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脱原発とTPP
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2012年12月8日 街の弁護士日記
20××年、日本政府は、10年以内に全ての原発を廃炉にするとの方針を閣議決定し、同年、原発廃止法が成立した。
という近未来のシチュエーションを仮定してみる。
ここからの筋書きはそのとき日本がTPPに加盟しているかどうかで、大きく異なる。
【TPPに加盟していなかった場合】
この立法に猛反発した盗電、癇電など原発利権に群がっていた各電力会社は、一斉に、原発廃止によって、生じた損害の賠償を求めて、提訴した。
政府の政策転換と立法によって、将来得られるべき莫大な利益が失われ、廃炉に要する膨大な無用のコストが生じたことを理由とする国家賠償請求だ。
合計で数百兆円に及ぶ損害賠償請求に対する各地の裁判所の判断は分かれた。
盗電は、史上最高額である147兆円の損害賠償について勝訴判決を得た。
他方、厨電は、敗訴し、むざむざ数億円に及ぶ訴状添付印紙と、同じく数億円と見られる弁護士費用を失うことになった。
厨電判決は、原発事故が発生した場合、国民とりわけ原発立地自治体周辺の住民の将来にわたる健康被害は、金銭では測りがたい深刻かつ、回復不可能なものであること、事故による共同体の破壊、原発事故の事後処理には少なくとも数百年を要すること等を考慮すれば、原発廃止の政策には高度の公共性があり、憲法29条2項の「公共の福祉」により許容される財産権の制限に該当するとした。
厨電は、原発を浜岡原発しか保有しておらず、浜岡原発については、米軍横須賀基地や新幹線、東名高速道路に近すぎるため、アメリカ政府筋からも、密かに停止を求められていた事情もあって、控訴を断念した。
他方、厨電と同じく敗訴した癇電は、強硬であり、即日控訴を申し立てた。盗電に敗訴した国も即日控訴した。
東京、大阪、福岡等、各地の高等裁判所の判決も結果が分かれた。
争点は、原発廃止政策が、憲法29条2項による、公共の福祉による財産権の制限として、適法なのか否か、さらに適法だとしても、収用に準じて憲法29条3項により、損失補償を電力会社が求めることができるか否かであった。
最高裁は、20××年○月○○日、電力各社の請求を棄却する判決を言い渡した。
最高裁は、原発廃止は、高度に政治的な選択であり、広汎な立法裁量に属するものであって、裁量権の逸脱が一見して明白でない限り、公共の福祉による財産権の制限として許容されるとした。他方、損失補償については、原発廃止が直ちに29条3項による収用とは認められないとした上、政治的な選択に関しては、立法府の判断に委ねられる部分が極めて大きいことを指摘して、電力会社の請求を棄却した。
政治に介入するのを極端に嫌う最高裁の伝統にしたがった最高裁正統派の判決であったが、最高裁長官が、密かにアメリカ大使館に呼ばれた事実が伝わる等、どのような判決がなされるのか、予断を許さなかった。
かろうじて米国の圧力を排し、従来なにかと批判されてきた政治的中立性論(司法消極主義)を楯に、財産権至上主義に歯止めをかけることで、司法の独立を保つという皮肉な結果となった。
【TPPに加盟していた場合】
この立法は、電力各社に対して巨額の投資をしていた米国系マネーの憤激を買った。米国投資家は、こぞって日本政府に直談判を行ったが、ときの総理大沢二郎は、頑としてこれをはねつけた。
米国投資家は、直ちに、TPP協定のISD条項(投資家対国家紛争解決条項)に基づき、日本政府を相手取って、国際投資紛争仲裁センター(ICSID)に仲裁を申し立てた。
ICSIDは、世界銀行傘下の仲裁機関で、ワシントンに本部を置いている。
世界銀行に対する出資は、アメリカが群を抜いており、世界銀行の歴代総裁は、アメリカが独占している。
仲裁人は3人で構成される。申立人である米国投資家が指定する仲裁人、申し立てられた日本政府が指定する仲裁人、そして、両当事者が合意した首席仲裁人で構成される。
両者が首席仲裁人の指定で一致をみないときは、ICSID総裁が首席仲裁人を指名する。
このケースでも、主席仲裁人について、一致を見なかったため、ICSID総裁が首席仲裁人を指名することになった。
ICSID手続に熟練した巨大ローファームは、米国投資家の依頼を受け、密かに米国の原子力会社に働きかけ、総裁とコネクトし、日本政府推薦の仲裁人も含めて仲裁人らに巨額の原発マネーが流れたとする風聞があるが、真相は定かではない。
NAFTAのISD条項によって、米国投資家から提訴されたカナダ政府、メキシコ政府は、これまでに仲裁判断が示された事例では、ことごとく敗訴している。世界銀行に対して、米国が大きな発言権を持っていることが仲裁判断を左右していると考える識者も少なくない。
原発を廃止したのは、ドイツなど、限られた国家であり、アメリカは、地球温暖化を防ぐ20カ年計画に基づいて原発輸出を促進している。世界の市場関係者は、日本政府の原発廃止を無謀なものとして厳しく非難している。
審理の内容は、一切が非公開とされているため、不明であるが、近々に結論が示されるとの観測が流れている。
仲裁人団が、原発廃止を外国人投資家に対する間接収用に該当すると判断するのは、確実であり、仮に公共目的による間接収用であっても、迅速で適切な補償をするというルールに違反したとみなされることは必至である。公共目的すらないと判断される可能性もあり、この点に関する仲裁人団の判断が注目を集めている。
なお、迅速な補償がなされなかったことによる遅延損害金は年5%であるが、請求額が巨額であり、すでに5年が経過していることから、遅延損害金も莫大な計算になる。
これまでの実績から見ても、日本政府の敗訴は確実であり、焦点は、仲裁人団が決定する損害額が過去最高を大きく上回る1000億ドルに及ぶのではないかという点に絞られている。
仲裁人団による損害額の判断は、日本国の存亡を左右するものといえよう。
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国家は、自国における法規制について、自国の裁判所が判断する権能を最低限の権能として保持している。
たとえ、条約であろうと、国内に適用される限りにおいて、その解釈は各国の司法に委ねられる。
司法は、国家が存立するための、国家主権の不可欠の構成部分である。
ISD条項は、この司法権を深く侵害する。
司法権を奪われた国家は、国家たりえないと言っても過言ではない。
TPPへの加盟は、国内のあらゆる規制が、アメリカ人投資家本位に、アメリカのの支配下にある裁判所で裁かれる結果をもたらすと考えるべきだろう。
TPPは、日本が主権国家として成立する基盤を深く侵害する。
そのことに、政治家もメディアもどれほど気づいているのか、知りながらこれを推進しようとしているのだとすれば、この国の政治家とメディアが完全にアメリカに支配された売国奴だということになる。
TPPはそのことを問うている。
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