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・NATO“タダ乗り”常連のドイツに敵意を示す米国
これから来年にかけて、世界地図が大きく塗り替えられるかもしれない。その主役は中国。欧米財政危機で欧州と米国を分断し、中国が欧州を取り込むのではなかろうか?アメリカの危機感は増す。
欧州の中でも中国と急接近を見せるのがドイツだ。ドイツと中国の関係が欧米関係を左右するだろう。一方、アメリカは、リビア作戦を巡って欧州諸国と衝突。NATOの足並みが乱れ、米国は“同じ財政落第生”である欧州についていらだちを見せる。中でもNATO“タダ乗り”常連、ドイツに敵意を表す。
・中国を大歓待したドイツの思惑
6月下旬、中国の温家宝首相が英国、ハンガリー、ドイツ等欧州を訪問した。中でもドイツでは大歓待を受けたという。温首相はウルフ大統領とも会談。メルケル首相とは共に第6回中独経済・技術フォーラムに出席。自動車、化学、機械、電子・電気器具、投資等20近くの二国間協力に締結。2015年をめどに二国間貿易額2800億ドル達成を目指すことでも合意した。中国にとってドイツは欧州最大の貿易相手国。最大の直接投資・技術の導入元でもある。ドイツでは二国間経済協力の推進ばかりでなく、欧州財政危機救済について踏み込んだ意見交換があったのではないかと言われている。
欧州財政危機の救世主として注目を集めるドイツ。しかし、ドイツだけでは欧州を救うことは難しい。EUで最大の財政余力を持つドイツにしても、通年で3%超の財政赤字(対GDP比率)を記録している。欧州を救える財政余力を持つ国は中国しかないだろう。欧州再建のために泥をかぶらねばならないドイツからみたら、中国ほど頼もしい相手はいないだろう。
・ゲーツ前国防長官の怒りの正体
一方のアメリカはドイツを手厳しく批判している。6月10日のニューヨーク・タイムズの社説は退任を控えたゲーツ国防長官の演説を取り上げていた。現職で無くなるゲーツ氏は遠慮のないドイツ・NATO批判を展開。米独間の確執の根深さをあからさまにした。
ゲーツ氏が批判したのは欧州の“タダ乗り問題”。かつて米国はNATOの軍事支出の50%を負担してきた。「それが今日では75%になっている!」というのだ。欧州諸国がアメリカのコストでNATOの傘の下に安全を享受する一方、防衛費を一方的に削減。「米国は、これ以上NATOの戦闘任務やコストを過分に負担するようなことはできない」とゲーツ前国防長官は吠えたのだ。
象徴的だったのが、今回のリビア作戦。ゲーツ前長官は「加盟28カ国中、軍事作戦に参加したのは半分以下。空爆に参加したのは3分の1以下。NATOの恩恵の最大享受国であるドイツに至っては何の貢献もしていない!」とストレートにドイツに怒りをぶつけた。
「金の切れ目が縁の切れ目」といわんばかりである。
「NATOの状況は欧州加盟国が思っているよりもはるかに深刻。欧州の加盟国が軍事支出を増やさなければ、先行きは暗い。NATOは意義のない存在になりかねない」とゲーツ氏は結ぶ。
しかしながら、欧州の危機はこれからだ。欧州各国は、財政再建のためにさらに大きく国防費を削減せざるを得ない。NATOはさらに力を失うだろう。米国も財政再建のために国防費を大きくカットせざるを得ない。欧州はもちろん、アジアでも地盤沈下はさけられない。ここを狙うのが中国だ。
財政の危機が、外交安全保障の地図を大きく塗り替えようとしている。ただ、中国には外交安全保障上のドクトリンがない。どんな理念や哲学で仲間を造り、連携をしていくのか?
・多様な中国の狙い
中国は、欧州を救う代わりに、欧州に中国への武器輸出を再開させるかもしれない。GPS等、欧州の独自の軍事関連技術開発について中国に対して門戸を開かせるかもしれない。軍事以外でも欧州、特にドイツが持つ優れた製造技術、代替エネルギー・省エネ関連技術、食糧生産技術を狙っているだろう。アフリカの旧宗主国である欧州諸国を通じてさらにアフリカの利権を漁っていく可能性も高い。
先週のFT(英ファイナンシャルタイムズ紙)は「オバマとメルケルは奇妙なカップル」と題して、米独のリーダーを並べて論説を展開。「二人はリーダーというより名門大学のゼミ仲間」とFTは評す。「弁護士(オバマ)と物理学者(メルケル)。二人ともどこまでも思慮深く、考え抜くのが好き。でも慎重すぎて行動に移さない。二人とも真のリーダーシップを発揮できていない」とその共通点を痛烈に批判。慎重すぎる二人が、思慮を重ねた上、最後に決裂の行動を起こすのだろうか?
・お金か?理念か?
一方、米国を代表する外交専門誌フォーリンアフェアーズでは「アメリカの経済政策はドイツを見習え」とドイツを持ち上げる。「財政・金融政策を打ち尽くしたアメリカは今こそ貿易立国ドイツを見習い、国家主導で外需を取りに行くべき」と論じる。NATOタダ乗りの件は置いておいて、大事な盟友に敬意を表して学ぼうと呼びかける。
共通の理念はあるが、お金がないアメリカ。共通の理念はないが、お金がある中国。ドイツを筆頭に、欧州はどのように外交安全保障上の舵を切っていくのか?目が離せない。(抜粋)
〆:国家財政の危機が、外交安全保障の地図を大きく塗り替えようとしている。
軍事経費のトラウマから開放されて、「普通の国」になることを模索しているオバマ米国。そんな米国を尻目に、「普通の国造り」の優等生であるメルケル独。
一周遅れでやってきた中国は、西欧近代化の米独を秤にして、どのような「ポスト欧米」を画策しているのか・・ドル覇権に赤信号がともった世界は、中国のアジア的価値観に目を凝らしている。
日本は「米国のポチ」の首輪を外して・・日本狼が先祖の秋田犬か、柴犬になれるのだろうか?(勘)
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