http://www.asyura2.com/10/hihyo11/msg/225.html
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メディアと世論誘導@日本固有の世論形成の仕組み
http://eritokyo.jp/independent/aoyama-mediaron1.htm
●日本の大メデイアはガラパゴス症候群で既得権益を謳歌してきた!
日本固有の仕組みにはいろいろなものがある。現在、これをガラパゴス化と呼んでいるが、メディアと国民世論との関係も、多分にガラパゴス化の傾向がある。
◆ガラパゴス化(Galapagos Syndrome) 生物の世界で言うガラパゴス諸島における現象のように、文化・制度・技術・サービスなどが日本(の市場)において独自の進化を遂げ、世界標準から掛け離れてしまう現象のことを指す。転じて、日本に限らず世界標準からかけ離れた市場を指す場合もある。 参照:Wikipedia |
日本の大メディアにはクロスオーナーシップ制度が適用されていない。この制度は大新聞とテレビ局の資本提携を禁止するもので、欧米の主要先進諸国では当たり前のこととなっているが、日本では読売新聞と日本テレビ、朝日新聞とテレビ朝日、毎日新聞とTBS、産経新聞とフジテレビ、日経新聞とテレビ東京というように強固に資本、人材、情報共有がなされている。
先進諸国には電波オークション制度があり、希少な公共資源である電波の割り当ては、通常オークションにかけられ最も高い額で入札したテレビ局が落札している。これにより膨大な電波使用料が国家に税金とは別に入るが、日本にはこの制度がない。
その結果、テレビ局が国家に払う「電波使用料」は売上高のわずか0.14%しかないという調査報告がある。欧米では、電波オークション収入が年平均約2000億〜5000億円に上るケースもあり国の大きな税収源になっているが、日本では年間3兆円の売り上げがありながら、38億円の電波利用料しか払っていないという報告もある。
このように、日本に新聞テレビは多くの既得権に守られ欧米に比べ暴利をむさぼってきたと言える。しかし、問題は暴利だけでない。大メディアの巨大化が国民の世論形成に甚大な影響、被害を与えているのである。
※記者クラブ制度、クロスオーナシップ制度、電波オークションについては別途詳述する。
●国民の民度を計るひとつの重要な物差し
国民の民度を計るひとつの重要な物差しとして米国の社会学者シェリー・アーンシュタインが提案している「参加の梯子」がある。
図1は、そのアーン・シュタインの「8段階の梯子」を私なりに少々手直しし、大学の講義(公共政策論など)で使っているものだ。
8 | 市民による自主管理 | Citizen Control | 市民権利としての参加・ 市民権力の段階 Degrees of Citizen Power |
↑ | |||
7 | 部分的な権限委譲 | Delegated Power | |
↑ | |||
6 | 官民による共同作業 | Partnership | |
↑ | |||
5 | 形式的な参加機会の増加 | Placation | 形式参加の段階 Degrees of Tokenism |
↑ | |||
4 | 形式的な意見聴取 | Consultation | |
↑ | |||
3 | 一方的な情報提供 | Informing | |
↑ | |||
2 | 不満をそらす操作 | Therapy | 非参加・実質的な 市民無視 Nonparticipation |
↑ | |||
1 | 情報操作による世論誘導 | Manipulation |
原典:シェリー・アーンシュタイン(米国の社会学者)、青山修正版
日本の政治状況を見ていると、「政」「官」「業」「学」「報」のペンタゴン(5角形)、すなわち政治(家)、官僚(機構)、業界・財界、(御用)学者そして報道(機関)が癒着、連携し、一方的な情報を国民に提供することで世論を操作し、自分たちの都合の良い特定の方向に世論を誘導する現実が見てとれる。
実際、政府・与党のいうなれば、”情報操作による世論誘導”に大マスコミが積極的に加担しているとしか思えない状況が続いていると思えてならない。
その意味で、図2にあるように、現代社会では「政」「官」「業」癒着の利権配分のトライアングルから「政」「官」「業」「学」「報」癒着による既得権益の確保のペンタゴン(5角形)へと日本社会の利権の構造が変貌していると思える。
図2 「政」「官」「業」から「政」「官」「業」「学」「報」のペンタゴンへ
メディアと世論誘導A異常に巨大な日本の新聞発行部数
http://eritokyo.jp/independent/aoyama-mediaron2.htm
●日本の大メディアは欧米に比べ桁違いに巨大である!
