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デール・ブライデンボー氏/Dale Bridenbaugh
設計者が明かす
「福島第一原発は欠陥品です」
独占インタビュー
「これを造ったことを後悔している」
事故を起こした原子炉を設計した男が語った福島第一原発の「危険性」の原点
(週刊現代 2011年4月16日号)
原発を止めるべきだという私の意見は無視された
3月11日の朝8時ごろ、近所に住む友人から私の携帯に電話があった。
「避難したか」
彼は心配そうにたずねてきた。
日本で起きた大地震の影響で、私の暮らすカリフォルニア州北部の海辺の街アプトスにも間もなく津波が来るというのだ。私の家は、海の近くにあるが、幸い高台に位置しているので、「大丈夫だ」と答え、念のためにテレビをつけてみた。すると福島第一原発が映っている。私の設計したあの原子炉で異常事態が起きていたのだ。
私は、サウス・ダコタ工科大学を卒業後、カリフォルニア州の原子力エンジニアの資格をとって、GE(電器から軍事製品まで製造している世界最大のコングロマリット=複合企業ゼネラル・エレクトリック)に入社した。1953年のことだ。やがて核エネルギー部門に異動して、沸騰水型軽水炉を開発することになった。ここで福島第一原発の1号機から5号機で使われている「MarkT」という原子炉を設計することになる。
残念ながらこの原子炉には、大きな弱点があった。そのことがわかったのは、1974年〜1975年、MarkTの後継にあたる原子炉「MarkU」を開発する過程でのことだ。新機種のテスト中に、いままで私たちが考えていたより、原子炉格納容器にずっと大きな負荷がかかることがあると判明したのである。その結果、当時開発していた新型原子炉はそのレベルの圧力を想定した設計にしなければならないという結論が導かれた。ただここで問題となったのは、これから造る原発のことだけではなかった。いやむしろ過去に造った原発、すでに稼働中のMarkTの安全性こそが問われたのだ。
MarkTは、地震や津波などの大きな災害によって冷却機能を喪失すると、格納容器に想定されていた以上の負荷がかかり、破裂する可能性がある。そのことが明らかになったのだ。つまり私たちの間で語られる「デザインベースの事故」、つまり設計上のミスから事故が起きるかもしれないということがはっきりしたのである。
原子力安全について監督する立場にあるNRC(米国原子力規制委員会)は、MarkTを使っている国内の施設すべてにこの原子炉の抱えている問題点について伝えた。そのうえで、GEの関係者とMarkTを所有している会社の人間が、MarkTオーナーズグループという研究会を立ち上げ、その安全性の確認と改良方法について話し合うことになった。
私はこのプログラムのプロジェクトマネージャーに任命されたので、全米16施設の代表者をサンノゼに集めて、改良のためのコストや負担について説明した。
このプログラムの短期的な目的は、原子炉が受ける可能性のある負荷を調べ上げることと、その調査の間、MarkTを稼動させていてもいいかどうかの判断をすることだった。当時、アメリカで16基、日本(福島第一で3基)、ドイツなどで10基あまりのMarkTが稼働中だった。
「まず操業を停止すべきだ」。このトラブルに対する私の考えは決まっていた。調査を進めれば進めるほど、不確かなデータが増えていき、MarkTを動かしていることへの不安が増していったからだ。しかしGEの判断は違った。
「もし操業を一時的にでもストップすればMarkTは危険であることを認めたことになる」「将来、新しい原発を売る上で、大きなハンデとなる」と、私の意見に耳を貸さなかったのである。ちょうどその頃、稼働中のGE製の原発で、パイプの破裂、部品の腐食など、さまざまな問題が発生していたことも、GEの態度を頑なにさせていたかもしれない。ついに1976年2月、私はGEの「原発を止めない」という姿勢に納得できず、会社を辞めることにした。
東京電力は水素爆発を避けられたはずだ
