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3.11を敗戦、そしていま戦時下にあるということを思っている人が自分以外にどれだけいるかわかりませんが(放射線の被曝線量の限度引き上げなどは、戦時下における人権の制約に等しいもの)、こうした状況で近代国家の「国民」なるものがどのような扱いを受けるのか、やはり“覚悟”をしておいたほうがいいと思いますので、こちらに転載しておきます。3.11以降に起きていることは、以下と同じことだと私は思っています。
『人間の覚悟 (新潮新書)』より抜粋。
私は日本人であることを誇りに思っていますし、日本という国を愛してもいます。
しかし、国家であれ行政であれ、そういうシステムはほとんど信用していません。
敗戦の夏、私は十二歳で平壌(ピョンヤン)の街にいました。その時、唯一の便りだったラジオ放送は、治安は維持されるから市民は軽挙盲動を慎んで市内にとどまれ、と繰り返し放送していました。
私の一家も他の多くの家族と同じようにぼんやりと指示に従い、そのまま残っていたのですが、その間、高級軍人や高級官僚たちとその家族は、家財道具を山のように積み出して、平壌の駅からどんどん列車で南下していたのです。
一般市民は「動くな」といわれておとなしくしていたところ、やがてソ連軍が入ってきて、家は接収され、みな難民収容所のようなところへ押しこめられ、交通は途絶して列車も動かなくなりました。
それ以来、私は、地震や津波が来たりして政府が「動くな」と言ったらすぐ逃げるつもりですし、逆に「逃げろ」と言ったら動くまいと思っています。どれだけ国を愛していても、政治のシステムが民衆を最優先にするとは考えませんし、たとえば新型インフルエンザは心配ない、と言われたら逆だろうと考える。
国家とは常に逆に動くぞ、と反射的に思うようになってしまったのです。(p.156)
一九四五年、夏、日本が敗れた。戦争に負けたとき、旧植民地支配者が受ける苛烈な運命に、私たちはまったく無知だった。
そもそも日本が戦争に敗れる、ということすら想像もつかなかったのだ。
あの第二次世界大戦の末期、私たち日本国民の大部分は、最後まで日本が勝つと信じていた。
ふつうに新聞を読めば、戦局の不利はだれの目にもあきらかだったはずだ。それにもかかわらず、私たちには現実をまっすぐ見る力がなかったのである。米軍が沖縄までやってきているというのに、私たちは敗戦の予測さえついていなかった。
これがイギリスやフランスなど植民地経営に歴史のある国の国民なら、自国が敗れる前に、さっさと尻に帆をかけて逃げ帰っていただろう。
しかし、私たち日本人にはまったく現実が見えていなかったのだ。当時、ラジオ放送は絶大な信頼感をもたれていたメディアだった。
敗戦後しばらく、ラジオは連日のように、
「治安は維持される。日本人市民はそのまま現地にとどまるように」
と、アナウンスしていた。私たちはそれを素直に受け取って、ソ連軍が進駐してくるのを、ただ呆然と眺めていただけだった。
実際には敗戦の少し前から、高級軍人や官僚の家族たちあh、平壌の駅から相当な荷物をたずさえて、続々と南下していたのである。
ソ連軍の戦闘部隊が進駐してからのしばらくは、口にはだせないような事態が日本人居留民をおそった。私の母も、その混乱のなかで残念な死に方をした。
私たちは二重に裏切られたのである。日本は必ず勝つといわれてそれを信じ、現地にとどまれといわれて脱出までの過酷な日々を甘受した。
少年期のその体験にもかかわらず、いまだに私自身、いろんな権威に甘える気持ちが抜けきらないのだ。
愛国心は、だれにでもある。共産主義下のソ連体制を徹底的に批判しつづけたソルジェニーツィンも、異国に亡命した後でさえロシアを愛する感情を隠そうとはしなかった。
どんな人でも、自分の母国を愛し、故郷を懐かしむ気持ちはあるものだ。しかし、国を愛するということと、国家を信用するということとは別である。
私はこの日本という国と、民族と、その文化を愛している。しかし、国が国民のために存在しているとは思わない。国が私たちを最後まで守ってくれるとも思わない。
国家は国民のために存在してほしい。だが、国家は国家のために存在しているのである。 私の覚悟したいことの一つはそういうことだ。(p.8)
しかし、そのことと国に頼ることとは別問題である。国が最後まで私たちを守ってくれるなどとは思わないことだ。
国を愛し、国に保護されてはいるが、最後まで国が国民を守ってくれる、などと思ってはいけない。国に頼らない、という覚悟をきめる必要があるのである。(p.8)
国民としての義務をはたしつつ、国によりかからない覚悟。最後のところで国は私たちを守ってくれない、と「諦める」ことこそ、私たちがいま覚悟しなければならないことの一つだと思うのだ。(p.9)
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