日本社会には大小、全国、地方で多くの新聞社がある。
周知のようにわが国では表1及び表2に示すように、「新聞」メディアが全国、地方ともに異常なほどの規模のシェアをもっている。
ここでの問題は、全国紙を例にとると発行部数が米国より一桁大きいことだ。
米国は人口規模で日本の3倍弱ある。しかし、米国の著名な新聞の発行部数はニューヨークタイズムであっても読売新聞の発行部数の1/10程度、英国のガーディアンは読売新聞の発行部数の1/25程度と非常に少ない。
表1のデータはかなり古いものだが、米国のニューヨークタイムズを例にとると、現在の発行部数は約110万部であるから、表1の発行部数とそれほど大きくは違わない。また英国のガーディアンの現在の発行部数は約40万部であるから同様に大きく違わない。
表1 世界の主要新聞発行部数比較
新聞名 | 推定発行部数 出典1) | 推定発行部数 出典2) | |
1 | 読売新聞 | 1016万部 | 10,044,990 |
2 | 朝日新聞 | 826万部 | 8,241,781 |
3 | 毎日新聞 | 394万部 | 3,931,178 |
4 | 日本経済新聞 | 296万部 | 2,820,347 |
中日新聞 | 2,747,683 | ||
サンケイ新聞 | 2,058,363 | ||
5 | USAトゥデー(米) | 167万部 | |
6 | 北海道新聞 | 120万部 | 1,233,170 |
7 | ニューヨークタイムズ(米) | 107万部 | |
西日本新聞 | 846,566 | ||
8 | ワシントンポスト | 78万部 | |
静岡新聞 | 738,599 | ||
9 | ザ・タイムズ(英) | 73万部 | |
中国新聞 | 721,174 | ||
東京新聞 | 613,099 | ||
10 | 神戸新聞 | 52万部 | 560,175 |
河北新報 | 505,437 | ||
京都新聞 | 503,506 | ||
新潟日報 | 498,743 | ||
信濃毎日新聞 | 476,966 | ||
11 | ガーディアン(英) | 39万部 | |
12 | ル・フィガロ(仏) | 38万部 | |
13 | ル・モンド(仏) | 37万部 | |
14 | ディー・ウェルト(独) | 30万部 |
外国紙は1996年・日本紙は1997年の調査
2)都道府県別新聞発行部数 2003年1−6月「社団法人ABC協会」「社団法人日本新聞協会」調べ
●地方紙も同様に巨大である!
地方紙の場合はどうだろうか?
日本の地方紙の発行部数でも、たとえば中日新聞は270万部、北海道新聞は120万部であり、米国を代表するニューヨークタイムズより発行部数が多い。
中日新聞の発行部数は、地方紙では突出しているが、北海道新聞、西日本新聞、静岡新聞、中国新聞、神戸新聞、河北新聞、京都新聞、新潟日報、信濃毎日新聞といった地方新聞でも英国を代表するガーディアンやフランスを代表するル・フィガロ、ル・モンドよりも発行部数が多いのである。
表2 主要地方新聞と世界主要紙の発行部数比較
新聞名 | 推定発行部数 出典1) | 推定発行部数 出典2) |
中日新聞 | 2,747,683 | |
USAトゥデー(米) | 167万部 | |
北海道新聞 | 120万部 | 1,233,170 |
ニューヨークタイムズ(米) | 107万部 | |
西日本新聞 | 846,566 | |
ワシントンポスト | 78万部 | |
静岡新聞 | 738,599 | |
ザ・タイムズ(英) | 73万部 | |
中国新聞 | 721,174 | |
東京新聞 | 613,099 | |
神戸新聞 | 52万部 | 560,175 |
河北新報 | 505,437 | |
京都新聞 | 503,506 | |
新潟日報 | 498,743 | |
信濃毎日新聞 | 476,966 | |
ガーディアン(英) | 39万部 | |
ル・フィガロ(仏) | 38万部 | |
ル・モンド(仏) | 37万部 | |
ディー・ウェルト(独) | 30万部 |
1)『週刊金曜日』−1997年10月17日号・黒薮哲哉
外国紙は1996年・日本紙は1997年の調査
2)都道府県別新聞発行部数 2003年1−6月「社団法人ABC協会」「社団法人日本新聞協会」調べ
●新聞の発行部数と世論形成
かくも日本の新聞の発行部数が多いということは、何を帰結するであろうか?
