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岸田首相に鋭く迫る暮らし・命守る論戦
日本共産党:山添議員が追及 参院予算委
安倍晋三元首相の「国葬」問題、自民党と統一協会との根深い癒着、物価高と最低賃金の引き上げ、健康保険証の廃止とマイナンバーカードへの一体化、敵基地攻撃能力の保有…。日本共産党の山添拓議員は20日の参院予算委員会で国政の焦点を取り上げ、岸田文雄首相に鋭く迫りました。
宗教法人の解散命令請求が認められる根拠を刑事罰に限定するとした答弁を、一夜にして修正し、「民法も該当する」とした岸田首相。山添氏は、統一協会の民法上の不法行為責任を認める判決はすでにたくさんあるとして、「ただちに解散命令を請求すべきだ」と迫りました。
岸田首相は、解散命令請求にあたっては、宗教法人の不法行為に組織性、継続性、悪質性があるかなど具体的な事実を積み上げる必要があるとしています。山添氏は、岸田首相が「質問権」行使の根拠として2016年と17年の統一協会の組織的な不法行為責任を認めた判決を自らあげていることを示し、「組織性はすでにはっきりしている」と強調。
全国霊感商法対策弁護士連絡会から文化庁に対して、統一協会の調査や解散請求を求める申し入れがくり返し行われてきたこと(表)をあげ、「これだけ続いている。継続性も明らかだ」と訴えました。
さらに山添氏は、正体を隠した勧誘、財産収奪、集団結婚式などの統一協会の手法は、裁判でも悪質性が認められているとして、次のようにただしした。
山添 不安に乗じて心を支配し、信教の自由を侵害してきた。これは極めて悪質ではないか。
首相 悪質な事案があることは承知している。
山添氏は、15年の統一協会の名称変更に先立ち、統一協会から相談があったとする岸田首相の発言をあげ、相談内容と記録の有無について追及しました。永岡桂子文科相は、記録はあるとしつつも「法人の個別のことに関しては開示できない」と公表を拒否。山添氏は、記録の提出を委員会に要求し、名称変更を認めた政府の責任をただしました。
岸田首相は、「(被害者の存在が)さまざまな形で政府に情報として入っていた。放置したことは、深刻に受け止めなければならない」といいつつ、解散命令請求については「宗教法人法の手続きにのっとって事実把握に努める」というだけ。山添氏は、岸田首相の説明する「事実」は積み重なっているとして、「ただちに解散命令の請求へ進むべきだ」と迫りました。
山添 自主点検では関係切れない 自民党として徹底調査を首相 議員まかせの姿勢に終
山添氏は、安倍晋三元首相が統一協会の最大の広告塔となっていたにもかかわらず、「本人の心の問題」として調査の対象外になっていることについて、次のようにただしました。
山添 心の問題ではなく、公になっている事実がある。なぜ確認しないのか。
首相 最後は本人の認識の問題。十分な調査は難しい。
山添氏は、元参院議長の伊達忠一氏は、16年の参院比例で宮島喜文氏の応援にあたり、安倍氏に統一協会の組織票を回すよう依頼したと証言していると指摘。伊達、宮島両氏に直接確認しないのかと迫りましたが、岸田首相は「それが難しいと言っている」とあくまで調査を拒否しました。
山添氏は「安倍氏にかかわることは全て調査しないのか」と厳しく批判。今年の参院選で統一協会の支援を受けた井上義行、伊達、宮島各氏の参考人招致を求めました。
さらに山添氏は、統一協会の友好団体が昨年と今年の国政選挙前に自民党の国会議員に対し、憲法改正や家庭教育支援法制定、日韓トンネルの実現推進などを記した「推薦確認書」なる署名を求めていたとする報道について、次のように迫りました。
*自民党政治への識者の意見 !
