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【第395回】 2009年11月20日
週刊ダイヤモンド編集部
http://diamond.jp/articles/-/3483
冬になると、日本海側や東北、北海道などの降雪地域で、よく見られる道路の除雪作業。もしかすると、将来、こうした除雪作業がままならなくなるかもしれない――。
首都圏地域の人々には、意外に知られてはいないが、降雪地域での除雪作業は、地元の建設業者やゼネコンが中心に行っている。各自治体では、道路をいくつかの区域に分けて、入札する制度などで除雪業者を集めている。
ところが昨今、入札に応じない除雪業者が増えている。
たとえば、青森県弘前市では、自前で20台ほどの除雪車を所有しているが、これでは冬場のピークの除雪作業を乗り切れない。そのため地元の建設業者に対し、市内104の区域を指名競争入札で除雪する制度を採用している。
しかし、弘前市では、出動回数に応じた出来高払いのため、雪の少ない市街地などの作業が嫌われる。2008年度は市内104区域のうち、17区で応札がゼロだった。応札する業者自体も減少しており、ピークだった2006年度の146社に対し、2009年度には102社にまで減少した。
北海道札幌市でも、1999年の250社をピークに、現在は195社にまで減っている。こうした応札や除雪業者の減少傾向は、新潟や富山、長野などの各自治体にも見られる。
そもそも除雪作業は低い収益性の事業だった。「除雪車の維持費や人手の確保を考えると、採算に合わない」うえ、建設不況で「除雪を続ける企業体力がない」ことが、応札や除雪業者の減少傾向に拍車をかけている。
とはいえ、まだまだある程度の除雪作業が見込まれる“雪国”での作業はマシな方かもしれない。
「コスト的に見て、中途半端に降ったり、日によって極端に降ったりと変動が激しいのが、最も対応がやっかい」(群馬県の建設業者)だからだ。
群馬県建設業協会は、11月上旬、会員企業を対象にした「除雪体制に関するアンケート結果」を公表、「夏場の公共事業が削減するなか、今後3年間で除雪体制は崩壊する懸念がある」(青柳剛会長)と“緊急事態”宣言をした。
http://diamond.jp/articles/-/3483?page=2
アンケートは、群馬県内の建設業者333社に対して実施され、246社から有効回答を得た。
そのうち6割以上の企業が「来年度までの除雪体制の維持ができなくなる」と回答、「3年後まで」という回答を含めると、約9割が「維持できなくなる」と回答した。
群馬県では、2008年以降、井上工業や山内工業、小山建設工業など地元で有力なゼネコンが相次いで経営破綻し、協会の会員企業も1996年の381社から265社にまで減少した。協会の担当者は「地元建設業者の減少により、1社当たりの除雪担当区域は広くなっているが、その分、熟練作業者の人員確保や待機費用、除雪車両の維持費などの負担が重くなりつつある」と説明する。
最近はこうした地元建設業者に対し、除雪車両の維持費や作業員の待機費用を負担したり、最低保障制度を導入したり、導入を検討する自治体も増えつつある。
先述した弘前市では、今年度から出来高払いの除雪作業に対し、最低補償制度(除雪車両1台当たり60.9万円)を導入した。「2009年度の応札状況をみると、104区域のうち、13区域で応札ゼロだった。だが、昨年度の応札ゼロが17区域だったという状況をみると、やや歯止めがかかった感がある」(道路維持課)。
北海道の札幌市でも、すでに請負金額の約7割を最低補償する最低補償制度も導入している。これに加え、来年度からは、冬場の除雪作業と夏場の道路維持工事を一体化した“冬夏セット”の入札方式を導入する計画だ。 まさに、「夏の公共工事がなければ、手間ヒマかかる除雪なんかやってられない」(地元建設業者)という声に対応した制度とも言える。
札幌市雪対策室事業課では「これまでも原則的に道路維持工事は1年間を通じて行うものだったが、除雪作業だけは別に入札を行っていた。将来的に、除雪業者確保の困難が予想される中、除雪作業を維持するために、2010年度から(冬夏セットの入札方式を)試験的に導入する」と説明する。
除雪作業は、雪の多い降雪地域では、住民の生活基盤を支えるものである。今後も、業者確保のために、各自治体による支援策が増えていきそうだ。
しかし、地方のゼネコンや建設業者の経営環境は相変わらず厳しい。折しも、民主党政権に代わり、更なる公共事業の削減が予想されるなか、「除雪作業よりも、冬を越せるかどうかが心配だ」(群馬県の中小建設会社社長)という声には、実感がこもる。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 山本猛嗣)
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