容易に分かることは、日本では新聞メディアが毎日くりだす膨大な量の記事によって一大「世論」が形成されることである。これは日常的によくあることであり検証可能なことでもある。
事実、新聞やテレビの大メディアは、同一論調の紙面やニュース番組を”護送船団”的に、連日大洪水のように繰り出している。そして、連日繰り出したその後に、いわゆる世論調査を行っている。世論調査の結果は、新聞の紙面やニュース番組の論調にほぼ従っているのである。
それは言うまでもなく、新聞記事やテレビのニュースの内容が間違ったり、逆に論調が同一だった場合、日本の津々浦々まで間違いや同一論調が行き渡ることを意味し、国民の圧倒的多くはそれらの論調の影響を受けるということである。
このように、日本社会にあっては、国民の「世論」の圧倒的多くは、圧倒的多くの発行部数や視聴率をもつ新聞や全国ネットのテレビ報道によって形成されているのである。
したがって、もし、誤報はもとより大部分の新聞の論調が同じだった場合、日本全体の「世論」はそれら大メディアの論調に大きな影響を受ける。
これを逆説すれば、これは大メディアが”護送船団化”すれば、また大メディアと政府や政党、司法権力が暗黙のうちに連携すれば、いとも簡単に「情報操作による世論誘導」が行えることを意味する。
しかも、メディア側の”護送船団的論調”を一段と加速させているのが、「記者クラブ」の存在である。この記者クラブも、日本固有のものである。
記者クラブが存在することにより、新聞、テレビなどの大メディアは足を使った取材を怠り、国から市町村まで行政、司法(検察庁など)、業界(経団連など)による一方的な記者レク発表内容をろくに吟味することなく記事化するのである。これも日常的によく見ることである。
かくして日本社会では、国、自治体などの行政機関や検察機関の一方的な大メディアへの情報提供によって、国民が誘導され、ゆがんだ世論が形成されることとなるのである。
こうした傾向は近年とみに加速化している。
メディアと世論誘導B大メディアの経営悪化とコンテンツ劣化
http://eritokyo.jp/independent/aoyama-col12807.htm
前号で指摘したように、日本の新聞発行部数は異常に巨大である。読売新聞の発行部数は1000万部を超えているが、米国のニューヨークタイムズは100万前後部、英国のザ・タイムズは70万部前後に過ぎない。
だが、ここ数年、日本の新聞発行部数は凋落の一途をたどりつつある。
●大メディア(新聞)の経営悪化
ここ数年、朝日新聞の発行部数が800万部を切りつつあるなど、どの新聞社も発行部数が減少している。原因は広告収入の減少、とくにリーマンショック以降の急激な広告収入が減少などが指摘できるが、その他として若者のインターネットなどICTを使った新たなメディア重視などによる新聞離れも大きな要因となっている。
下は1999年から2009年までの10年間における新聞の発行部数である。グラフでは、@一般新聞、Aスポーツ新聞、B総部数の減少率の推移が分かるよう示している。
図3 日本における新聞発行部数
出典:日本新聞協会の資料及び
http://d.hatena.ne.jp/yuichi0613/20100121/1264033041
上のグラフから分かるように、新聞の総部数は2004年以降単調減少しており、2007年以降かなり急激に部数が減少していることが分かる。
その結果、新聞社の経営状態も2009年3月期実績で見ると何も、産経だけでなく朝日、毎日などの大手新聞社も新聞単独で赤字となっている。
以下に朝日、産経、毎日の各新聞社の2004年3月期から2009年3月期まで6年間の売上高、営業利益、経常利益、純利益を示す。
図4 朝日新聞社(単体)(単位:億円/売上高のみ10億円)
出典:http://www.garbagenews.net/archives/824612.html
図5 産業経済新聞社(単体)(単位:億円/売上高のみ10億円)
