ある連中の会話について考察しよう。それはある車内での会話であった。男女の二人の会話であるが、別にこの二人は、夫婦ではない。恋人でも友人でもなく、たまたまある研修で一緒になったのである。車内で、延々と男の方が現在の日本の状況について解説し、女に自慢げに話をしていた。この男は、すでに現役を退いたらしく、今は定年退職かなにかで、生活には困らない様子である。もはや二度と働く意思はない。生活費には困らないし、もう苦労はしたくないという印象を受けた。しかし、それで本人は満足しているかのように主張しているようだったが、実際には、仕事がないことをとても悲しんでいるようだった。女の方も生活費には困らない様子だったが、やはりもはや人生に何の目標もない様子だった。いろいろと趣味やお稽古事に励み、あちこちでパーティをしたり、いろいろな講習会や研修に参加している様子だった。この二人とも、すでに若くはなく、残された時間はあまりないようだ。だが、口だけは達者であり、いろいろな情報を入手しており、世界情勢にも詳しい様子だった。それで自分の知識を自慢し、博学振りを示すために、延々としゃべりつづけていた。まず、現在の少子化問題から始まり、現在の日本が結婚難であり、未婚の男女が急増している事を自慢げにしゃべっていた。そして今後はその傾向はますます強まり、未婚の男女が占める比率は高くなるという。その主な原因は、正社員として働く事ができない現在の日本の雇用問題があると言う。非正規労働者は突然解雇されやすく、年齢の上昇と共に、再就職は困難となり、社会保険にも未加入なので、将来への不安があって未婚化が進んでいるという。それを大声でしゃべりまくっていた。しかしそんな事は誰でも知っている。問題はそれよりも、それを他人事としているこの連中の思考パターンである。完全に世間を嘲笑している。こういう連中は、すでに人生を投げ捨て、進歩向上する意欲もなく、超越した気持ちで生活しているのだろうが、それこそがお笑いである。社会問題というものは、自分に直接関係ないことでも、取り組むから意味がある。それをただ嘲笑するネタにするだけなら、まったく何の進歩もない。またこういう連中は、いかに知識が豊富にあっても、何の役にも立たないのである。知識があれば、それを活用し、努力する事にこそ意味がある。それを自分とは無関係として、他人を馬鹿にしているだけなら、そういう人物はそれ以下の存在でしかないのである。もし、自分のことだけを優先するなら、それは単なる私利私欲であり、生物としての細胞のたった一つの繁栄に過ぎない。そんなものは何の意味もなく、ただのできものである。生物としての全体が繁栄しないと意味がない。目糞鼻糞を笑うという事では、未来が開けない。 　

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