傾向が強い。「大衆迎合」「大衆扇動」の意味でも使われる。
ただ、有権者の関心に応じて主張を変えたり、危機感をあおったりする手法は、ポピュリストとみなされない政治家も用いる。
(2015-12-23 朝日新聞 朝刊 2外報)
*畑恵:
学校法人作新学院理事長、学術博士[科学技術政策](Ph.D. in Science Policy)、“Galerie du Temps”代表、元参議院議員、元NHKキャスター
〔参考資料〕
自民党政治の正体は ?
(1)アメリカから自民党へ密かに長年、資金提供され、アメリカの支援をバックに一党支配体制が構築されてきた。
◆A級戦犯たちが米国の支援で保守政党を結成 !
冷戦の始まりとともに、アメリカは、日本の戦時体制を維持し、戦時中のエリートに権力を握らせようと決めていた。
そのため、戦争犯罪人を監獄から出してやった。1948年12月24日、釈放された、A級戦犯容疑者は、岸信介、児玉誉士夫、笹川良一、正力松太郎など70名以上存在し、戦後の政界・経済界・政界の黒幕など多方面の有力者になった。
日本自由党(自民党の前身)の資金は、戦時中に右翼の児玉誉士夫が海軍の「児玉機関」の長として中国で物資調達にあたった時の横領資産(時価4千億円)の一部をもらった。
◆アメリカの資金提供等で長期政権を実現 !
アメリカの政策に従順な日本政府の体質は、敗戦直後から着実に形成されていた。そして、CIAが1950~70年代に日本の保守政権の安定化を図り、自民党や「左派穏健勢力」に繰り返し資金(違法資金)提供していたことが、米国務省の機密文書公開で明らかにされている。
(2)社会統制手段(内務官僚)の復活
戦前の社会統制の本拠・内務省の出身者の保守系政党への“降下”は、戦後まもなく始まった。1949年の選挙では、約30人の高級官僚が自由党議員に加わり、すぐに国会議員の四分の一を占めるようになった。
1960年には、54人の国会議員が内務省出身者だった。
◆戦前の思想警察の戦後のキャリアは ?
戦後、多数の特高官が、連合国軍総司令部の監視の目をくぐって行なわれた配置換えによって、公職追放を免れていた。特高警察の直接指導官である内務省警保局長14名のうち7人が戦後国会議員になっている。
思想警察官僚の多くは、県知事や地方公安委員会の幹部(警察を監督する)になったり、その他の地方自治体の幹部になった。
(3)巨額の企業団体献金を長期的に最大に収受して政治を歪めてきたのは自民党・自民党系議員(国会議員・地方議員・首長)である。
(4)政権交代できないよう、官房機密費・外交機密費などをフル活用(塩川発言・野中発言・平野発言等)して、マスコミ・評論家・社会党などを裏から支配し、自民党一党支配を永続させた。
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