MarkTには、格納容器の強度以外にもいくつかの弱点がある。その一つは格納容器内の構造が複雑すぎることだ。配管にしても圧力抑制プールにしても、小さな容れ物のなかに複雑な構造で収まっている。おまけにMarkTはUに比べると、格納容器の大きさが6割ほどでしかない。この欠点は、どこかを破損した際、重大な結果を招きかねないものだ。故障箇所を見つけるのが大変で、そこにアクセスするのも難しいし、日常的なメンテナンスにも困難が伴うからである。
使用済み燃料を入れるプールの場所も適切ではない。MarkUとVでは、Tと違って、建屋の外のもっと低いところに造られている。燃料棒を移動するにも、福島第一のような事故が起きて水を入れなければならないときも、プールは低いところにあったほうがいいことは議論の余地がないだろう。
福島第一原発で事故が起きたとわかったとき私は当初、慌てなくてもいいと思っていた。でも、津波によって、電気設備の一部が海水に浸かってしまったことがわかってきた。しかも4基の原発が次々にトラブルを起こす。ここへきて最初の考えを改めざるを得なくなってしまった。
MarkTが抱えている問題点は、その後の改良である程度は是正された。格納容器にガス放出弁を取り付けたのもその一つだ。アメリカでは1990年頃にすべてのMarkTにこの弁を設置した。これによって原子炉内の気圧が設計上の限界に達したときに、水蒸気や気体を外へ出して減圧するのだ。MarkTオーナーズグループのアドバイスは東京電力や福島第一原発にも届いているだろう。
だが福島の事故の経過を見ていると、この弁が上手に活用されているようには思えない。何件かの水素爆発が起きているようだが、弁を有効に活用できていれば、こんな事態は避けられたはずだ。
ただこのような改良はあくまで対症療法に過ぎない。基本設計で生じた問題点の解決には繋がらないのだ。実際に福島第一原発で起きていることが、その事実を証明していると思う。
それでも日本は原発と縁を切れないだろう
結局、GEはMarkTを世界に30数基売った。アメリカには現在も24基ある。
GEの社内では、原発ビジネスは、「ひげそりの刃を売るようなものだ」と言われていた。刃を安く売って、ひげそりの柄の部分で儲けるということで、これを原発に当てはめて考えてみると、原発を安く売り出しておいて、これが廃炉になるまでテクニカルサポートやサービスをして設けるということだ。この商法が成功して、世界中にGEの原発が売れた。
GEが社としてどう考えているかわからないが、私自身はMarkTを設計したことを後悔している。だから会社を辞めた後、この原子炉の危険性について、米連邦議会などで何度も証言した。同じ時期にGEを退職した仲間2人と原発のコンサルタントの会社を立ち上げて、エネルギー問題や原子力エネルギーの安全性についてアメリカ政府や州にアドバイスもした。
この会社では映画にかかわる仕事も引き受けた。マイケル・ダグラスと、ある脚本家からもらった電話がきっかけだった。彼らから原発はどのように動かすのかとか、どのような事故がどういう過程で起こる可能性があるかとか、テクニカルな面でアドバイスしてほしいと依頼されたのだ。
原発事故をテーマにした映画「チャイナ・シンドローム」は、大きな話題を呼んだ。作品の出来も良かったのだが、何より公開12日後に、スリーマイル島原発で実際に事故が起きてしまったからである。映画が公開された当初、原子力産業の関係者は「映画にはリアリティが足りない」と批判したが、スリーマイル島の事故は映画よりもひどいレベルのものだった。
ドイツはいま原子力発電から手を引くことを考え始めた。アメリカも脱原発に舵を切ることは可能だ。原発に多額のお金を投資してきたが、同じぐらいの額を代替エネルギーに投資してきたからである。では日本はどうするのか。
多量の出費と長い時間が必要となるが、福島第一原発で事故を起こした4基の原子炉は廃炉となるだろう。だからといって、日本が原発すべてを止めることは難しいと思う。日本には資源がないし、「火力」にさらに依存すれば温暖化という問題が立ちはだかるからだ。
私たちの世界にはterroristproof(テロリストが来ても大丈夫なくらい丈夫な)という言葉で形容されるくらい頑丈な建造物がある。しかしこうした評価もあくまで主観的な表現に過ぎない。
エンジニアを長い間、やってきた立場から言えば、100%安全な原発など造れるはずがないのだ。
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