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週刊・上杉隆【第154回】 2010年12月16日
ウィキリークスのアサーンジ氏に相次ぐ“思考停止”の報道――日本のテレビ・新聞は本当に大丈夫か
http://diamond.jp/articles/-/10485
「強姦したといわれている人間だから――」(TBSテレビ「みのものたの朝ズバッ!」)
ウィキリークスの創設者であるジュリアン・アサーンジが逮捕されて一週間。日本のテレビ番組などでは、いまだにキャスターやコメンテーターによるこの種の発言が散見される。果たして、日本の放送局のコンプライアンスは大丈夫なのか。
なぜなら、これらの発言は、名誉毀損どころか人権侵害の可能性すらあるからだ。現在、アサーンジは有罪判決も受けていないし、釈放を待っている身である。さらに、そもそもこの事件に関しては冤罪の可能性が圧倒的に高いのだ。
詳細は今週発売の「週刊文春」に譲るとして、たとえばメディアリテラシーの高い本コラムの読者ならば、連日事件の詳細を伝えている海外メディアの記事を1、2本読めばすぐに理解されることだろう。
■疑問が多いアサーンジに対する“容疑” 日本メディアの報道は大丈夫か
そもそもジュリアン・アサーンジが犯した「強姦罪」とは、性行為の際にコンドームをつけなかった、セックスの最中に女性に体重をかけ過ぎた程度の4点である。
これを「レイプ」と呼ぶのは相当困難だ。英国の司法当局が保釈を認めたのも当然といえるのではないか(現在、スウェーデン検察当局が抗告中)。
日本のテレビ・新聞は本当に大丈夫だろうか。BPO提訴程度で済めばいいが、仮にアサーンジ本人に海外で訴訟でも起こされたらひとたまりもない。きっと莫大な賠償金を背負うことになるに違いない。
こういう時こそ、テレビ局などのコンプライアンス室がフル稼働すべきなのだが、海老蔵狼藉事件にかかりっきりで、機能していない。
さて、ほとんど報道機関の呈をなしていない日本の新聞・テレビは放って置いて、ウィキリークスをめぐる問題はますます世界にとって最重要課題になっている。
米国議会はスパイ防止法の改正を視野にアサーンジを捕まえ、ウィキリークスを取り締まろうと躍起になっている。
その狙いは、25万件にも及ぶ米国務省の外交公電を公開されてしまうことのみではない。イラク戦争、アフガニスタン戦争、さらには湾岸戦争、ベトナム戦争にまで遡る米国の「帝国主義政策」が白日の下に晒されることを何よりも恐れているのだ。
だが、米政府は日々、窮地に陥っている。
なぜなら、こうした米政府の動きに敵対する勢力は、いまやウィキリークスや世界中のハッカーだけではなく、伝統的なジャーナリズム、つまり、全世界の新聞・テレビ(記者クラブ制のある日本だけは除く)が、ウィキリークス支持を打ち出し始めているからだ。
■世界中で政府とジャーナリズムが対決 あのマイケル・ムーア監督もWLを支援
たとえば、オーストラリアの新聞・テレビの連合体は、各社の最高責任者名で、「ウィキリークスはわれわれと同じメディアであり、その理解に欠けるジラード豪首相に対して断固抗議する」との公開質問状を送った。
また、コロンビア大学ジャーナリズム学科の教授陣も、「ウィキリークスは合衆国憲法修正第一条に照らして、メディアと認められるべきである」との声明を出している。
http://www.poynter.org/latest-news/romenesko/110885/columbia-j-school-staff-wikileaks-prosecution-sets-dangerous-precedent/
このように、各国のジャーナリストたちが、具体的な方法でアサーンジとウィキリークス支援に回っている。
さらに、ウィキリークスの動きに関して、おそらく日本でもっとも丁寧、かつ正確なフォローをしている「ディープスロート」(@gloomynews) 氏のツイッターによれば、政府がメディアの上をいく逆の事例もみられるようだ。
〈ブラジルのルラ大統領が最新演説でWikiLeaksを擁護。ブラジルのマスコミがWikiLeaksと編集主幹ジュリアン・アサンジを擁護しないことについて不満も。「表現の自由に対する弾圧に抗議しないのか」と〉
http://twitter.com/gloomynews/status/12928641587482624
同じ「ディープスロート」氏のツイッターでは、各国の著名人たちがジュリアン・アサーンジへの金銭的な支持に回っていることも伝えている。
〈ジュリアン・アサンジ氏の保釈審問を控え、マイケル・ムーアが公式サイトで保釈金2万ドルを弁護士に渡し、アサンジ氏及びWikiLeaks全力支援宣言。暴露文書サイトを維持するために自分のドメイン名、サーバー他全て差し出すと〉
http://twitter.com/gloomynews/status/14664924038955008
さらには、「デーリーテレグラフ」紙によれば、英国のアサーンジ裁判で、法廷内の記者たちがツイッターによってつぶやくことも許可されたという。それは歴史的な快挙だと報じている。
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/wikileaks/8202262/WikiLeaks-Julian-Assange-bail-hearing-makes-legal-history-with-Twitter-ruling.html
このように今、アサーンジの逮捕をめぐって、世界中で「表現の自由」のあり方についての論争が沸き起こっている。
■唯我独尊、ステレオタイプな報道を再生産する日本のメディア
ところが、案の定というべきか、ひとり日本だけが完全に取り残された格好になっている。
日本のメディアは、アサーンジの逮捕事案を掘り下げるわけでもなく、簡単に「ウィキリークスはテロ組織、アサーンジは強姦魔」という米国政府のプロパガンダに完全にスピンコントロールされてしまっている。
さらに、豪州や米国のジャーナリストたちのように、「ウィキリークスはわれわれの仲間であるのでその存在を認めろ」と政府に向かって抗議するのではなく、むしろ政府と一緒になってアサーンジを批判している始末だ。
だが、それも無理もない。所詮、日本の新聞・テレビは、思考を停止させた「記者クラブ」根性が染み付いてしまっているのだ。
それは、ウィキリークスやアサーンジなどの新しい力に対する恐れからくるものにちがいない。
だからこそ、同じジャーナリスト仲間として政府・権力と戦う道を選ぶのではなく、逆に仲間を排除し、その存在を否定しようと躍起になっているのだ。
その結果が、アサーンジへの名誉毀損、人権侵害発言ともいえるようなお粗末な報道につながるっているのかもしれない。
保釈されたアサーンジが、日本のテレビ・新聞報道に気づかないことを祈るばかりである。
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