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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20101110-00000001-voice-pol
◇「ヤメ検」の胡散臭さ◇
9月の事件以来、検察とメディアは自らの「犯罪」を隠すことに必死である。
大阪地検特捜部の検事らによる犯罪は、長年「正義の味方」として信じられてきた検察の信用性を崩すに十分な事件であった。「ヤメ検」の弁護士たちはしきりにテレビ番組に出演し、「昔は違った」といいながら過去の検察の正当性を主張している。
だが、もはやそうした行為になんの説得力もない。それこそ、検察が追及してきた「犯罪者」たちの言い訳と同じ胡散臭さを、そこに感じてしまうからだろう。
その浅はかさは、今回の事件における逮捕された検事たちの言動でも明らかになった。
フロッピーディスクを改竄したとして逮捕された前田恒彦検事の上司は、そろって次のように語ったという。
「大坪前特捜部長と佐賀前副部長は、面会した弁護士に、『意図的ではなく、誤って書き換えてしまった、と報告を受けた。自分たちは最高検の作ったストーリーによって逮捕された』などと話し、最高検と全面的に対決する姿勢を示しています」(NHKニュース・10月12日)
これは悪い冗談だろうか。その直前まで、さんざん「検察ストーリー」をもとに事件をつくり上げてきた検事たちの言葉がこれである。
たしか、検察は「法と証拠」に照らしてのみ、事件を捜査していると豪語してこなかったか。自分の立場が逆転した瞬間、この体たらくである。
本当に自らの職業に誇りをもっていたのならば、逮捕されてもなお「検察ストーリーは存在しない」と言い切るのが筋ではないか。
同じようなことは、次の発言でも窺える。
「佐賀前副部長の弁護人は4日、『密室での違法・不当な取り調べによる虚偽の自白で、多くの冤罪が生み出されてきた』として、最高検に『全面可視化』を求めていた。申し入れは佐賀前副部長の意向も踏まえたという」(『朝日新聞』10月7日付)
これまで検察は、調書作成において恣意的な要因や自白強要の要素が入り込む余地はないとしていた。一貫して正しい捜査を行ない、結果、冤罪の起こる可能性も1%に満たないとしてきたのである。
しかし、自らが逮捕された途端、今度は取り調べ過程の録画・録音を求めて、最高裁にすべての可視化を求める。なんと身勝手で、そしてシュールな構図だろう。だが、これは冗談でもなんでもない。実際に起きている現実のニュースなのだ。
◇欺瞞に満ちた共犯関係◇
ところが不思議なことに、このニュースの扱いはどの報道機関でも限りなく小さい。テレビのニュースでは申し訳程度に触れるのみ、新聞も社会面の端に載せているだけだ。なぜだろうか。
じつは、逮捕された検事らによるこうした要求は、検察のみならず、メディアの欺瞞も暴いてしまう。テレビや新聞が最も恐れているのはそれだ。
これまでテレビや新聞は一貫して、「検察リーク」の存在を否定してきた。『読売新聞』や『産経新聞』などは、わざわざ社会部長名で記事にして「検察リーク」を否定している。
よって、次のニュースを報じる際、メディアは細心の注意が必要となったわけである。
「郵便不正を巡る証拠品のフロッピーディスク(FD)改ざんに関連した犯人隠避事件で、最高検が大阪地検の前特捜部長・大坪弘道(57)、前副部長・佐賀元明(49)両容疑者の接見禁止を求めたところ、大阪地裁が却下したことがわかった。否認している容疑者について接見禁止の申し立てが退けられるのは異例。二人に対しての接見は弁護人以外も可能な状態となっている」(『読売新聞』10月5日付)
接見禁止の解除は、証拠隠滅などの恐れがない場合に認められる。だが実際は、この種の刑事事件でそれが許されたことはない。いわば今回は司法の常識を覆す、初のケースだったといえる。
にもかかわらず、ニュースの扱いは限りなく小さい。いや小さいというよりもほとんどの新聞・テレビがこれを黙殺している。なぜか。
それは、逮捕された二人の検事が接見禁止解除を求めた理由にある。じつは、接見禁止が解除になったこの二人が最初に面会していたのは、共同通信と時事通信の記者である。その後も、各種報道機関の記者たちとの接見を続けている。
つまり、これまでメディアが全否定してきた「検察リーク」の存在を、図らずも二人の容疑者が証明してしまったのだ。二人は「検察リーク」を打ち消すために「逆リーク」をしている。
まさしく、検察当局とメディアの欺瞞に満ちた共犯関係によるブラックジョークではないか。
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