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http://jp.wsj.com/Opinions/Opinion/node_152434
シグフリード・ヘッカー元米ロスアラモス国立研究所長によると、北朝鮮は2つの新たな核施設の建設に着手している。1つは軽水動力炉で、建設の初期段階にある。
もう1つは、ウランを濃縮するための「近代的、かつ清潔な遠心分離プラント」という。週末にこの施設を訪れたヘッカー氏は、プラントは完成に近いようだ、と述べている。
遠心分離プラントは特に重要な意味を持つ。毎年、核兵器を製造するのに十分な高濃縮ウランの生産が可能になるためだ。北朝鮮が保有するこの種の施設は、これだけではないかもしれない。
23日に発生した北朝鮮による韓国・延坪島(ヨンピョンド)の砲撃により、北朝鮮政府が核技術の飛躍的な進歩をもって、国際社会に最大限の譲歩を迫ろうと目論んでいることが明白になった。
北朝鮮の核をめぐる驚くべき新事実は、情報活動の失敗によるものではない。この10年間、情報分析担当者は、北朝鮮による核兵器の開発を予想し、同国からのミサイルや核兵器の流出・拡散の証拠が増えていることを指摘していた。分析を過小評価、あるいは無視したり、北朝鮮は非核化合意に従うとの考えに固執した政策立案者や評論家の失敗だ。
クリントン米政権の交渉担当者は1994年、北朝鮮がウランの濃縮を試みる可能性があることを認識した。それにもかかわらず、担当者は寧辺(ヨンビョン)の施設でのプルトニウム生産を凍結する米朝枠組み合意に的を絞る方を選んだ。
情報担当局はウラン濃縮の痕跡を追ったが、政策立案者はこれを無視した。北朝鮮から韓国に亡命した黄長ヨプ元朝鮮労働党書記は2004年、北朝鮮は「核抑止力で米国と対峙(たいじ)する」ことを意図しつつ、枠組み合意に向けた交渉に臨んだ、と語った。
ブッシュ政権は2002年、高濃縮ウラン施設向けの設備と原材料の調達を北朝鮮が積極的に試みている、との説得力のある情報を入手した。複数の情報源から得られた情報を、専門家はロゼッタストーンのように組み合わせて解析したのだ。計画の正確な状態はまだ把握しきれていなかったが、10年以内に施設が稼動する可能性があると推測された。今になってみれば、まさに的を射た分析だった。
北朝鮮による極秘の高濃縮ウラン計画は、米朝枠組み合意へのあからさまな違反だった。ブッシュ政権はこれを受け、北朝鮮への重油輸出を停止した。北朝鮮は少なくとも90年代から計画を進めていたことを証拠が示していたにもかかわらず、批評家は枠組み合意を壊したとして、金正日総書記ではなくブッシュ大統領を咎めたのだ。
07年までに北朝鮮は核実験を行い、6カ国協議は行き詰まった。米国交渉団は協議を当初の米朝枠組み合意に押し戻すのに熱心で、寧辺の原子炉の凍結に主眼を置いた。しかし、高濃縮ウランをめぐる情報が入ったことで、交渉団は枠組み合意への回帰を断念せざるを得なかった。その代り、公私を問わず当初の情報の信頼性について疑問を呈した。
米紙ニューヨーク・タイムズやそのほかのメディアは、北朝鮮情報を分析する専門家のトップが07年2月の議会証言で、北朝鮮による高濃縮ウラン計画の自らの評価を「引き下げた」と伝え、交渉団を支援した。しかし、この専門家は実際のところ、米国はこれについてはよく分かっていない、と述べただけだった。米国が北朝鮮政府を強く警戒していたため、北朝鮮は核開発の事実を隠匿しており、こうした発言は特に驚くべきことではない。
その一方、北朝鮮の交渉団は03年3月に北京で、「米国が敵対的政策を終わらせない限り、北朝鮮は抑止力を行使し、抑止力を拡大し、抑止力を移転させる用意がある」との見解を示し、警告を送った。北朝鮮はこのすべてを実行した。
北朝鮮由来とみられる六フッ化ウランがリビアで見つかったことを伝えるため 米国家安全保障会議(NSC)の2人メンバーが05年2月に日本、韓国、中国に派遣されたことがリークされると、われわれは情報を誇張したとして外部専門家や国務省関係者に非難された。
07年9月にイスラエルが爆撃したシリアの原子炉の建設計画に北朝鮮が関与していると米中央情報局(CIA)が公表すると、米交渉団は米朝枠組み合意に基づく「査察協定」の締結に固執。これを実現するため、拡散の問題を脇に置くよう政府と議論して納得させた。
この結果、米国の制裁は解除され、マカオの銀行で凍結状態になっていた北朝鮮の不正資金は還付された。しかし、査察協定は結局、締結されず、北朝鮮は2度目の核実験を行った。こうしたなか、北朝鮮の核能力を求める国の最前列にミャンマーがいる、との証拠が増えていった。
北朝鮮が核保有国として認められることを望んでおり、米国から恒久的な譲歩を引き出すために核拡散の脅威を利用し続けることを目論んでいるのは今では明白だ。
米国が核拡散を懸念するのなら、北朝鮮は同等の核保有国として「軍縮合意」について協議するだろう、と北朝鮮当局者は部外者に述べている。
こうしたことが北朝鮮の兵器をめぐる立場に正当性を与え、同国の兵器計画と核拡散のエスカレートに余地を残すことになる。これとは逆に、米国の信頼性と抑止力は着実に後退する。北朝鮮の高濃縮ウラン施設の存在は、この力学をより危険なものにしている。
オバマ政権は、今回の北朝鮮の砲撃は危機ではないとの見解を表明した。北朝鮮が優位に立つのを回避することが目的であるなら、この発言はおそらく賢明といえる。現時点で尽力すべきは抑制と阻止、それに圧力だ。今日までこうしたことが持続的に行えなかったのは、情報ではなく、政策の失敗と言えよう。
(グリーン氏は2001−05年にNSC幹部を務めた。現在は戦略・国際問題研究所に在籍。トビー氏は06−09年、国家核安全保障庁で幹部を務めた。現在はハーバード大学ベルファー科学国際問題センターのシニア・フェロー
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