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【9月23日 AFP】米南部ジョージア(Georgia)州で21日、警官を殺害したとして1991年に殺人罪で有罪判決を受け、以来20年間にわたり無罪の主張を続けて、世界の死刑廃止運動の象徴ともなった黒人のトロイ・デービス(Troy Davis)死刑囚の刑が執行された。
人種差別による冤罪(えんざい)の可能性があるデービス死刑囚の事件は、世界の死刑反対派の間でよく知られており、刑の執行にはジミー・カーター(Jimmy Carter)元米大統領、ノーベル平和賞を受賞した南アフリカのデズモンド・ツツ(Desmond Tutu)氏、ローマ法王ベネディクト16世(Pope Benedict XVI)なども反対していた。
デービス死刑囚は1989年8月19日、ジョージア州サバンナ(Savannah)のハンバーガー店の駐車場で、警官のマーク・マクフェイル(Mark MacPhail)氏(当時27)の心臓と頭を銃で撃ち抜き殺害したとされている。
■目撃証言のみで有罪に、黒人差別の疑いも
しかし、デービス死刑囚は一貫して無実を主張しており、殺害されたマクフェイル警官が白人で、事件当時20歳だった同死刑囚が黒人であることから、人種的偏見による冤罪ではないかと言われてきた。事件には物的証拠がなく、目撃証言に基づいて有罪判決が下されたものの、証言の多くは後にひるがえされたり撤回された。この約20年間に、刑の執行は3度猶予されていた。
今回も、州最高裁は執行間際まで異例の4時間近くに及ぶ審理で執行停止を検討していた。執行予定時間が過ぎると、同州ジャクソン(Jackson)近くの刑務所前に集まった支持者ら数百人はいったん湧いたが、最終的に弁護団が提出した猶予の請願は却下され、望みは絶たれた。
致死薬の投与は、21日午後10時53分(日本時間22日午前11時53分)に開始され、15分後にデービス死刑囚の死亡が宣告された。
■「自分は無実だ」が最期の言葉
執行に立ち会った地元ラジオジャーナリストのジョン・ルイス(John Lewis)氏はこう伝えた。「わたしたちが入っていくと、彼(デービス死刑囚)が担架に縛られていた。看守が言っておきたいことはないかと尋ねると、彼は頭を上げ、(殺害された)マクフェイル警官の遺族が座っている最前列をまっすぐ見た。そして、自分は銃を持っていなかった、あなた方の息子さん、お父さん、お兄さんの命を奪ったのは自分ではない、自分は無実だ、と言った」
一方、殺害されたマクフェイル警官の妻は死刑執行を前に、「22年間ずっと耐えてきた。きょうこそ正義が為される日だ」と気持ちを語った。ルイス記者によると、妻は事件当時はまだ幼児だった息子やマクフェイル警官の兄弟らと共に、一度もデービス死刑囚から目を離すことなく死刑執行を見守ったという。
刑の執行が伝えられると、フランス、ドイツなど欧州各国の政府は憤りを表した。国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)米国支部のラリー・コックス(Larry Cox)事務局長は、「恐らく無実だったであろう」男性をジョージア州が死刑に処したことで、米国の司法制度は「その根幹まで揺るがされた。これほど疑わしい状況の中で1人の人間を殺すとは、非常に恐ろしいことで、司法制度の致命的失敗だ」と述べた。
米国で今年、刑を執行された死刑囚は、デービス死刑囚で35人目。全米51州のうち34州が死刑制度を存置している。(c)AFP/Chantal Valery
http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/crime/2830185/7813217
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死刑制度が抱えている矛盾点がさらけだされた死刑執行だ。被害者家族にとっては死刑にされる人物が無実の人間かどうかは眼中に無く、「犯人として死刑にする」という憎しみの心を満足することができさえすればそれでいいのだろう。人間からここまで「誠実」さを奪うことになる死刑制度そのものの残酷さが示されたということだ。
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