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相変わらず日米の経済行動の比較は面白い
お互いの解釈の違いも文化の背景を持っている
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米12月貿易赤字、2カ月連続で拡大=原油輸入急増で
2011/02/12 (土) 17:23
−対中赤字は減少=依然、前年水準上回る−
【2011年2月12日(土)】 − 米商務省が11日発表した昨年12月の米貿易・サービス赤字は、前月(11月)に続いて2カ月連続の拡大となった。赤字幅が拡大したのは、輸出が4カ月連続の増加と、引き続き堅調となったものの、原油高と原油輸入量の急増で輸入が過去最高を記録し、輸出の増加ペースを上回ったためだ。
一方、対中赤字は前月比で減少したものの、依然、前年水準を上回っており、2010年全体では過去最高を更新した。しかし、オバマ政権は1月19日の胡錦濤国家主席との首脳会談で中国側が人民元の一層の切り上げを約束したことから、中国が人民元の為替レートを操縦しているかどうかの判定を再び見送った。
■貿易赤字、直近は縮小傾向=Q4・GDP上方改定へ
昨年12月の貿易・サービス赤字(季節調整済み)は、前月比5.9%増の406億ドルと、2008年10月以来2年2カ月ぶりの高水準となり、 11月の前月比0.3%増の383億ドル(前回発表と同じ)に続いて2カ月連続の拡大となった。また、市場予想の404億ドルの赤字幅を上回る大幅な拡大となっている。
しかし、過去3カ月の移動平均と見ると、12月の赤字幅は原油高で急増したものの、10-12月の月平均は390億ドルと、9-11月の同404億ドルから3.5%改善(縮小)している。
しかも、より重要なポイントは、商務省が先月28日に発表した2010年第4四半期(10-12月)GDP伸び率の速報値で使われた貿易赤字の月平均410億ドルを下回っていることだ。
貿易赤字はGDPの押し下げ要因なので、次回の同GDP改定値の発表時には、10‐12月期の貿易赤字が下方改定され、反対にGDP伸び率が上方改定されることを意味する。
ちなみに、第4四半期GDP速報値では10月の貿易赤字は384億ドル、11月は383億ドル、12月は460億ドルと算定されており、12月については、今回の貿易統計で13.3%(54億ドル)も下方改定されている。
なお、第4四半期実質GDP伸び率(季節調整済み、前期比年率換算)の速報値は+3.2%と、前期の+2.6%から伸びが加速。このうち、外需は、輸入が減少(−13.6%)し、輸出が増加(+8.5%)した結果、純輸出のGDP寄与度が+3.44%ポイント(前期は−1.70%ポイント)となり、4四半期ぶりにGDPを押し上げている。今度の改定値ではさらにGDPを押し上げると見られる。
■2010年貿易赤字、33%増と依然高水準
12月までのデータが出揃ったことで、2010年の通年の貿易赤字は4978億ドルと、2009年全体の3749億ドルを32.8%上回り、2000年以来10年ぶりの高水準となっている。
こうした貿易赤字の拡大は、雇用面から見ると、雇用の機会が国内よりも海外の労働者に向かうことを意味するため、米経済にとってはマイナスとなる。また、2010年の貿易赤字は、昨年のGDP伸び率を0.5%ポイント押し下げたと見られる。
昨年1年間の赤字額の推移を見ると、1月は348億ドルと、3カ月ぶりに縮小に転じたが、2月に399億ドルと、再び拡大。3月は397億ドルと、ほぼ横ばいで推移した。
しかし、4月は前月比2.5%増の407億ドル、5月も同3.5%増の422億ドルと、赤字拡大のペースが加速、6月には赤字額は同19%増の501億ドルと、単月としては昨年7月以来約1年ぶりの大幅な拡大を記録。
7月は429億ドルに縮小したが、8月は、中国からの輸入が350億ドル超と過去最高を更新する中、再び469億ドルに急増したあと、9月は 4.9%減の446億ドル、10月は14.3%減の382億ドル(改定前384億ドル)と2カ月連続で縮小したが、11月は同0.3%増の383億ドルと、拡大に転じた。前回発表時は、11月は同0.3%縮小だった。
■貿易赤字、今後は抑制か拡大かで見方分かれる
