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<21世紀をリードするのは西洋か東洋か>(3)
2011年3月9日 フォーリン・アフェアーズ日本語版
ティムール・クーラン/デューク大学政治学教授
何が西洋の優位を支えたか
ヨーロッパと同じペースで発展できなかった地域には、西洋に匹敵するような経済インフラがなかった。もっとも重要なのは、これらの地域が、労働力と資本を大量に蓄積する制度も、資源を効率的に再分配する持続的な制度も整備できなかったことだ。中東では宗教そして広く文化が重要な役割を担ったが、それはニーダムが考えたような宇宙論的な理由によってではなかった。
イスラムは保守的で、自然界への好奇心や外国から学ぶ意欲に乏しかったとされるが、むしろ障害となったのはイスラムの相続と結婚のルールだった。これらのルールが資本を分散化し、大規模で持続性のある民間事業の形成を妨げた。南アジアでは、ヒンドゥー教が親族内での資本維持を奨励したため、大規模な非人格的事業の誕生が妨げられた。
西洋が工業化せず、世界を植民地化しなかったとしても、中国、インド、中東で自然に工業化が起きていたはずだとする考えもある。しかしモリスは懐疑的だ。
「確かに東洋と西洋の発展を示す『得点』は1800年まで互角だったが、外的影響を受けていなければ、東洋が19世紀に経済的離陸を果たすだけの工業化を進めていたと考える手がかりはほとんどない」
この言い分は間違っていない。しかし経済インフラという要因を無視したために、モリスはこの主張を立証できず、自らの開発指標の欠陥を露呈している。
1800年までにヨーロッパが近代経済に必要な構成要素をすべて整備し、中国がそれを整備できなかったとすれば、西洋と東洋が互角だったはずはない。問題は、モリスが組織化能力を示す指標として都市の大きさを基準にしていることにある。
現在、ナイジェリアのラゴスはニューヨークとほぼ同じ規模だが、ナイジェリアとアメリカの組織化能力は明らかに異なる(例えばナイジェリアには月に人間を送り込む準備はできていない)。民間商業組織が利用できる組織形態の選択肢など、より洗練された組織化能力の指標があれば、ヨーロッパがその数世紀前から東洋に対する優位を持っていたことが分かるはずだ。
東洋では近代的な経済制度は出現しなかった。西洋に植民地化された後、東洋の指導者たちは、西洋が1000年という時間をかけて培ってきた制度を迅速に取り込むことで、その制度的欠落を埋めようと試みた。その改革は今も完成していない。近代経済制度がうまく機能するには、公正な裁判や商取引の規範、組織への信頼など多くの補完的な制度が必要になる。これらは簡単に輸入できない。東洋の多くの地域では、これらの補完的制度は今もゆっくりと整備されているにすぎない。
21世紀をリードするのは
モリスが新著で目指しているのは、そのタイトルが示唆するように過去を解釈するだけでなく、東洋と西洋の発展と成長のギャップが今後どのように展開するかを見極めることにある。
現在のトレンドを基に、モリスはおそらく2103年までに東洋が再び西洋を逆転すると予測している。確かに中国の生産力、戦争能力、情報能力、そして国民1人あたりのエネルギー消費が西洋を上回るスピードで高まれば、数世代のうちにモリスの指標でみた東洋の得点は高くなる。
しかし中国、インド、中東が経済的に西洋に追いつくことは可能でも、この結論はモリスの著書の中核的主張から導かれるものではない。ヨーロッパの優位を確立した経済制度が真に根付いて初めて、これらの地域は西洋に追いつくだろう。
モリスの予測に首をかしげるべき理由は十分ある。東洋では数世紀にわたって民間セクターの組織化が進んでこなかったため、市民社会は力がなく民主的制度も脆弱だ。三権分立に基づく安定した民主主義制度がなければ、新しいビジネスに長期投資をするインセンティブは損なわれるし、技術革新の自由も制約される。そして中国と中東が近い将来、健全な民主主義体制を育んでいく保証はなく、むしろ長期にわたって政治的混乱に直面する可能性が高い。現在多くの課題に直面しているとはいえ、西洋は引き続き21世紀においても支配的優位を維持すると考えるべきではないか。●
Timur Kuran デューク大学政治学教授。専門はイスラム研究、文明論など。最近の著書にThe Long Divergence: How Islamic Law Held Back the Middle East (Princeton: Princeton University Press, 2010)がある。
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