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2010年10月24日(日)
朝日と真反対の最高検「メモ廃棄通知」報道をしたNHK
村木冤罪事件における取り調べメモの廃棄問題に関し、同じ最高検の通知文が、朝日とNHKでは真反対の解釈で報道された。
それぞれ、記者会見でコントロールされていない独自取材の証明ともいえるし、どんなニュースでも伝える側の解釈を鵜呑みにしてはならないという、読者への警鐘と受けとめることもできる。
村木裁判では、大阪地検特捜部の検事6人が、取り調べのさいにとったメモをすべて廃棄していたことがわかり、大問題になった。
これは大阪地検の特殊なケースなのか、それとも検察組織全体の問題なのか。それを検証する手がかりとして、9月8日の朝日と、本日10月24日のNHKニュースが取り上げたのが、メモ取り扱いに関する2008年の最高検通知だ。
まずは、今日のNHK。
最高検察庁が、おととし、検察官が必要ないと判断したメモは速やかに廃棄するよう全国の検察庁に指示していたことがわかりました。専門家は「被告に有利なメモがあっても廃棄されることになり、きわめて不適切だ」と批判しています。
一方、9月8日の朝日。
関係者の取り調べの際につけたメモ(備忘録)を廃棄していた大阪地検特捜部の複数の検事の対応が、最高検の通知に反するものだったことがわかった。
これで明らかなように、NHKはメモ廃棄を指示していたとして最高検を批判。朝日は最高検の通知に反して廃棄したとして大阪地検特捜部を悪者にしている。
では、通知か指示かはともかく、最高検の文書はどのような内容だったのだろうか。
こちらもNHKから。
NHKでは、最高検察庁が、おととし、取り調べのメモについて全国の検察庁に出した通知とその解説文を入手しました。解説文で、最高検は「必要性の乏しいメモを安易に保管しておくと、メモを開示するかどうかで無用な問題が生じかねない。裁判所が取り調べの状況について判断するうえで必要なメモは保管し、それ以外のメモは、プライバシー保護などの観点から速やかに廃棄すべきだ」としています。
朝日の記事はこうだ。
最高検は08年7月と10月、検事や副検事が容疑者の発言や質問事項などを記すメモの取り扱いについて各地検に通知。取り調べ状況が将来争いになる可能性があると捜査担当検事が判断した場合、(1)メモを公判担当検事に引き継ぐ(2)公判担当検事はメモを一定期間保管する――ことを刑事部長名で求めた。
両方の報道内容を見比べると、いずれも08年の文書を取り上げていることがわかる。朝日の記事を素直に解釈すれば、7月と10月の二回にわたって通知されたが、その内容は同じだったようだ。
NHKと朝日が同じ文書について語っていることはまず間違いない。その認識のうえで、それぞれの記事に目を凝らしてみる。
NHKはここに力点を置いた。「裁判所の判断に必要なメモ以外は速やかに廃棄せよ」。
朝日は光をこちらに当てた。「取り調べ状況が将来争いになる可能性があると判断した場合、保管せよ」。
つまりNHKの記事はこう書き換えることも可能だ。「裁判所の判断に必要だと担当検事が判断すれば保管せよ」。こう書けば朝日の記事と似通っている。
逆に朝日の記事をこう書き換えることが可能だ。「取り調べ状況が将来争いになる可能性があると判断できるメモ以外は廃棄せよ」。こう書けばNHKの記事に近づく。
同じ文書でも、重きを置くところが「廃棄せよ」か、「保管せよ」かで180度違う記事になることを、朝日とNHKの記事は示している。
そして、最も重要なことは、最高検の文書がどちらにも解釈できる内容であったということである。
法律という厳密な文書を取り扱う機関でありながら、行政組織としての内部通知は、曖昧さをあえて残し、判断を検事の裁量に委ねる中身になっていたのは明白だ。「プライバシー保護の観点から速やかに廃棄すべきだ」(NHK)という理屈もよく分からない。
取り調べメモについては、最高裁が2007年12月、「個人的メモの域を超えた公文書」とし、証拠開示の対象になるとの判断を示している。
本来なら、これを受けて全てのメモを保管するよう明確に指示すべきではなかっただろうか。最高検の曖昧文書にはタテマエとホンネの違いが透けて見える。
これでは検事は恣意的に解釈し、不都合なメモがあれば捨てるだろう。そのくらいのことを最高検が分からぬはずがない。
ちなみに、当ブログでは朝日の記事について、9月9日の「 村木判決を前にした朝日の弁解代弁記事二本」 で取り上げた。そのさい筆者は次のような感想を記している。
この記事はメモの廃棄という、検察の取り調べの根幹にかかわる問題に正面から切り込むことを避け、廃棄が最高検の通知違反であるというニュースに仕立てあげていることがわかる。
皮肉っぽく言うと、最高検はちゃんと通知していたのだという言い訳を、新聞が代弁しているように見える。最高検の権威を守ると言う前提のもと、取材する側、される側の暗黙の了解で書かれた記事ではないかというのが、筆者の疑うところである。
新 恭 (ツイッターアカウント:aratakyo)
http://ameblo.jp/aratakyo/entry-10686661874.html
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