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株式日記と経済展望
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真面目で正直だと言う評判の日本人も、団体の一員になると「本音・建前」
を巧みに使い分け、その結果として真実より「損得」を優先する社会を作る
2011年5月7日 土曜日
◆やばいぞ日本(3) - 「正直者が馬鹿を見る」日本社会の仕組みを変える時! 5月6日 北村隆司
http://agora-web.jp/archives/1322165.html
舛添要一氏は「情報をなぜ隠すのか」と題したブログ記事で「危機管理の要諦は情報公開だ」と主張されましたが、この主張には私も異論はありません。然し「指導者個人の力量や権限を上手に使って情報の隠蔽を防ぐ」と言う手法では「面従腹背」を得意とする官僚や大企業の社員に「情報公開」の慣習を植え付ける事は難しいでしょう。永い間の「臭い物には蓋をする」習慣は、説教や命令で治るほど簡単な物ではありません。
この問題の解決の秘策は、「正直者が馬鹿を見る」日本社会の仕組みを変える事に尽きます。
日本独特の「本音・建前」の二本立て社会は、「本音」(他人の考えに影響されない「本心」)を言うと「損」をし、相手方にどのように思われるかを考慮した「建前」が得をする国柄を生み、それが情報隠蔽の温床になっています。
真面目で正直だと言う評判の日本人も、団体の一員になると「本音・建前」を巧みに使い分けるようになり、その結果として真実より「損得」を優先する社会を作って仕舞ったのではないでしょうか?日本人に自殺が多いのも、「本音・建前」と言う「虚実」の使い分けを強いる日本社会の矛盾が一因に思えてなりません。
「正直者が馬鹿を見る社会」を治す具体的手段は沢山あります。
例えば、税番号の創設です。ある統計によると、日本は世界一高い法人税を徴収しながら、対GDP比租税収入は15%前後で、OECD加盟国中最低レベルだと言います。その一因は、国民の税負担が低い事に加え、脱税が異常に多い事が原因だと思われます。じゃじゃ漏れの徴税制度を公正な制度にするには、個人、法人を問わず、すべての経済行為が税番号で認識出来る社会を作る事が必要です。脱税を難しくする事は、日本を正直国家に近付け、合理的なセーフティーネットの設定も可能にします。
次に考えるべきは、年功序列制度の廃止です。年功序列制度は、透明性や合理性に欠ける上司の裁量評価を可能にし、社員の成果を先ず吸い上げて、人事評価と称する「裁量権」を行使して、生産性とは無関係に成果を再分配する不合理な給与制度の支えにもなっています。
日本では勤労所得を「給与(給え与える)」と呼び、ボーナスを「賞与(賞め与える)」と呼ぶため、社員は仕事を二の次にして、上司の顔色を伺う習慣が生まれ、給与の向上には、ゴルフでは禁じられている「ヘッドアップ」が必要条件になったのも、年功序列制度の弊害です。日本の企業社会で異常に残業が多いのも、この制度の副産物です。年功序列制度の廃止は、公正な競争を奨励し、隠蔽と言う組織文化を無くす重要な一歩です。
日本の官僚の情報隠蔽の悪しき慣行の元締めである人事院の廃止も避けて通れません。人事院が情報を公開して処分した官吏はいても、情報隠蔽を理由に処分した例を知りません。
日本では「正直者が馬鹿を見る事件」が多すぎます。「正直と馬鹿とは違う」と言う論議も有ると思いますが、情報の公正を追求する為には、将来的には市場に於ける情報の非対称性も解消する方向に努力をすべきだと思います。
他人の意向で人生が大きく変る日本では、生きると言うより、国や組織に飼われている状態に近く、給与所得者の多くは餌をを求めて、上司に尾を振る毎日だと言うのは言いすぎでしょうか?