出典:http://www.garbagenews.net/archives/824612.html
図6 毎日新聞社(単体)(単位:億円/売上高のみ10億円)
出典:http://www.garbagenews.net/archives/824612.html
朝日新聞社を例にとってより細かく見ると、以下のグラフは連結営業成績前年期比である。グラフより分かるように、売り上げだけでなく、営業利益、経常利益、当期純利益いずれも前年比で大幅ダウンしていることが分かる。
図7 朝日新聞の連結営業成績前年期比
出典:朝日新聞の決算短信から「おサイフ事情」をチェックしてみる 2009年5月23日
朝日新聞社は2010年3月期連結決算で、景気低迷で企業からの広告収入の落ち込みが響き、本業のもうけを示す営業利益が40億円の赤字(前期は34億円の黒字)に転落した。営業赤字は、連結決算の公表を始めた00年3月期以降で初めてである。
さらに税引き後利益も33億円の赤字(前期は139億円の赤字)と、2期連続の赤字となった。売上高は、連結対象から子会社が外れた影響などで前期比12・5%減の4702億円となった。
これらの経営悪化に対し、大新聞各社は勧奨退職などによる従業員の大幅削減、夕刊の廃止、関連雑誌の廃止、販売網の一層の合理化、オンライン新聞の創刊などがなされているが、決定打とはならず部数の減少、経営悪化には歯止めがかかっていないのが現実である。
●大メディア(テレビキー局)の経営悪化
一方、大テレビ局も、経営の根幹をなす広告収入の大幅な落ち込みによりテレビ単独事業では息絶え絶えの状態にある。
下はテレビキー各局の連結経営業績の2009年度3月期における前年度比データである。日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京の民放キー局は営業利益、経常利益、当期純利益いずれも前年比で大幅ダウンしていることが分かる。
テレビキー局の連結決算業績(前年比)
出典:主要テレビ局銘柄の期末決算をグラフ化してみる……(1)スポット広告とタイム広告、業績概略
下の記事は、地上波放送のテレビ・ラジオ局194社のうち47・4%に相当する92社が 2008年9月中間の単体決算で経常赤字になったことを明らかにしている。民放連会長の広瀬氏はは「放送局 の経営状況は民放連の58年の歴史で最悪だ」と述べている。
◆放送局の経営状況「史上最悪」/民放連会長 2009/01/15 17:01 日本民間放送連盟の広瀬道貞会長は15日の記者会見で、加盟する 地上波放送のテレビ・ラジオ局194社のうち47・4%に相当する92社が 2008年9月中間の単体決算で経常赤字になったと明らかにし、「放送局 の経営状況は民放連の58年の歴史で最悪だ」と述べた。 127社のテレビ局は43・3%にあたる55社が赤字だった。地上デジタル 放送への移行に伴う投資負担や、世界同時不況の影響などが要因としている。 広瀬会長は、09年3月期決算の見通しについても「上期に比べて悪い 材料が多く、数字はさらに悪化する心配が強い」と述べた。 出典:四国新聞 |
●大メディアのコンテンツ劣化
以上は経営状況だが、もうひとつ重要なことは、大メディアの新聞記事やテレビニュースの質はいかんともしがたいほど劣化していることだ。
大メディアは、新聞、テレビともに貧すれば鈍するのたとえの通り、経営的の凋落と比例するかのようにコンテンツ、すなわち社説、記事、報道ニュース、番組の劣化が顕在化している。
ここで改めて言うまでもなく、政治関連の新聞記事、ニュース、報道番組、情報番組は、事実報道、「社会の木鐸」としての役割を逸脱している。とりわけ、ここの2年間の小沢一郎氏をめぐる報道は、朝日新聞の社説に象徴的に見られるようにメディアの本分から大きく逸脱し、偏向が激しい。
※小沢氏問題については、以下も参照のこと。
◆青山貞一:小沢一郎とメディアと法
