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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100122-00000980-yom-sci
右脳・左脳、ゲーム脳…脳科学の「神話」ご注意
1月23日17時38分配信 読売新聞
世は空前の脳科学ブーム。タイトルに脳のつく書籍は、この5年間で3000冊以上も出版された。しかし、脳に関する気になる話は、研究結果を拡大解釈した俗説も少なくない。
経済協力開発機構(OECD)は、こうした俗説を「神経神話」と呼ぶ。典型的な例として「〈論理的な左脳〉と〈創造的な右脳〉」というような単純な区分けと、3歳児までに豊かで多様な刺激を与えた方が頭が良くなるという「3歳児神話」の二つをあげる。
テレビゲームをやり続けると、子供がキレやすく反社会的になるという「ゲーム脳」も、神話のひとつ。「前頭葉で脳波のアルファ波が増え、逆にベータ波が激減するパターンは認知症と一緒」というのが根拠で、教育関係者らに広く支持された。しかし、「脳科学の真実」という著書もある坂井克之・東京大学准教授(脳科学)は「ベータ波はリラックス時にも減る。結論が先にあってデータを使っただけで、脳活動のデータが何を示しているのかの判断は難しい」と批判する。
◆脳トレだけの効果は「?」◆
簡単な計算や音読で脳を鍛えるという「脳トレ」もブームになった。認知症の予防に応用した学習療法も広がっている。お年寄りが脳トレに取り組み、認知症が改善したというデータも出ているが、学習療法では介護スタッフが励まし、褒めることが重要な要素だ。スタッフがお年寄りの隠れた能力に気づき、その能力を引き出す側面も大きい。
脳トレを提唱した川島隆太・東北大学教授は「学習療法の目的は、認知症の改善で、どの要素が効いているかは重要ではない」と主張するが、坂井さんは「脳トレだけの効果なのか、科学的に検証されていない」と指摘する。
◆実際の研究とはミゾ◆
こうした神話が続々と生まれるようになったのは、1990年代以降。磁気共鳴画像(MRI)など脳の分析技術が発達し、脳の画像が手軽に手に入るようになってからだ。
兵庫教育大学の松村京子教授は「家庭や教育現場で脳科学への関心が高まっているが、実際の研究との間には溝がある。その分、単純化された説明を受け入れがち」と指摘する。ウソの話も脳の画像と一緒に説明すると、信じる人が増えるという研究もある。
専門家でつくる日本神経科学学会も今月、科学的な根拠を明確にした情報発信を求める声明を出して現状に警鐘を鳴らした。脳の研究は教育や医療に応用されることが多いだけに、情報の出し手も受け手側も注意が必要だ。(科学部 杉森純) .最終更新:1月23日17時38分