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【要約】小沢一郎氏の「日本国憲法改正試案」(文藝春秋1999年9月特別号所収)と、自民党の「憲法改正草案」(2012年4月)とを逐条比較しました。これらの憲法改正案にはかなりの共通点があります。
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小沢一郎氏は、2013年3月5日に「小沢一郎政治塾」で講演し、憲法の改正要件を定めた96条改正を先行することについて否定的な考えを示しました[1]。
さらに、小沢氏は「96条改正で憲法改正要件が緩和されれば、政権が代わるたびに憲法を変えることになる。」とも述べたそうです。
この発言からは、小沢氏は96条以外の具体的な憲法改正案を示さずに96条の「憲法改正手続き」だけの憲法改正を進めることに反対し、また憲法改正手続きについては、現行通りに硬性憲法であることを維持する考えであることが伺えます。そして、小沢氏は「憲法改正に反対と言っているわけではない」とも述べ、憲法改正案が具体的に示され、その内容によっては小沢氏は憲法改正に賛成することを示唆しています。
さて、昨年4月に自民党の憲法改正草案が示されていますが[2]、この具体的な自民党の憲法改正草案について、小沢氏は賛成なのでしょうか? それとも反対なのでしょうか?
残念ながら小沢氏はこれまでに、現在の自民党の憲法改正草案に対して、賛成か反対か、具体的には述べていません。そこで、小沢氏の過去の憲法改正に関する考え方をたどってみましょう。
小沢氏は、1999年に文芸春秋誌上で「日本国憲法改正試案」を発表しています[3]。
現在の自民党の憲法改正草案は、小沢氏の「日本国憲法改正試案」に、かなり近いものです。
筆者が重要とみなす「天皇」「安全保障」「国民の権利及び義務」「緊急事態」「憲法改正」の各項目について、自民党の憲法改正草案そのものが小沢氏の「日本国憲法改正試案」を参考にして作成されたのではないかとさえ感じます。
特に安全保障に関しては、自民党の憲法改正草案は、小沢氏のこれまでの安全保障に関する主張を妨げないような表現になっています[4]。
また、小沢氏は、硬性憲法を軟性憲法にすることは必ずしも反対ではなく、「占領下に制定された憲法は無効」や、「憲法改正手続きは一旦日本国憲法の無効を国会で宣言し、その上で新しい憲法を作りなおして、可否を問う」など、かなり特異な考え方を持っていたことがわかります。
小沢氏がこれらの過去の憲法改正についての考えを現在でも維持しているのかが注目されます。
「新自由主義クラブ」は、自民党の「憲法改正草案」と、小沢一郎氏の「日本国憲法改正試案」の双方に反対です。
[1]「96条改正なら、政権ごとに憲法変わる…小沢氏], 読売新聞 2013年3月5日(火)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130305-OYT1T01147.htm
[2]「憲法改正草案」を発表, 自民党, 2012年4月
http://www.jimin.jp/activity/colum/116667.html
[3]「日本国憲法改正試案」小沢一郎(自由党党首), 文藝春秋, 1999年9月特別号
http://www.ozawa-ichiro.jp/policy/04.htm
[4]小沢一郎勉強会の第3回目「非常事態における危機管理と安全保障〜憲法9条をめぐって」(2012年3月13日),「私は、十分、国連憲章41条、42条での参加も、私は憲法9条にも違反しないというように思っております。」
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/5488
http://asumaken.blog41.fc2.com/blog-entry-5414.html
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(付記)自民党の「憲法改正草案」[2]と小沢一郎氏の「日本国憲法改正試案」[3]の逐条比較
●第1章 天皇
【自民案】天皇は元首であり、日本国及び日本国民統合の象徴
【小沢説】天皇が国家元首であることをきちんと条文に記すべきであると主張する人もいるが、今の文章のままでも天皇は国家元首と位置づけられている。
●第2章 安全保障
【自民案】現行憲法の9条の第一項に加えて、次のことを付け加える
・現行憲法9条の第一項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。
・首相を最高指揮官とする国防軍を保持する。
・国防軍は自衛のための任務の他に、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。(※「国際的に協調して行われる活動」は、国連決議によるものに限らない)
・国防軍に審判所(軍事裁判所)を置く。
【小沢案】現行憲法の9条の一、二項に加えて、次の第三項と、国際平和のための兵力の提供の条項を付け加える。
三 「前二項の規定は、第三国の武力攻撃に対する日本国の自衛権の行使とそのための戦力の保持を妨げるものではない。」
・日本国民は、平和に対する脅威、破壊及び侵略行為から、国際の平和と安全の維持、回復のため国際社会の平和活動に率先して参加し、兵力の提供をふくむあらゆる手段を通じ、世界平和のため積極的に貢献しなければならない。
●第3章 国民の権利及び義務
[公共の福祉]現行憲法第12条
【自民案】この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない
【小沢案】この憲法の保障する基本的人権はすべて公共の福祉及び公共の秩序に遵う。公共の福祉及び秩序に関する事項については法律でこれを定める。
[幸福追求権]現行憲法第13条
【自民案】全て国民は、人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない
【小沢案】この憲法が保障する生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならない。
●第9章 緊急事態
【自民案】外部からの武力攻撃、地震等による大規模な自然災害などの法律で定める緊急事態において、内閣総理大臣が緊急事態を宣言し、これに伴う措置を行えることを規定。
・内閣総理大臣は、武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。
・緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。
・緊急事態の宣言が発せられたときは、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる
・内閣総理大臣は、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
【小沢案】内閣は、国又は国民生活に重大な影響を及ぼす恐れのある緊急事態発生した場合は、緊急事態の宣言を発令する。緊急事態に関する事項は法律で定める。
●第10章 憲法改正
【自民案】憲法改正の発議要件を衆参それぞれの過半数に緩和。
【小沢案】国民投票を国会よりも先に行う。一旦日本国憲法の無効を国会で宣言し、その上で新しい憲法を作りなおして、可否を問う。
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