たとえば大メディアは、「編集権」の名の下に、特定部分を強調したり、逆に当人にとり重要な部分が意図的に削除、トリミングされ、記事やニュースから削除される。さらに社説では編集委員の恣意的な判断で勝手に曲解されることが日常茶飯事となっている。
小沢氏を批判、攻撃する大メディアの記者の圧倒的多くは、小沢氏に対しなにひとつ満足な取材をしていない。
ジャーナリストの本分であるべき、足と頭を使い個別具体に取材することを忘れ、ここ2年間、独裁権力である検察庁、地検特捜部などからのリークをもとに、裏取りもせず、勝手な価値判断、偏見、予断的な記事を書き放題書いてきた。
いうまでもないことだが、取材相手の当人が実在するなら、当人にインタビュー、すなわち取材するのがメディアの大前提である。だが、こと小沢一郎氏に対しては、当人に直接取材することなく、第三者への聞き取りもせず、小沢氏の政治家としての名誉や信用を一方的に毀損し、人権を侵害するような記事を書き散らしてきたのである。
また大メディアは国民の生活や企業の将来にとって重要な政治について、政局ばかりに着目し、本来の政治、政策の報道をないがしろにしてきた。対外的にも政府同様、米国一辺倒、米国追随的な報道姿勢には、うんざりするものがある。もとより米国の政治、外交、軍事、経済、財政はすでに「死に体」化しつつある。
大メディアはリーマンショックを大々的に報道した。しかし果たしてサブプライムローン問題をどれだけ現場で取材し、早期段階から日本国民に報道したであろうか?
実質的に見てエネルギー資源の収奪、エネルギー植民地化の面からどれだけ米国の中東侵略を現場主義で取材し、日本国民に伝えたか?
日本の大メディアは、いずれも記者クラブでふんぞり返るだけで、およそ国民の知る権利(Right to know)に応えてこなかった。今の日本のメディアは到底、社会木鐸とは言えない。
メディアと世論誘導C大メディアに誘導される世論という仮説
http://eritokyo.jp/independent/aoyama-mediaron4.htm
●大メディアの論調で誘導される世論という仮説
ここでは日本国民の世論が、いかに新聞・テレビなどの大メディアの影響を受けやすいか、逆説すれば大メディアを信頼している国民であるかについて論じてみたい。
ここ数年の日本における政治、政局を見るまでもなく、日本国民は、新聞やテレビの影響を非常に受けやすいのではという仮説を設定することができる。
この仮説は政治のあらゆる局面で考えられるものである。その背景には日本国民が新聞やテレビなどの大メディアの記事やニュース、番組に他の先進国ではないほどの信頼を置いているという事実がある。これについては別途詳細に論じる。
この仮説は最近では2010年9月の民主党代表者選挙で顕著なものとなっている。
2010年9月14日を投票日に行われた民主党の代表選に関連して新聞、テレビ、通信社などの大メディアは、民主党の鳩山氏から菅氏に変わった後の内閣支持率や誰が民主党の代表にふさわしいかなどについて世論調査を頻繁に行った。
その際、大メディアは世論調査において必ず同時に「政治とカネ」問題そして「頻繁に日本の総理が頻繁に替わることの対外的印象」問題などの設問をたてていた。
当時、国民は直前の参議院議員選挙に消費税を打ち出すなどで大敗した菅直人氏に政策的には不満をもっていたが、大メディアが頻繁かつ執拗にくりだす「政治とカネ」問題と「日本の総理が替わることの是非」に関連する記事、ニュース、特番などの影響を受け小沢氏ではなく菅直人氏に圧倒的に高い支持を与えるようになる。
●仮説の予備的な検証
このことは民主党代表戦の投票結果(表2参照)に象徴的に現れていた。
国会議員の得票数では菅氏と小沢氏の得票はほぼ二分され、それぞれ約200票と五分五分となったものの、地方議員による得票さらにサポーターによる得票では菅氏は小沢氏を大きく引き離し代表に選ばれたのである。
表2 2010年9月民主党代表選挙の得票結果
候補者 | 国会議員票 | 党員・ サポーター票 | 地方議員票 | 総ポイント |
