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http://eco.nikkeibp.co.jp/article/column/20110209/105840/
2月3日、FAO(国際連合食糧農業機関)は、毎月の食料価格の変化を定期的に監視している「食料価格指数」が史上最高値を更新したことを発表した。指数は1月に平均して231 ポイントとなり、2010 年12 月から3.4%上昇した。これはFAOが食料価格の測定を開始した1990 年以降(実質および名目で)最高水準であるという。変化のなかった食肉を除いて、穀物、油脂、乳製品、砂糖のいずれの分野でも大幅な価格上昇を記録したことが報告されている。
FAOのエコノミスト・穀物専門家は、「新しい数値は、世界の食料価格に対する上昇圧力が収まる気配がないことを明らかに示している」「この高価格は今後何カ月も続くだろう。特に価格の上昇は食料輸入代金のやりくりの問題に直面する低所得食料不足国や、食料へ所得の多くを費やす貧しい世帯にとって重大な懸念となるであろう」と解説している。
気候変動も要因のひとつ
原因には、さまざまな要素が絡み合っている。新興国における需要の拡大、世界的な過剰流動性による投機資金の市場への流入などが指摘されているが、理由のひとつに「気候変動」があることも間違いない。昨年、11月にFAOは既に「国際社会は2011年には食料価格が更に上昇する可能性があることを認識しなければならない」との警鐘を発していた。実は、FAOは2010年の世界の穀物生産を対前年比1.2%の増大と予測していた。それをこの月に2%の減少と訂正した。FAOの報告書によれば、「天候不順による予想外の供給不足がこの方向転換の原因である」と結論付けている。
日本においても、気候変動の影響は顕在化しつつある。その状況は、農林水産省の「平成21年地球温暖化影響調査レポート」に詳しい。例えば、乳製品についてみれば、夏期の高温が、酪農における乳量・乳成分の低下、繁殖成績の低下、斃死、疾病の発生などをもたらす。また、飼料作物については、夏期の高温、冬季の少雨らによる夏枯れ・冬枯れなどが中心として報告されている。
こうした影響に対しては、(1)直接的冷却技術の導入(送風機、噴霧機、換気システムの利用等)、(2)間接的冷却技術の導入(植林、断熱材、遮光ネットの利用、屋根への石灰散布等)、(3)給餌・給水技術の改善(ミネラル給餌、夜間給餌量の増加、冷却水の給与等)、(4)夜間放牧などの対策が講じられることになるが、これらが乳製品のコスト上昇要因となること間違いない。
いまから7年前、イギリスの新聞オブザーバーがスクープした米国国防総省(ペンタゴン)が極秘裏に作成した地球温暖化の安全保障上の影響を研究した報告書のことが思い出される。この報告書では、地球温暖化が向こうに20年の間に、軍事的衝突や自然災害を引き起こし数百万人の命を奪う可能性があり、将来、大干ばつ、飢饉、大規模な暴動が世界を覆って、多くの国々が限られた食糧、水、エネルギー供給を守るために核兵器を開発することで地球は無政府状態に陥ると予測していた。また、地球温暖化がもたらす世界秩序の流動化は、テロとの戦いよりも深刻な問題だとする意見も掲載されていた。
このシナリオが現実になる事態だけは避けなければならない。フランスのサルコジ大統領の呼びかけで、6月にG20として初めての農業大臣会合をパリで開催し、穀物や砂糖などの価格の上昇がチュニジアやエジプトの政治的な混乱の一因になったという認識を前提に、国際的な食料価格の高騰への対策を話し合うことになったという。
ユニリーバの壮大な戦略
こうしたなか、世界最大級の消費財メーカーであるユニリーバ(英・蘭)が昨年12月に発表した成長とサステナビリティを両立させる新しいビジネスプラン「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」が関係者の注目を集めている。このプランでは、成長戦略の一環として「環境」「すこやかな暮らし(健康・衛生/食)」「経済発展」の3つの分野に取り組むことを公約し、それぞれの分野について2020年までの数値目標およびアクションプランを公表している。そのひとつには「原料として使用する農作物を2020年までに100%持続可能なものにする」との目標があり、具体的に、パーム油、パッケージ用の紙およびボール紙、大豆、紅茶、果物および野菜、ココア、砂糖、ひまわり油、菜種油、酪農品、卵について取り組みが詳述されているのである。
この内容を見て気づかされるのは、食品メーカーとっては「原料として使用する農作物」をいかに安定して調達するかが、今後のバリューチェーン上の核心になるということだ。このプランは、一見CSRの取り組みを題材にしているように見えながら、「持続可能性」という錦の御旗のもとに原材料の供給者を囲い込んでいく壮大な戦略だと見えなくもない。
気候変動が企業戦略自体を突き動かす時代を迎えたというと、大袈裟に過ぎるが、「環境問題がビジネスモデルの再構築を要請し始めている」という事例はあちこちで出始めている。レアメタルの話題に代表されるように、世界は「奪い合う経済」に徐々に移行していかざるを得ない。そこで人々の持続可能性と企業の継続性にどう折り合いをつけていくのか。企業は、難しい決断を迫られ続けることになるだろう。
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