12月は原油高と原油輸入急増という要因がなければ、財政赤字は縮小していたと見られている。これは財・サービスのうち、財だけの貿易赤字536 億ドルのほぼ半分(47%)に相当する253億ドルが原油関連の赤字となっているからだ。一方、石油以外の赤字は272億ドルで、これは昨年3月以来9カ月ぶりの低水準。
もともと、エコノミストは、2010年の貿易赤字は、拡大すると予想していた。米景気の回復とともに輸入が増大し、また、今年1月9日には米アラスカ州の石油パイプラインの原油漏出事故に伴う原油生産の削減で原油価格が高騰していることから原油輸入額が増大するからだ。
また、輸出もドルが昨年11月から上昇し始めているため、その影響が2‐3カ月の遅れで出始め、輸出にブレーキがかかることが予想されている。
FRBによると、主要通貨バスケットに対するドルの価値を測るドル・インデックス(名目値)は、11月は前月比0.7%上昇の72.8356だったが、12月も同1.3%上昇の73.8097と、2カ月連続で上昇した。しかし、今年1月は同1.2%低下の72.9456と、3カ月ぶりに低下、ドルが再び低下し始めている。
このため、一部のエコノミストは、今後はドル安に助けられて輸出が一段と強まり、輸入の増加を相殺して赤字拡大を抑えるので、GDP伸び率の足かせにはならないとみている。
他方、昨年第4四半期GDP速報値で個人消費が前期の+2.6%から+4.4%と、伸びが加速し、リセッションが始まる前の2006年末以来の約 4年ぶりの大幅な伸びとなったことから、小売業者が今後、輸入在庫を積み上げる動きが加速、その結果、今後数四半期は、貿易セクター(外需)がGDP成長率を抑える可能性があるとの見方もある。
個人消費については、11日に発表された2月のミシガン大消費者信頼感指数は前月の74.2から75.1に上昇、昨年6月以来8カ月ぶりの高水準となっている。このうち、期待指数は69.3から67.6に低下したものの、現況指数は81.8から86.8と、2008年1月以来約3年ぶりの高水準となったで、エコノミストは、景気回復が続いており、最近の個人消費の強い伸びは維持される可能性は高いと見ている。
■輸出、1.8%増=2年5カ月ぶりの高水準
12月の輸出は前月比1.8%増の1630億ドルと、9月(同0.5%増)以降、4カ月連続の増加となり、水準的にも2008年7月の1657億ドル以来2年5カ月ぶりの高水準となっている。
前月の同1%増の1601億ドル(改定前1596億ドル)に続いて、依然、高水準を維持しており、米証券大手リーマン・ブラザーズの経営破たんで世界的な金融危機が起こる前の水準に戻っている。
また、サービスを除いた財だけの輸出も前月比2.5%増の1166億ドルと、4カ月連続の増加。これは、主力の自動車・同部品が急増し、工業用サプライ(石油含む原材料)や資本財も急増したためだ。
自動車・自動車部品は同6.2%増の97億ドルと、増加に転じ、自動車・同部品を除いた資本財も同3.8%増の397億ドルとなっている。
また、工業用サプライ(石油含む原材料)も同3.2%増の361億ドルとなった一方で、月によって変動が激しい民間航空機も前月比6.1%増の280億ドルとなった。ただ、消費財は同2.4%減の146億ドルと、過去最高となった前月から反落した。
■輸入、2.6%増=原油高と原油輸入量の急増で
他方、12月の輸入は前月比2.6%増の2035億ドルと、11月の同0.8%増の1985億ドル(改定前1980億ドル)に続いて2カ月連続の増加となった。
また、サービスを除いた財だけの輸入も同3.1%増の1701億ドルと堅調だった。これは、原油を中心に工業用サプライ(石油含む原材料)が同10.4%増となったことが大きい。
特に、原油輸入(季節調整前)は同13.6%増の225億ドルだった。これは1バレル当たりの原油価格が11月の76.81ドルから12月は79.78ドルに上昇し、輸入量も同9.4%増の2億8258万バレルとなったためだ。
また、自動車・同部品は同0.8%増の191億ドル、民間航空機も同83.3%増の10億ドル、さらに、食品・飼料・飲料水は同2.4%増の80億ドルと増加した。
しかし、資本財(自動車除く)は同1.2%減の397億ドルとなったほか、消費財も家電製品、繊維・衣料品、スポーツ用品・玩具、テレビなどAV製品などを中心に、同1.0%減の408億ドルと、減少している。