---|---|---|---|---|
菅直人 | 412(206人) | 249 | 60 | 721 |
小沢一郎 | 400(200人) | 51 | 40 | 491 |
無効など | 10(5人) |
出典:民主党
大メディアは代表選挙報道のなかで2011年に行われる統一地方選挙への影響についても執拗に報道していたこともあり、民主党の地方議員の多くは統一地方選挙における自身の当落を意識し小沢氏でなく菅氏を支持した。サポーター得票は、ほぼ大メディアによる世論調査結果と同様の結果となった。
そこでは本来、民主党関係者が勘案すべき国のあり方や国と地方のあり方、さまざまな将来ビジョン、外交、財政、税制、年金、医療、公共事業、地方分権、沖縄問題といった個別具体の政策の違いはほとんど問題にされず、大メディアの論調が菅氏への得票を誘導することになった。菅氏が消費税を唐突にもちだしたにもかかわらずである。
他方、衆参の国会議員は、ことが民主党代表=総理となる選挙の重要性を考慮し両候補が主張した将来ビジョンや個別具体の政策内容において卓越していた小沢氏に得票していたと考えられる。世論調査の結果を考慮したとしてもである。これは仮説を考える上できわめて重要な点である。
後日、菅氏が一年生議員や中堅議員に自分が当選した場合、政務三役などのポストを与えるかのような発言を電話などでしていたこともあって、軸足が定まらない中間層議員が菅氏に投票したこともあるだろう。にもかかわらず、小沢氏が大メディアからの批判、攻撃の嵐の中で肝心な民主党国家議員の約半数の得票を得たことは、特筆すべきことであったと思う。
上記の仮説は2010年9月の民主党代表選だけで検証すべきものではないが、この2年弱、大メディアが小沢一郎氏に大して執拗に「政治とカネ」問題、「説明責任」問題で連日連夜にわたり激しく批判、攻撃してきたことによる国民へのすり込み効果が顕著に表れたという点で重要である。
大メディアの論調をして小沢氏に対する一般国民のイメージが確定してきたことの証左であると言っても過言ではないだろう。だが、私が「青山貞一:小沢一郎とメディアと法」 の論考のなかで指摘したように、この事実は、大メディアの情報操作による世論誘導の典型であると言えるものである。
しかも大メディアの論調は、一昨年3月、突如はじまった東京地検特捜部による小沢氏攻撃に関連したものであり、その根拠は特捜部の恣意的なリークを真に受けた大メディアが真実性に乏しいリーク内容を1年半にわたり紙面、ニュースであたかも真実であるかのごとく報道してきた実態と現実にあると思える。
事実、大メディアに誘導された世論で民主党代表に就き総理となった菅直人氏のその後の展開を見れば、いかに大メディアに誘導された世論の選択が日本の政治、外交で隘路に入っているかが分かろうというものだ。
とりわけ外交では、尖閣中国漁船問題、ロシア大統領による北方領土視察、外交防衛関連情報の度重なる漏洩で決定的な失政を行い、さらに経済対策のための補正予算、円高対策・景気・雇用のための財政・経済政策、来年度予算におけるシーリングの再来など、いずれも政治主導どころか官僚主導による致命的な失政を重ねた。
菅政権はこのような外交、経済はじめ多くの政策で失政を重ねたことで、就任後わずか1ヶ月ちょっとの2010年11月上旬には内閣支持率を約30%も下げている。短期間におけるこの下げ幅は歴代内閣で最大である。
メディアと世論誘導D国民の多くが無批判に大メディアを信頼している事実
http://eritokyo.jp/independent/aoyama-mediaron4b.htm
●国民の多くが無批判に大メディアを信頼しているという事実1
私は本稿のなかで日本国民の世論は、大メディアの論調によって著しく影響を受けるという仮説を提起してきたが、これは日本の国民の多くが無批判に大メディアを信頼しているという事実に基づいていると言ってもよい。