保守的政界再編論と日本政治の停滞大阪市立大学教授:野田 昌吾
1.安倍政権の「誤算」と「嬉しい誤算」
衆院選は自民党が単独過半数を大幅に上回るとともに、公明党とあわせて再び3分の2を確保するという圧勝に終わった。
そもそも今回の総選挙は、森友・加計問題で窮地に陥った安倍首相が危機脱出のために、民進党代表選によって野党共闘路線の構築が不透明になったタイミングを見計らい、議席減を最低限に抑えつつ局面のリセットをはかろうとして断行したものであり、結果だけから見れば、安倍首相が解散・総選挙に込めた狙い自体はまったく的中した格好となった。
だが、安倍首相および自民党にとって最初から最後まですべて狙いどおりだったというわけではない。解散意思表明後の小池都知事による新党・希望の党の立ち上げ、さらに民進党・前原代表による希望の党への合流案の提起は、自民党を大きく慌てさせた。今回の選挙は、安倍政権の政治姿勢が厳しく批判されるなかで行なわれる選挙でもあり、7月の都議選で「小池旋風」の前に惨敗した記憶が自民党に呼び覚まされ、政権側には緊張が走った。
しかし、この自民党にとっての「危機」は3日と続かなかった。民進党が前原代表の全党合流案を両院議員総会で了承した翌日には、希望の小池代表による「丸ごと受け入れはさらさらない」「排除いたします」発言が飛び出し、野党共闘路線に代わる反自民の大きな「受け皿」ができるのではないかという希望は一気にしぼんでしまうことになった。小池の「排除」発言は、合流提案をいったん受け入れた民進党に大きな混乱を引き起こし、政権打倒のための大同団結をめざし「名を捨てて実を取る」(前原代表)はずの合流案が逆に民進党の3分裂という悲劇的結果を招き、さらに希望の党もこの発言によって、政治の停滞を打破してくれる清新で活力ある勢力という新党のイメージ作りに決定的に失敗してしまう。希望の党への支持は、結党表明時に予想されていたのとは違って選挙戦を通じて停滞を続け、結局、残ったのは野党のさらなる分裂だけという結果となった。
安倍首相および自民党にとって「誤算」はあったが、それはほんの一瞬で終わり、しかも、野党のさらなる分裂と小池新党の停滞という「嬉しい誤算」がそのあとについてきたのであった。小選挙区において自民党は選挙戦を圧倒的に有利に戦い、全体として圧勝を収めた。安倍首相の高笑いが聞こえてきそうである。
2.チャンスはなぜ逸されたか
安倍首相および自民党にとっては、狙いどおりといえば狙いどおりの選挙結果であった。ただ、安倍首相の「シナリオ」が一瞬にせよ狂わされたことも確かである。野党の立場からすれば、この政権側の「誤算」をなぜ「本物」にすることができなかったのかが問われなければならない。
今回の合流構想が失敗に終わった直接の原因はもちろん小池代表の「排除」発言であった。なぜ彼女がそのような発言をしたのか、そもそも小池・前原両代表の間で具体的な合流の取り扱いについていったい何が話し合われ、何が話し合われなかったのか、巷ではさまざまなことが言われている。「事の真相」については、またあらためて明らかになってくるのかもしれないが、そのこととは一応別に、ここで何よりも問われなければならないのは、自民党政権の打倒を目指す勢力にとっての「逸されたチャンス」という観点から見て、今回の合流問題の顛末はいったい何を示しているのかという点である。
それは、端的にいえば、1990年代初頭の55年体制の崩壊以来、わが国の政界再編論を執拗に規定してきた保守的野党再編論の持つ問題性である。
今回の合流構想自体、この保守的野党再編論の枠組で進められたものといってよい。小池代表は新党の立ち上げに際して、この新党を「改革保守」と性格規定し、くだんの「排除」「選別」の基準として安保法制と憲法改正への同意を求めたが、このことは彼女の目指す野党再編がどのようなものなのかをよく物語っている。
前原代表も、9月の民進党代表選において、岡田克也・蓮舫の過去2代の代表の下で進められてきた共産・自由・社民との野党共闘路線の見直しを前面に掲げて戦ったことからもわかるように、自民党に代わりうる第2保守政党的なイメージで野党再編を構想してきた人物だといってよい。離党者が相次ぐなかでの突然の解散・総選挙で焦りが相当募っていたとはいえ、党を事実上解党して小池新党へ丸ごと合流するという突飛な提案を前原代表ができたのは、やはり彼が保守的野党再編論者であったということを抜きにしてはおそらく理解できないだろう。
さらにいえば、今回の合流問題をめぐる混乱も、交渉を進めた両代表がともにこうした保守的政界再編論者であったがゆえに起こったものだったといえないだろうか。前原代表が「丸ごと合流」の詳細についてはっきりした確認をとらなかったことにしても、小池代表が不用意に「排除」発言を行ったことにしても、いずれも保守的再編論からの視角の偏りによって、「排除」問題の重みを二人が本当の意味では理解していなかったことによるのではないだろうか。そうとでも考えなければ理解できないほどの致命的ミスといってもよい。
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