■対中赤字、縮小=2010年は過去最高更新
国・地域別の貿易赤字(季節調整前)では、米国の貿易赤字の大半を占め、米国の赤字拡大の元凶とされている中国との貿易赤字は、前月比19.3%減の207億ドルと、急減したが、前年比は14%増と、依然、高水準が続いている。
対中赤字は依然、米国の貿易相手国の中では最も大きい数字で、2010年全体でも前年比20.3%増の2731億ドルとなり、2008年に記録された過去最高2680億ドルを更新した。
内訳を見ると、12月の米国の対中輸出は前年比6.8%増の101億ドルと、前月の過去最高を更新した。他方、中国からの輸入は同12.3%減の308億ドルに急減している。
2010年全体では、対中輸出は前年比32.2%増の919億ドルと、過去最高となった一方で、対中輸入も同23.2%増の3649億ドルと、これも過去最高となっている。
2010年の対中赤字が過去最高を更新したことから、アメリカ製造業同盟(AAM)のスコット・ポール専務理事は、このまま、高水準の対中貿易赤字が続けば、米国の雇用を回復させることは困難としている。
その上で、同専務理事は、人民元は依然、対ドルで40%も安すぎるとして、人民元の為替レートを操縦していると認定を遅らせる戦略では効果を発揮していないとし、議会に対し、人民元の一段の切り上げを促すために対中経済制裁法案を早期に成立させるよう求めている。
■財務省、中国の為替操縦国認定を見送り=2月為替報告書で
しかし、財務省は今月4日、半年ごとに議会提出が義務付けられている為替報告書を公表したが、ガイトナー財務長官は前回の昨年7月に続いて、今回の報告書でも中国を為替操縦国として認定することを見送った。
見送った理由について、財務省は、1月19日に訪米した胡錦濤国家主席がオバマ大統領との首脳会談で、「人民元の為替レートの柔軟性を強化する」という文言を使って、中国側が人民元の引き上げに向け一層努力することを約束したためとしている。
また、同省は、人民元は2010年6月のG20サミット (主要20カ国・地域首脳会議)開催直前に、人民元の一段の切り上げ方針を明らかにして以降、1月27日時点でドルに対し3.7%上昇(年率で約6%上昇)したが、中国のインフレ率の上昇を考慮すると、インフレ調整後では、人民元の上昇率は約10%になるとしていることも公表を先送りした理由として指摘している。
しかし、同省はそれでも公平な貿易競争の土俵を作るには不十分だとし、一層の人民元の切り上げを求めて、今後も人民元の対ドルレートを注視していくとしている。
一方、議会では、下院は昨年9月29日の本会議で、人民元の一段の切り上げ圧力を高めるための対中経済制裁法案を348票対79票の圧倒的多数で可決した。同法案では一律25%の相殺関税を中国からの輸入品のすべてに課すことが可能になる。
しかし、上院では、昨年12月6日に、上院のマックス・ボーカス財政委員長(民主党、モンタナ州選出)ら32人の有志議員が中国の王岐山副首相に書簡を送り、人民元の十分な切り上げを示すよう求めるだけにとどめて採決を見送っている。
ただ、上院のチャールズ・シューマ−上院議員(民主党、ニューヨーク州選出)は、財務省が今月、中国の為替操縦国認定を見送ったことから、年内に議会で対中経済制裁法案の採決を目指して審議を再開する考えを示している。
米シンクタンクの経済政策研究所(EPI)によると、2010年だけで、米国の対中貿易赤字の拡大で、国内で50万人以上が失業したと分析している。内訳は対中輸出で19万5000人の雇用増があるものの、中国からの輸入増で76万1000人の雇用が失われたという。
このため、米シンクタンクのピーターソン国際経済研究所では、人民元は今後2年間で、貿易加重平均で20%切り上げられるのが妥当な目標だと指摘している。 (了)
http://www.bloomberg.co.jp/apps/
燃えるような香辛料はインフレ警告の色−W・ペセック
2月10日(ブルームバーグ):このところインドネシアは暑い。といっても、赤道直下にある同国の天気の話を単にしているのではない。
私が言いたいのは、互いに結び付くとはまず思えない2つの話題、唐辛子と投機資金のことだ。国民の口からもこの2つの話題が同時に持ち上がることはない。同国の食卓に欠かせないこの燃えるような香辛料の記録的な価格高騰には、バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長が一役買っているからだ。