換言すれば、国民の考え、世論の大部分は大メディアの記事、ニュースなどによるすり込みにより「飼い慣らされてきた」効果であると言って言えないことはない。
以下のように、これは国際比較の調査結果や国内調査の結果を見れば浮き彫りとなる。
下は日本リサーチセンターが実施した先進国、発展途上国、資本主義国、社会主義国を問わず各国国民が、いかなる組織に信頼を置いているか、という非常に興味深いアンケート調査結果のごく一部である。ごく一部という意味は、この調査では、60カ国の国民を対象に調査をしているからである。
※国際調査の全体結果:
世界各国の組織・制度への信頼度比較(2000年)
下では、まず日本とイギリス、日本とアメリカを比較してみた。日本国民の圧倒的多数(70%以上)は新聞など大メディアを信頼していることがこの調査より窺える。これに対し、イギリス国民は大メディアをわずか約14%しか信頼していないことが分かる。
出典:日本リサーチセンター編「世界60カ国価値観データブック」
下は日本と米国との比較である。米国も英国と同様の傾向であることが分かる。大メディアの信頼性は、日本が70%以上であるのに対して米国では26%程度にすぎない。
出典:日本リサーチセンター編「世界60カ国価値観データブック」
他の先進国における大メディアの信頼度は、カナダが約36%、イタリアが約34%、フランスが約35%、ドイツが約36%、ロシアが約29%である。
逆に日本に近い国を探すと、中国が約64%、インドが約60%、フィリピンが70%、ナイジェリアが約63%といずれも発展途上国ということになる。
このように大メディアの信頼度が、先進諸国で14〜35%であるのに対し、日本では70%もある。
※国際調査の全体結果:
世界各国の組織・制度への信頼度比較(2000年)
これを要約的に言えば、日本人は新聞、テレビなどの大メディアの情報を先進国のなかで一番無批判にまたアプリオリに信頼しているということに他ならない。
●国民の多くは無批判に大メディアを信用している事実2
◆ギャラップ社の調査結果
実はこれを裏付けるような調査結果が多数ある。
下は米国の著名な世論調査会社、ギャラップ社による日本人の新聞、テレビなど大メディアに対する信頼度調査の結果である。
何と、ここでも新聞、テレビともに信頼するが73%〜74%となっており、先の国際調査結果に非常に近い結果であることが分かる。
出典:ギャラップ社
◆ノルド社会環境研究所の調査結果
さらに下はノルド社会環境研究所が実施した「情報源の信頼性」と題する調査結果である。
本調査では、@大メディア、A大学・研究機関、B企業・事業者、C市町村、D都道府県、E国の省庁、F衆議院・参議院、G政党(与党)について情報源の信頼性を聞いている。
ここでも日本の多くの国民は新聞・テレビなどの大メディアを信頼していることが分かる。ちなみに、信頼している組織の順位は、
@大メディア→A大学・研究機関→B企業・事業者→C市町村→D都道府県→E国の省庁→F衆議院・参議院→G政党(与党)
であり、大メディアの一位が49%であるのに対し、大学が31%、市町村が29%、都道府県が26%、省庁が19%、政党(与党)に至っては8%にすぎないことが分かる。
出典:株式会社ノルド社会環境研究所
ノルドの調査結果からは、日本の国民は国の省庁や政治をほとんど信頼しておらず、圧倒的にテレビ、新聞などの情報を信頼していることになる。ここにひとつの大きなポイントがある。
◆国民が情報を得るメディアの種類とその信頼度調査
では次に、国民が情報を得るメディアそれぞれに対する信頼度についての調査結果を見てみる。
調査結果を見ると、ここ数年、インターネットから情報を得る時間は圧倒的に増えていることが分かる。新聞、テレビ、雑誌、ラジオそれぞれに費やす時間8〜10%であるのに対し、インターネットはPC系が約70%、モバイル系が27%と、国民は多くの時間をインターネット系に費やしていることが分かる。
