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[足利事件テープ] 冤罪生む構図は明白だ
( 1/24 付 )
足利事件の再審公判で、2日間にわたって菅家利和さんの取り調べを録音したテープが再生された。当初は殺害を否定していた菅家さんが、検事によって「自白」へ追い込まれていった様子が明らかになった。
誤った証拠によって犯人であるという予断を持った検事の追及をみると、検察という捜査権力の前で無力にならざるを得なかった菅家さんの心境がひしひしと伝わってくる。こんな状況に追い込まれたら、誰でも自白するのではないかという疑念と恐怖を感じずにはいられない。
菅家さんは、当時取り調べを担当し、証人として出廷した宇都宮地検の森川大司元検事に謝罪と反省を求めたが、元検事は「深刻に受け止める」と繰り返しただけだった。自ら行った取り調べの結果として冤罪(えんざい)を生んだ当事者から、反省の言葉が聞かれなかったのは遺憾である。
テープの開示と法廷での再生をめぐっては、菅家さんが虚偽の自白をするに至った経緯を解明したいという弁護側と、新たなDNA鑑定で無罪は明らかとして「証拠調べの必要はない」という検察側が対立。宇都宮地裁が開示命令も辞さないという強い姿勢を示したことで実現した。
テープが再生されたことで明らかになったのは、いとも簡単に冤罪がつくりだされる構図である。自白内容には信用性を疑わせる内容がいくつもあるというのに、検事は疑問を持つどころかうそと決めつけて、自白を誘導していた。
元検事は「当時は、証拠関係からあなたを犯人と認められる状況にあった」とも語っている。謝罪を拒否したことなどを考え合わせると、捜査はあくまで適正に行われたということを主張したかったのだろう。
検事が怒鳴ったり暴力をふるったりした形跡はない。だが、検事の発言は無罪の人間が突然日常生活から遮断され、心理的に不安定な状況のなかで取り調べを受ける威圧感への想像力を欠く。捜査が適正に行われれば、冤罪もやむを得ないとさえ言っているように聞こえてくる。
強引な取り調べでなくとも、予断を持った捜査がいかに危険なものか分かった以上、取り調べの全面可視化に向けた議論を急がなければならない。裁判所は、弁護団から報道機関への音声コピーの配布に待ったをかけたが、取り調べの実態を多くの人に知ってもらうことの有用性を考えるべきだ。裁判員裁判の定着に向け証拠開示の在り方を見直したい。