ラニーニャ現象も値上がりの一因だろう。ただ、日米欧の中央銀行当局による超低金利政策の影響で、大量の資金が不安定な形でアジアに流れ込んでいる。インドネシアの1月のインフレ率は7%と、前年同月のほぼ2倍の水準に達した。
インドネシア国民は家賃の上昇や不十分なインフラ、特有の汚職や非効率性などあらゆる試練に耐えるだろう。それも人生というものだ。だが、唐辛子が4倍にも5倍にも値上がりしたら怒りが爆発するだろう。
ここには明確なメッセージがある。金利の調節では不十分であり、政策当局はインフレ対策を即刻強化する必要があるということだ。これは、消費者物価指数(CPI)がひどい数字になるのを避ける以上に重要な意味がある。その脆弱(ぜいじゃく)さが軽く見られているために苦しむ新興国にとって、社会の安定という極めて重要な問題なのだ。1日当たり2ドル未満で生活する多くの東アジアの人々にとって、唐辛子やコメ、食用油の値上がりは死活問題だ。
唐辛子の危機
インドネシアのユドヨノ大統領もこうした状況を放ってはおかない。天候や先進各国の超低金利政策はどうすることもできないが、大統領は国民に鉢で唐辛子を栽培するよう呼び掛けている。多忙な大統領が香辛料についてアドバイスするくらいだから、どれだけ問題が深刻か分かるだろう。
インフレは真の危機だ。エジプトで相次ぎ発生したデモが最近のいい例だ。30年に及ぶ専制支配がムバラク大統領を退陣に追い込みつつある。
アジアは何ができるのか。私は最近、ジャカルタでエコノミストや企業経営者のグループと興味深い議論をした。それは、政策当局が未踏の領域に入っており、伝統的な考え方は金融界でその影響力を失いつつあるというものだった。
さらに議論はこう続く。食料コストや賃金が上昇。原油や金も値上がりする。紛れもないインフレの兆候があらゆるところでぶくぶくと泡立っている。アジアの中央銀行は何をするのだろうか。
ミッシングリンク
賢明で世知に長けた人がなぜこれほど露骨にミルトン・フリードマンを見放すのか。それを説明するミッシングリンク(失われた環)が投機資金だ。これがアジアに混乱を招き、過熱リスクをさらに増幅させている。過剰資金がインフレに拍車を掛けるというフリードマンの視点は今も説得力がある。アジアの場合、巨大な資産バブルが新たな危機を招く恐れがあることを意味する。
だが実際には、こうした考えは極度に不透明感が強い今の時代にあっては大きく揺れ動く。利上げは海外投資家にとってアジアの魅力を一段と高め、すでに相当高まっているインフレリスクをさらにあおる。
政府はより創造的かつ介入主義者になる必要がある。アジアは市場の自制力というフリードマンの信条を投げ捨てている。自由市場主義者は異議を唱えるだろうが、バンコクやジャカルタ、クアラルンプールでは少数派だ。これらの国はアジア的手法の流動性対策で最前線に立つ。
いら立つ市場
エコノミストは中国、インド、インドネシア、フィリピン、韓国、ベトナムに利上げを促している。食料コストの上昇が差し迫った脅威となりつつあるこれらの国の政府はまた、社会の不安定化を回避する取り組みを強化しなければならない。
英スタンダードチャータード銀行のシニアエコノミスト、ファウズィ・イッチサン氏(ジャカルタ在勤)は「市場はますますいら立っている」と話す。
投資家がアジア経済の過熱を懸念する際、今や世界2位の経済大国になった中国についてしばしば考えをめぐらせる。中国で賃金が上昇するということは、同国の今年最大の輸出品目がインフレになりかねないことを意味する。これは今や、この地域の一般化したリスクになりつつある。
ありがた迷惑
アジアは日本を除いてブームに沸く。国内総生産(GDP)や株式相場のパフォーマンスがそれを示している。厄介なのは、ありがた迷惑という状況にあることだ。欧州が揺れ、米国の先行きにも不安定さがある中で、投資家の多くがより高いリターンを求めている。
政策当局は再び自己主張しなければならない。何かしら不安が残るようであれば、食卓に置かれた赤い香辛料を吟味すればいい。(ウィリアム・ペセック)
(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
