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ムバラク大統領が辞任 エジプト軍、権限掌握
2011年2月12日3時5分:朝日新聞
http://www.asahi.com/international/update/0212/TKY201102110319.html
【カイロ=貫洞欣寛、古谷祐伸】エジプトのスレイマン副大統領は11日、ムバラク大統領が辞任し、軍の最高評議会に権限を渡したと発表した。ムバラク氏は10日夜(日本時間11日朝)にテレビ演説し、大統領としての権限をスレイマン副大統領に移譲すると発表。同時に、大統領としての地位にはとどまる意向を示していた。だが、即時辞任を求める大規模デモが11日も起き、激しさを増したことなどから、辞任を決断したとみられる。
スレイマン副大統領は「ホスニ・ムバラク大統領は辞任を決め、国家運営のための権限を軍最高評議会に移譲する」と述べた。
中東の地域大国エジプトで5期30年にわたり強権支配を続けてきたムバラク氏が大衆行動によって追いつめられ、退陣したことは、今後の中東各国の情勢に大きな影響を与えることになるとみられる。カイロ市内では発表直後、一斉に車のクラクションが鳴り、タハリール広場のデモ隊は歓声を上げて大騒ぎとなった。
エジプト憲法では、大統領が辞任して空位となったり、永続的に職務執行が不可能となったりした場合は、人民議会議長か憲法裁判所長官が権限を代行する規定となっており、軍部が憲法を一時的に停止する可能性がある。スレイマン氏は、自らの処遇については触れなかった。
ムバラク氏は10日のテレビ演説で、「憲法規定に従い、権限を副大統領に移譲する」と述べる一方、「責任を担い続ける」「(任期の)9月までの間に権力の平和的な移行を進める」と語り、今後も大統領の座にはとどまる考えを示していた。さらに「私はこの国で生まれ、この国で死ぬ」と述べ、メディアなどで取りざたされている「辞任後出国する」との見方を否定した。スレイマン副大統領も演説で、デモ隊は帰宅し、職場などに戻るよう呼びかけた。
一方、エジプト軍最高評議会は11日、声明を発表し、(1)混乱収束後直ちに非常事態令を解除(2)総選挙の結果に関する不服申し立ての受理(3)憲法改正(4)自由で公正な大統領選挙の実施――を保証するとした。さらに、権力移行が完結するまでは市民の要求に真剣に向き合い、デモ参加者を訴追しないことなどを確約した。
だが、ムバラク氏の即時辞任を求める野党勢力やデモに参加する市民らは大統領演説に猛反発。11日のイスラム教金曜礼拝後に「勝利の金曜日」と名付けた大規模デモを行った。退陣要求デモの拠点、カイロ中心部タハリール広場には20万人を超えるとみられる市民が集まり、北部アレクサンドリアなど各地でデモが行われた。
スレイマン副大統領に対しては「最側近としてムバラク強権体制を支えてきた」との批判があり、辞任を求める声も強かった。スレイマン氏が今後も副大統領など政府の顔として残った場合、抗議デモが沈静化するかどうかは不透明。
アルジャジーラなどによると、ムバラク氏は11日、家族とともにシナイ半島の紅海に面した高級リゾート地、シャルムエルシェイクに入ったという。シャルムエルシェイクはムバラク氏の肝いりで開発が進められ、各種の外交交渉や国際会議を誘致。ムバラク氏は昨春ドイツで「胆嚢(たんのう)の摘出手術」を受けた後、しばらく同地で静養していた。
今年に入りムバラク即時退陣を求めるデモが続くようになってから、米国政府筋などの情報として「スレイマン副大統領に権限を移譲し、ムバラク氏はシャルムエルシェイクかドイツで静養生活に入る」との観測が出ていた。
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