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ラジオはテレビよりインターネットに近いのかもしれない
2008年05月04日 12:00
興味関心の沸く番組をあまり見つけられなくなったことや、生活習慣(主に時間帯)の変化、情報ソースの大切さを知るようになってから、当方(不破)はテレビを見る機会が少なくなった。見てもせいぜいニュース番組や、とりわけ気になった映画くらい。逆に増えてきたのがラジオを聴く時間。注力する器官が「耳」だけなので、料理や洗濯などの家事をしながらでも「ながら視聴」がしやすいのが最大の利点だ。テレビを観る時間とラジオを聴く時間が逆転した日常を過ごしている中で気がついたのが、「ラジオって結構インターネットに近いのでは? 少なくともテレビよりは」ということ。
インターネットが情報メディア、ツールとして多くの人に受け入れられている理由はいくつもあるが、そのメリットの一つが「インタラクティブ性」。日本語に訳すると「双方向」。メディア関係の言葉で置き換えれば、本来の受け手と送り手がお互いに情報をやり取りするスタイル。イメージしやすい状況で例えれば、二人の人間による会話(対話)は「インタラクティブ」となり、朝会の校長先生や社長による「朝のお言葉」は反意語の「ワンウェイ(One-Way、一方(方)向)」となる。
インタラクティブとワンウェイ
ワンウェイ、インタラクティブそれぞれに必要性・メリットはある。単純な報道やプレスリリースにインタラクティブ性を取り入れたら「告知」ではなくなってしまう。読みやすさ、分かりやすさとインタラクティブ性は別物。
一方でインタラクティブ性が高ければ高いほど、利用者側は自分自身がその内容(コンテンツ)に介在し、一体感・臨場感を得ることができる。それは自分自身も「行動」して「参加」しているからに他ならない。「全体の構成要素」に、自分の意思や行動が反映されているからだ。
インタラクティブとワンウェイ。この観点で、テレビ・インターネット・ラジオを見直してみるとどうだろうか。
●インターネット:双方向性と一方向、選択すらできる
まずインターネット。利用者は自由にサイトや掲示板の書き込みを閲覧できる。見るだけ・読みだけなら「ワンウェイ」の媒体と同じく「情報の受信」のみでしかない。しかし同時に、サイト上のアンケートに答えたり、掲示板に書き込みをしたり、ブログにコメントを寄せることができる。メールアドレスを探して電子メールで意見を送ることすら可能だ。チャットに参加すれば、普通の会話同様に「リアルタイムなインタラクティブ」経験すら不可能ではない。
さらに自分でブログやサイトを立ち上げれば、自身から不特定多数に情報発信をすることすらできてしまう。自分の立ち位置を「情報の受信」だけでなく「情報の発信」にも置く事ができるわけだ。しかも相手は隣近所の人だけではない。日本中、世界中の人に対して、だ。メディアというカテゴリーにおいて、これほどインタラクティブ性の高いものは、いまだかつて無かっただろう。
また、利用者側が「ワンウェイ」と「インタラクティブ」を自由に選択できるのもメリット。利用者側で情報発信が面倒くさいのなら「聞き手」に徹するという選択肢を選べば、インターネットはワンウェイメディアにもなる。
インターネットとテレビ、ラジオの「インタラクティブ」性
●テレビ:ワンウェイの代表メディア
続いてテレビ。マスメディア(定義上は「特定少数の発信者から、不特定多数の受け手へ向けての情報伝達手段」)の代表格にあるだけに、一方向性が極めて高い。視聴者はテレビ放送局から電波を介して送られてくる番組を、テレビ受信機を使って受け止めるだけしかできない。出演しているタレントの素敵なポーズに惚れてテレビに向かって声援を送っても相手に届くはずもなく、野球中継でお気に入りのチームが負けても監督に叱咤激励をしたところで何かの反応があるわけは無い。
定期番組の中には視聴者からの手紙を受け付けて最後に紹介したり、読者コーナーで披露して一部番組の構成に取り入れるところもあるが、それらはオマケみたいなもの。メインはテレビ局からの「一方的な情報配信」。視聴者はあくまでも「聞き手」でしかない。