更新日時: 2011/02/10 07:00 JST
八百長疑惑の向こうに新たな曙光が見える−W・ペセック
2月9日(ブルームバーグ):エジプトの反政府抗議運動を見て世界のジャーナリストは問い掛ける。こうした事態はあの都市でも起きるのか−。
ここ東京では答えは「ノー」だ。火炎瓶を投げ、菅首相の退陣を要求するといった1968年のような学生運動は二度と起こらないだろう。今時の若者の考えは、渋谷の街に集まる者たちに代表されるようになり、日本で集団的な抗議運動が起こることはごくごくまれなケースだ。
ただ、1億2600万の日本国民が変化を切望する新たな兆候がある。日本人がチュニジア人やエジプト人のように革命的な道を歩むことはないだろうが、長きにわたり社会を抑圧してきた3つの要素に対する反発的な動きがかすかな希望の兆しを与える:その要素とはヤクザ、政治、相撲だ。
生活水準が低下する一方、特権階級はいつもと変わりない生活を続ける中、水面下の日本では歴史的なアイデンティティーの危機が進行している。日本の軌道修正につながる可能性がある変化、そしてより明確な説明責任に対する欲求が高まっている。これは一段の経済成長に加え、デフレと債務の縮小を意味するだろう。
日本の上流階級には強い特権意識が長く根付いている。政治家は自分たちを法律を超越した存在であると考え、質問にも答えない。暴力団は人目をはばからず活動し、名刺を渡し、銀行業のような合法的な事業に手を伸ばした。日本の国技である相撲は八百長疑惑でたたかれている。
日本が成長局面にあり、市場は活発に動き、明るい将来が待っているのならそれでも良かった。この困難な時代においては、力を持つ金満族、有名人、不正を働く人々を受け入れられなくなりつつある。
銃を持ったゴールドマン
忍耐が薄れつつある1つの兆候は、日本の犯罪組織ヤクザの取り締まりだ。警察当局が風俗や麻薬、ギャンブルの取り締まりを強化する中、ヤクザは不動産や建設、株式へとその収入源を広げた。ジェイク・アデルスタイン氏は著書「トーキョー・バイス」で、ヤクザを「銃を持ったゴールドマン・サックス」と表現している。8万人と推定される暴力団に対する闘争の広がりは、日本の暗部に対する国民の不満を反映している。
2つ目は、民主党の小沢一郎元代表(68)に対する風向きが変わりつつあることだ。貧富の差の拡大、日本の国際的な地位低下は政治家一人の責任ではない。それでも、多くの国民は小沢氏には責任があると考えるだろう。
シルバー民主主義
小沢氏は舞台裏から操る「闇将軍」として知られる。同氏は先月、政治資金規正法違反で強制起訴されたが、過去最大の予算の議会通過や膨張する債務をめぐる懸念を和らげる日本の対応力に暗い影を投げかけた。米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が日本国債の格付けを中国と同じ水準に引き下げたことは、時代が変わりつつある兆候に違いない。同氏の強制起訴は、日本の硬直化した政治と高齢者の意見が反映されやすい「シルバー民主主義」をめぐって高まる幻滅感の表れだ。
日本のリーダーシップは人口と共に高齢化しつつある。予算を管理し、選挙区を大事にするのが長老たちであり、20代の若者が明るさを失うのも不思議ではない。本当のゴールドマン・サックス・グループで職を得るには程遠く、多くは低賃金の「フリーター」として職を転々とする。
菅首相は、税と社会保障の一体改革を議論する「社会保障改革に関する集中検討会議」を設置し、副議長には消費税倍増を主張する与謝野馨経済財政相(72)を、有識者メンバーに元金融担当相の柳沢伯夫氏(75)をそれぞれ起用した。これを言い換えるならば、日本の平均退職年齢をはるかに上回る両氏は、65歳以上の高齢者を支えるため若者にもっと消費するよう望んでいるのだ。
この国の縮図
いつも私に奇妙に思えるのは、日本の高齢者のやり方を遠慮なく批判した堀江貴文氏と村上世彰氏が刑務所に入れられたのに、小沢氏は自由に歩き回っていることだ。インターネット起業家の堀江氏がインサイダー取引の罪に問われたのは30代前半で、物言う株主の村上氏は40代半ばだった。何という驚くべき偶然か。
3つの目の変化の兆しは相撲だ。アデルスタイン氏や「やばい経済学(フリーコノミクス)」の著者を含む多くの人が長年うすうす感じていたように、力士の携帯電話から八百長相撲への関与が疑われるメールが警察当局によって確認された。
