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http://www.afpbb.com/article/economy/2784720/6779878
【2月15日 AFP】このスラムの中では、メインストリートにある給水タンクの影が唯一の日陰で、太陽の移動とともに、住民たちも影を追って移動する。備蓄量1万リットルのタンクに水が補給されるのは週3回で、これがこの集落Plangeneが受けているたった1つの行政サービスだ。
南アフリカ・ヨハネスブルク(Johannesburg)から西へ800キロのPlangeneは、「カラード(混血)」世帯が暮らす非公式集落だ。彼らは北ケープ(Northern Cape)州の白人が所有するワイン農園内の家から立ち退かされてきた農民たちで、トタン屋根の小屋が50戸ほど点在する集落には、電気も水道も学校もなく、衛生状態も悪い。
「農園主に追い出されたとき、ここしか来るところがなかったんです」と言うカトリーナ・ブラウンさん(62)は、夫が働いていた農場で人生の大半を過ごしてきた。だが2005年、夫が亡くなった翌月にここに移ってきた。「夫がいなくなったからもう農場には住めない、おまえは要らないと言われたんです」
ブラウンさんのような話は、南アフリカの地方部では珍しくない。アパルトヘイト支配が終わった94年以降、住んでいた農場から追放された非白人は推計 100万人に上り、うち法的手続きを経たケースは1%程度でしかない。かつて働き暮らしていた場所から簡単に放り出されてしまう彼らの立場は、アパルトヘイト終焉から17年経つ今もこの国に残る負の遺産を投影している。
94年当時、国内の農地の87%は、人口のわずか13%を占める少数派の白人が所有していた。新生南アフリカの政府は、もっと平等な土地の再分配を約束し、99年までに白人所有地の3割を黒人に再分配する計画を立てた。しかし、その期限は延期され、果てにグジレ・ヌクウィンティ(Gugile Nkwinti)土地改革相が昨年、目標の5分の1しか達成していないことを認め、約束は反故にされた。
隣国ジンバブエでは、白人が所有する農地を暴力的に接収した結果、生産が大打撃を受け食料危機につながった。これを横目にした南ア政府は、黒人の土地所有を増やす必要性と、白人中流層を排除することの不安や商業的農業が混乱する懸念のはざまで、煮えきらない態度でいる。
■「アパルトヘイト時代から何も変わっていません」
今日も南アフリカの地方部に住む約300万人は、自分が所有しない土地に住んでいる。たいていは家族で何十年もその家に住んでいる。
憲法と複数の法律は、立ち退きにあった住民に、新たな土地に住む権利または賠償を保証している。しかし農業分野の人員削減が進む中、現実には多くの農民が、長年住み慣れた家から違法に立ち退かされ、Plangeneのようなスラムを作っている。また居住権について知らない小作人も多く、不当な立ち退きにあっても裁判に訴え出ないケースも多い。このため政府は、借地権を強化した新法案を前年12月に提出したところだ。
しかし、南ア最大の商業農場所有者団体、アグリSA(Agri SA)はすでに新法案に異を唱えている。関係者はその理由について、保護規制が厳しく、「一度労働者を住まわせてしまったら立ち退かせることがほぼ不可能な内容のため、農園主はかえって労働者用の住居を撤去してしまうだろう。労働者を支援するどころか逆効果だ」と説明している。
2005年に行われた農民立ち退きに関するこれまでで唯一の全国調査によると、アパルトヘイト終焉後の10年間で、土地改革によって地所を入手できたのは16万5000世帯に上るが、一方でそれを上回る20万世帯が立ち退きの憂き目にあった。
以前はブドウ園で働いていたマリア・マグデレーナ・エウスさん(54)は、真の問題は農場における力関係の差だと訴える。エウスさんは23歳の時からある農村集落のブドウ園に住み込み、働いてきたが、昨年脳卒中を患って仕事を辞めた。雨漏りのする一間の小屋に親族6人と住んでいるが、カラードのほかの 42世帯とともに、農場主から立ち退きを迫られている。
「所有者が何か言えば、それに従えということで、誰も嫌だとは言いません。わたしたちが好むと好まざるとにかかわらず、所有者は勝手に決断するだけです。アパルトヘイトは終わっていない。所有者も変わっていない。人間であるわたしたちを今だに所有したいのです。何も変わってはいません」(c)AFP/Joshua Howat Berger
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