出典:http://www.garbagenews.net/archives/1303606.html
だが、下の調査結果を見ると、情報を得るメディアそれぞれの信頼度では、ニュース番組が86%、新聞全般が87%、ニュースサイトが81%と、断然テレビ、新聞に対する信頼度が高いことが分かった。
ちなみにこの意向調査の実施者は、「ネット利用者でも新聞・テレビニュースへの信頼度は9割近くに」と結論づけていた。
出典:http://www.garbagenews.net/archives/1303606.html
このように、日本では、新聞、テレビなどの大メディアが流す情報に寄せる国民の信頼度がアプリオリに高く、国、自治体を含め行政の情報はあまり信頼されてなく、政党(与党)の情報はほとんど信頼されていないことも分かった。
繰り返すが、ここ1,2年の政局を見ていると、日本の国民の70%程度が新聞やテレビの論調の影響を強く受けていること、また世論調査結果も新聞やテレビの論調の影響を受けていることが分かる。
その背景としてどの新聞、テレビもほぼ同じような内容、論調の記事、社説、ニュースを流している点にも注目すべきである。もちろん、デーリーの事実報道では、ここで問題とするような内容に大きな課題はないだろうが、政治、政策のように多面的な考察、評価が不可欠な問題において、どの新聞、テレビも同じ論調であることが問題なのである。
この日本の世論形成もまさにガラパゴス現象の一部であると言えよう。
新聞やテレビが流す情報、論説、論調、社説などが顕示する事実がいつも真実であるとは限らない。簡単に言えば正しいとは限らない。
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◆国民が情報を得るメディアの種類とその信頼度調査
では次に、国民が情報を得るメディアそれぞれに対する信頼度についての調査結果を見てみる。
調査結果を見ると、ここ数年、インターネットから情報を得る時間は圧倒的に増えていることが分かる。新聞、テレビ、雑誌、ラジオそれぞれに費やす時間8〜10%であるのに対し、インターネットはPC系が約70%、モバイル系が27%と、国民は多くの時間をインターネット系に費やしていることが分かる。
出典:http://www.garbagenews.net/archives/1303606.html
だが、下の調査結果を見ると、情報を得るメディアそれぞれの信頼度では、ニュース番組が86%、新聞全般が87%、ニュースサイトが81%と、断然テレビ、新聞に対する信頼度が高いことが分かった。
ちなみにこの意向調査の実施者は、「ネット利用者でも新聞・テレビニュースへの信頼度は9割近くに」と結論づけていた。
出典:http://www.garbagenews.net/archives/1303606.html
このように、日本では、新聞、テレビなどの大メディアが流す情報に寄せる国民の信頼度がアプリオリに高く、国、自治体を含め行政の情報はあまり信頼されてなく、政党(与党)の情報はほとんど信頼されていないことも分かった。
繰り返すが、ここ1,2年の政局を見ていると、日本の国民の70%程度が新聞やテレビの論調の影響を強く受けていること、また世論調査結果も新聞やテレビの論調の影響を受けていることが分かる。
その背景としてどの新聞、テレビもほぼ同じような内容、論調の記事、社説、ニュースを流している点にも注目すべきである。もちろん、デーリーの事実報道では、ここで問題とするような内容に大きな課題はないだろうが、政治、政策のように多面的な考察、評価が不可欠な問題において、どの新聞、テレビも同じ論調であることが問題なのである。
この日本の世論形成もまさにガラパゴス現象の一部であると言えよう。
新聞やテレビが流す情報、論説、論調、社説などが顕示する事実がいつも真実であるとは限らない。簡単に言えば正しいとは限らない。
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