相撲は私を魅了する。完全な男社会であり、手本としては既に崩壊しており、外国人には溶け込みにくく、ファン層が急速に高齢化しているなどの点で、相撲はこの国の経済の縮図だからだ。興味深いのは、今回はこの問題が角界だけにとどまる状況にはないことだ。有力なメディア各社が現状に飽き飽きした人々に情報提供することで、問題が広がりを見せている。
日本の新たな夜明けを予想するのは愚かなゲームだ。ただ、いつもおとなしい集団がいら立ち、遠慮なく声を上げつつある。この国では革命ということにはならないが、変化を嫌うこの国に心強い兆候が表れている。(ウィリアム・ペセック)
(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
更新日時: 2011/02/09 07:00 JST
2月9日(ブルームバーグ):人間はアメとムチに反応する。これは経済学者なら誰でも知っている。極度に競争心が強くひどいかんしゃく持ちの弁護士ハワードを見てみよう。
ハワードはひどくいら立って帰ってくると、庭の三輪車や床に落ちているおもちゃを蹴飛ばして荒れ狂う。ポーラ・ザックマン、ジェニー・アンダーソン両氏の共著、「スパウスノミクス」は経済学を通して円満な夫婦生活を実現する方法を説く。
ハワードはかんしゃくを起した後いつも、短気を直さなければならないと考える。そこで、ハワードと妻で同業者のジェンはハワードのかんしゃくを抑える方法を考える。20まで数えるのも深呼吸するのも効果がない。万策尽きた二人は、ハワードが爆発しそうになったときにジェンが「レッドフラッグ」と叫ぶというゲームを考え出した。
「ハワードは3日間、レッドフラッグを出されずに過ごせたら、ジェンとセックスできる」という。幼稚なゲームのように聞こえるが、このゲームは成功し家庭に平和が戻るとともに二人のセックスライフも活性化した。これは経済学でいうトレードオフの典型だと著者らは説明する。
ザックマン氏は米紙ウォールストリート・ジャーナル、アンダーソン氏はニューヨーク・タイムズのライター。両氏は全米のカップルをインタビューし、家庭内の現象を解明しようとする。労働の分配(誰が芝刈りをするのがいいか)、モラルハザード(結婚が「大き過ぎてつぶせない」ためにどうしようもない亭主が救済されていないか)を検証する。
立ち入った質問
自己啓発書の多くと同様に、本書もきれいごとが多い。エネルギーの中心である「チャクラ(ヨガで精神的および肉体的なエネルギーが宿るとされる場所)」を開いて見せることが説かれたり、多くのカップルが楽園で迷子になった子供のように描かれたりする。
とはいえ、執筆はきちんとした調査に基づいており、経済学について楽しく学べる上に、この本によって救われる結婚も幾つかはあるかもしれない。
著者らはまず、新古典主義から行動経済学まで多様な学派のエコノミストから話を聞いた。次に、市場調査会社を雇って全米で1000人ほどの米国民を対象に63項目の立ち入った質問をした。調査は「徹底的・画期的・高価な結婚調査」と銘打たれている。
こうして集めた情報を持って、著者らはサンフランシスコからマイアミまで各地でカップルと面談する。ピザとビールで彼らの口を軽くするとともに、匿名を約束。名前や個人を特定するような詳細は別のものに変えた。
熱い夜
それぞれのカップルが明かす結婚生活での衝突は、バブル破裂(赤ちゃんができる前の熱い夜を覚えている?)や情報の不均衡(言ってくれなければ妻が何を望んでいるか分かるはずがないじゃないか)などの経済問題になぞらえられる。こじつけのように聞こえるが、出版社のカレン・フィンク氏によれば、ランダムハウスの編集者が言葉の使い方が正確だと保証した。
そのほか、「需要と供給(セックスの回数を増やす方法)」、「異時点間選択(現在と将来の消費量の配分に関する選択)」についての章がある。トレーダーが損失を取り返そうとしてさらに深みにはまる「ケルビエル症候群」の例や「ゲーム理論」についての章もある。(ジェームズ・プレスリー)
(プレスリー氏はブルームバーグ・ニュースの書評家です。この書評の内容は同氏自身の見解です)
更新日時: 2011/02/09 18:44 JST
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