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オカルト考察レポート
No.1
要するにオカルトって何なのさ
オカルトの基礎
人間はスタンドアロン
テレビのスイッチ
■ 要するにオカルトって何なのさ
一般社会において「オカルト」という言葉はしばしば「ホラー」と同じ語彙で用いられることがある。一般社会では考えられないような猟奇現象、死者の復活、地獄の呼び声。確かに映画や小説などが読者に伝えるホラーのイメージはオカルトのそれを臭わせている。
しかし最近になってアニメやゲームなどのエンターテイメントが普及するに連れ、オカルトに対するライトなイメージが次第に広がってきているようだ。19世紀末のあのゴールデンドーン等の魔術結社台頭に続く第三次オカルトブームとも言われている程である。
何故こんなにオカルトがもてはやされているのだろうか。それはおそらく、より個人に近づいたメディアの浸透に答えはあると考えられるだろう。オカルトは世界観に説得力を持たせる格好の材料なのだ。物語が単に空想の世界だけに留まらず、現実の世界とリンクするのである。メディアは人間と想像力と神秘的世界をお互いに強く結びつける作用をするというわけだ。
しかし一口に「オカルト」と言ってもピンからキリまで範疇に含まれる現状に至っては、ここで一度きちんとその定義を定めておく必要があるだろう。しかしかといって小さな枠にはめ込んで狭義に集約してしまうのは避けたいところである。よってここでは広辞苑にならい「神秘的なこと」を原則とし、特に「信仰を理論体系として扱うこと」に該当するものとして定義する。
またこれ以降様々な用語等が登場する事になるが、それらの定義については拙著『オカルト用語の基礎知識』において参考されたい。
■ オカルトの基礎
人類の歴史において宗教が信仰の表の顔だとすれば、オカルトはいわば裏の顔である。あるいはその逆とも言えるかも知れない。宗教の成り立ちとは自然を超越した存在の驚異を感じていた人間たちが行った祈祷が始まりだと言われている。そしてある時宗教が体制になったとき祈祷は呪術的儀式になり、驚異を取り除く神の姿は神話となって形を残した。この頃から信仰は宗教とオカルトという2つの側面を持つようになり、それぞれが独立して発展していくことになったのだ。
また生命と死という問題は何よりも重んじられて研究されてきた。人間が持つ魂の永遠性を信じる神話は世界中にみることができるし、そして哲学者の多くは、どんなに栄華を極めた王もどんなに全てを知り尽くした賢者も、死という運命的終末を逃れることは出来なかったと考えている。次第に祈祷は発展し呪術となった課程において死に対する恐怖を取り除く目的で複雑化していき、ついには信仰を離れ数々の化学的成果と異教的な哲学へと発展していったのである。当然ながらそれは邪悪として法律によって禁止され罰せられるようになっていった。とは言え民間において、或いは支配者の間でさえ呪術の効力は長い間依然として信じられ、そして秘密はごく一部の人間のものとなり、深く闇の中に沈んだまま後世に伝えられていったのである。
■ 人間はスタンドアロン
人間は一人で生まれ一人で死んでいく。どんなに解り合えた友人や両親、恋人たちでさえも相手のことを完全に理解する事は不可能であり、それゆえ人間は生まれた瞬間から孤独であるとも言われる。
しかしその思考活動において我々は数多くの共通点を持っていることも事実である。時として初めて会った者同士で感動や感慨を共有できたり、言葉という曖昧なメディアで感情や思考がほぼ完全に伝達できたりするのは一体何故なのだろうか。本来スタンドアロンの環境の中一人ひとり別々に生きて成長していく課程において、何が人間たちの思考を結びつけているのだろうか?
人間の意識にはそれを形成する設計図、遺伝子の記憶とも言われるようなものが備わっていると考えられている。かの心理学者ユングはこれを「元型」と呼ばれる集団的無意識の核で説明した。これは全ての人間の中の根底に存在するもので、さながら万有引力の様に個々を引き合わせているものであり、理性に左右されない直感的イメージの源でもある。つまり大陸を異にし文化を異にしながらも共通のイメージを我々は持っているのである。例として、赤色に危険を覚えるのもこれの一種だろう。
しかしながら互いにリンクしあってるとはいえ、それは無意識のさらに下層の部分で結びついているに過ぎない。普通の人間が意図的にリンクをたどって集団的無意識に働きかけようとしても容易にはいかない。魔術師や呪術師が行うような瞑想が必要なのである。
■ テレビのスイッチ
今日私たちはスイッチを入れるだけでテレビを楽しむことが出来る。リモコンを操作するだけでエアコンで快適な室温にすることが出来る。コンセントを繋いで電源を入れるだけ。便利な世の中である。我々がその内部構造を知る必要はないのだ。
だがその仕組みが分かれば更に便利さが増す。これは人間自身に対しても同じ事であり、1世紀前までは「人生50年」と言われていた寿命も現代では平均80歳にまで延びている。科学と医学の発展によるものであることは言うまでもない。しかし中世まではその代わりをオカルトが果たしていたのである。占いによって未来を知ることや、呪いによって人が病に倒れること、薬草によってそれを治療すること。それはごくありふれた感覚であった。
それらは魔術的相互作用を持つと信じられていた。剣で斬りつけられた傷は、その剣に薬を塗ることで治るといわれていたのである。このような魔術的リンクはイメージを代表して単純な形に表されたもの、すなわち象徴に集約することが出来た。魔術師は象徴をスイッチにして力を引き出すことに成功したのである。
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