「正直者が得をする」透明な社会にするためには、国民が全文でも2710文字しかない憲法第三章を良く読んで、憲法で保障された国民の権利と義務を知った上で、現在の社会の仕組みを一つ一つ変えて行く事が、検察の情報独占で起こる冤罪事件の防止にも役立ち、透明で公正な日本を作る近道です。
(私のコメント)
「株式日記」の読者は会社員が多いのではないかと思うのですが、特に大企業に勤めるサラリーマンは「本音と建前」を巧みに使い分けることを強要されて生きています。私も銀行員として十数年勤めましたが、私自身の本音と周囲との建前社会の摩擦に苦しみ、体を壊して退職しました。会社はとにかく全身全霊を会社のために働くことを強要する。
大学生時代から会社員になった時のカルチャーショックは強烈であり、若さと体力がなければ克服できないだろう。慣れればさほどでもなくなりますが、自由気ままな大学生と会社組織第一主義のサラリーマンでは価値観が180度違ってしまう。大学生時代は「本音」で生きることが出来ましたが、会社員になると「建前」で生きなければならない。
周囲の同僚を見ても、上司の前にいる時とプライベートな時に話すことがまるで正反対の事がよくあります。出来るサラリーマンとは「本音と建前」を巧みに使い分けが出来ることであり、無理難題を言ってくる上司に対してゴマをすり、部下に対してはぼやいて見せる。このようにして上司に対しては絶対の忠誠を尽くすのがサラリーマンであり、一般社会との常識がずれてきてしまう。
当時の銀行業界は、「向こう傷は問わぬ」ことが銀行業界の常識であり、住友銀行のやり方は業界の手本とされた。私自身はこんな事をしていたらいずれは社会から糾弾されることを予感していましたが、バブル崩壊で社会から袋叩きされる結果になった。私自身はそうなる前に退職したので、バブル崩壊後の銀行のことは知らない。しかし銀行の体質は大して変わっていないようだ。
私が銀行に入って3ヶ月もしないうちに、えらいところに就職してしまったと後悔したが、仕事自身よりもサラリーマン社会の慣習にショックを受けた。学生時代に運動部などで上下のけじめの訓練を受けてきていれば比較的慣れますが、とにかく会社の上司は威張り散らして無理難題を言う。憎まれっ子世にはばかるではないですが、憎まれ上司ほど会社では出世するようだ。
北村氏が書いているように、個人としてはまじめで正直な人でも、会社組織に組み込まれると会社に忠誠を尽くし滅私奉公が美徳となり、時には反社会的な事でもする様になってしまう。会社の不祥事が頻発していますが、部下が会社の不正を知っても内部告発することは御法度だ。それは出世をすればするほど会社の不法行為を目にする事になり、個人の良識が問われる。
年功序列社会においては、どんなに有能な人でも、どんなに無能な人でも差が付けられることはなく、一律に昇進していく。もし能力で昇進に差をつけるとなると個人個人がスタンドプレーに走るようになり、足の引っ張り合いで会社が修羅場になってしまうだろう。成果を上げやすい部署に社員が集まり、成果を上げにくい部署には誰もやる人がいなくなる。
欧米の会社のように、会社の仕事そのものがモジュール化されて、外部の人間を登用できれば能力主義での評価も出来るのでしょうが、部下たちの出世意欲も低下して、一部のエリートだけが競争社会を生き残るようになる。だから年功序列も能力主義も一長一短なのですが、日本は年功序列に傾きすぎていて壁に突き当たっている。
年功序列社会では、転職することは御法度であり、生涯一会社に忠誠を尽くすことが求められる。今の中高年サラリーマンは会社に忠実なだけが取り柄の人物であり、出世も能力によるよりも年功によるものだ。東京電力の清水社長もその典型のようなものだろう。能力があって十分にその成果を生かすには独立して仕事を始めることが一番だ。
巨大な会社組織を支えているのは、20代30代の若くて体力と意欲のある社員たちであり、40代50代の中高年社員の多くは使いものにならないお荷物社員であり、そのような社員が多くなれば会社も傾く。日本企業の多くがこのような体質になっており、会社を支える若い社員が少ない。会社としては給料ばかりたくさんとって働かない中高年社員を首にして、若くて働く社員に入れ替えたいところですが、日本では首にする事は難しい。
JALにしても東京電力にしても、いったん潰して新会社にすれば中高年社員を一気に片付けることが出来る。仕事をしない無能な中高年社員ばかりになると欧米企業でも潰れるのであり、アメリカでもGMが潰れた。大会社は潰れないと言う神話がありますが、大企業でもリストラをしないと無能な社長が会社を潰してしまう。大企業は年功序列でも能力主義でも同じで、会社も老朽化が進むと有能な社長でも救えなくなる事が多い。
だから、やる気のある有能な若い人は独立して中小企業から身を立てることが一番の近道だろう。アメリカではこのような人が独立起業してビジネスを始めますが、日本では年功序列神話で独立して起業する人が少ない。会社員にしても公務員にしても定年まで働いているような人は有能でも可能性を放棄した人であり、社会的に見れば損失ではないだろうか? 有能な人は独立して起業すべきなのだ。そうしなければ社会の需要に答えられない。
北村氏が書いているように、「生きると言うより、国や組織に飼われている状態に近く、」と書いているのは正論であり、無能なサラリーマンなら会社にしがみついて生きることも正解ですが、定年退職したとたんにスクラップになってしまう。有能な人材なら若くして起業して、70代80代まで現役で働き続けることが出来ますが、日本では有能で若い人でもなかなか独立起業しようとはしない。だから日本ではビル・ゲイツやスティーブ・ジョブスのような人材が出てこない。
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