例外的なものとして、例えばみのもんた氏の「午後は○○おもいッきりテレビ」などは、対象が特定少数ではあるものの視聴者と直に対話をし、それが番組のメインとして構成されている。「不特定多数」ではないものの、視聴者全員が「特定少数」になるかもしれない、あるいは同じような立場だと認識し、親近感、あるいは擬似的なインタラクティブ性を得る事ができる。同氏の番組が長期間人気を得続けているのも、この点が重要なのかもしれない。
●ラジオ:基本はワンウェイだが……
そしてラジオ。こちらも公共性やメディアの仕組みの上では「テレビ」と変わらない。ただしテレビより規模が小さく小回りが効きやすいこと、全国ネット以外の放送局では地域性が強いこと、そしてなにより昔から視聴者を「リスナー」と呼び大切に扱い、機会あるごとに番組に参加させる意図があることから、テレビよりもはるかに「インタラクティブ性」が高い。
これは元々ラジオが「音声しか配信できない」というメディア上の制限から、いかに魅力をプラスしていこうかという工夫によるもの。そして、逆に(冒頭で触れたように)「音声のみの配信だから、どんな場でも利用される可能性がある」というメリットを最大限に活かすためのもの。
NHKなどの公共性のきわめて高い放送局ならともかく、それ以外の民間放送局のラジオ番組で、視聴者が介在しない番組などほとんどない。ためしに1時間ほど連続して耳を傾けれてみると良いだろう。実に多くの時間を割いて、読者参加型の番組・放送・コーナーが行われているかが分かるはずだ。
自分が番組に参加し、あるいは参加できる可能性があり、または参加しているような気分になれる。「インタラクティブ」における要点から見た場合、ラジオははるかにテレビを上回っている。
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テレビ業界では「インターネットはテレビのシェアを奪うもの」として敵視する一方で、インターネットの「インタラクティブ」という魅力がいかに大きいものかを自認しつつある。そして(自分達の「ワンウェイ・メディア」という立ち位置を維持しながら)部分的にインタラクティブ性を高める工夫をしてみたり、インターネットとの連動性を高めてテレビでは出来ない部分を補完させる努力をしている。しかし【動画投稿サイトVSテレビ! 主要メディアの立ち位置変化を年齢順で見てみる】などの調査結果を見る限り、インターネットという新しいメディアで、これまでになかった「広域的なインタラクティブ性のあるメディアの楽しさ」を知ってしまったユーザーの心を取り戻すのは難しそうだ。また「規模が大きいがゆえに小回りが利かない」といった、存在そのものの必然性からくるウィークポイントから逃れるのは、一筋縄ではいかないようにも見える。
「インタラクティブ」という点では
ラジオはテレビよりはるかに
インターネットに近い。
その特性を活かせれば、
ラジオの立ち位置は大きく変わる。番組の質を高めて、インターネットとは別の土俵で立ち向かうという手もある。しかし制作費や制作サイドのモチベーションなどの事情から、現状ではむしろ逆の方向に向かっているのが実情。
一方ラジオは、インターネットが広まる以前から、ある一定の「インタラクティブ」性を持ったメディアとして、実はテレビ以上に可能性を秘めている。しかも経験も豊富。現状ではテレビ以上に経営が厳しく、新しい事への挑戦が難しい立場にあるが、アイディア次第では独自に、あるいはインターネットとの連携で非常に楽しい、興味深い展開が開けてくるかもしれない。個人ベース、または小規模グループで気軽に開局できる「ネットラジオ」もその可能性の一つとして注目すべき対象。
メディア上の「インタラクティブ」性は、「禁断の果実」と表現できるかもしれない。その果実の味を知ってしまった視聴者に、どのような対処をしていくのか。テレビもラジオも、「これまでの」視聴者性向ではなく「今現在の」、そして「これからの」視聴者の求めているものを考える必要があるのだろう。
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