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(回答先: かつてない繁栄を謳歌する米国企業 投稿者 tea 日時 2011 年 2 月 11 日 03:53:21)
ドイツの10年:輸出テコにG7で首位 ドイツ経済:奇跡の国のアンゲラ
2011.02.11(Fri) The Economist http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5437
G7諸国の中で、過去10年間に最も実績を上げたのはどこの国か? そして、その国は現状を維持していけるのか?
過去10間、G7の中で最も高いパフォーマンスを示したのは実はドイツ(写真はベルリンの名所ブランデンブルク門)〔AFPBB News〕
ユーロ圏は足を引きずって歩いているかもしれないが、最大加盟国は疾走している。ドイツは2010年に過去20年間で最も速いペースで成長した。3.6%という成長率は、昨年の国内総生産(GDP)成長率が2.9%だった米国を含む大半の先進国の上を行く。
懐疑論者は、ドイツの力強い回復は単に、景気後退期に生産高が他国よりも激しく落ち込んだ反動に過ぎないと主張する。各国の相対的なパフォーマンスを的確に評価するためには、もっと長期、例えば10年間の動向を検証する必要があるだろう。
一見すると、10年間の数字は、ドイツが出遅れているという一般的な見方を裏づけているかに見える。何しろドイツのGDPは過去10年間で年平均 わずか0.9%しか拡大しておらず、伸び率は米国のたった半分だ(まだ通年のGDP統計を公表していない国については、本誌=英エコノミスト=が各種機関 から聞き取り調査した2010年の推計値を使った)。
だが、これはミスリーディングだ。米国経済の方が成長ペースが速かった一因は、移民の流入と高い出生率のおかげで年間1%近く人口が増加してきたことだ。対照的に、ドイツの人口は減少している。これは大きな意味を持つ。なぜなら、繁栄のより正確な基準となるのは、GDP成長率ではなく、1人当たりGDP成長率もしくは平均所得だからだ。
この基準では、かなり違ったランキングになる。過去10年間で、ドイツの1人当たりGDP成長率は先進国クラブであるG7の中で最も高かった。米国は5位どまりだ(図参照)。
1人当たりGDPは、近年の景気後退にも新たな光を投げかける。2007年第4四半期以降の1人当たりGDPの落ち込みを見ると、ドイツの景気後 退は米国ほど深刻でなかったことが分かる。さらにドイツは昨年、G7の中で唯一、1人当たりGDPを2007年を上回る水準まで回復させている。
ベルリンがベイエリアを追い越す
ドイツはほかにも複数の経済指標で高いスコアを叩き出している。同国はG7の中で2010年の失業率が2001年実績を下回ったたった2カ国のうちの1つだ。6.6%という現在の失業率(国際標準の定義に基づく)はG7中2番目に低く、米国の9.4%*1よりかなり低い。今では旧東ドイツの失業率が初めてカリフォルニア州を下回っている。
ドイツの官民両セクターの財政状態も、ずっと健全な状態にある。これは主に、保守的な住宅ローン制度が住宅および信用バブルを回避する助けになったためだ。家計の債務は過去10年間で可処分所得の115%から99%に減少した。同じ時期に英国の家計債務は117%から170%に跳ね上がっており、米国も100%から128%に上昇した。
さらにドイツは、財政赤字ならびに対GDP政府債務が最も少ない。図に示した基準(1人当たりGDP成長率、失業率、財政赤字、そして家計の債務)に基づくと、ドイツはこの10年間でG7の中で最も高い成果を上げてきたことになる。国際通貨基金(IMF)は、今後5年間もドイツの1人当たりGDPが最も速いペースで拡大すると予測している。
しかし、潜在的な2つの問題がこのバラ色の未来図に水を差す。1つは、ドイツが突出するもう1つの数値、すなわち、2010年にGDP比5%に相当した同国の巨額経常黒字だ。ドイツ人自身はこれを自国経済力の天晴れぶりのさらなる証拠と見なしている。
ドイツは世界最大の輸出大国の座こそ中国に奪われたが、世界の輸出に占めるシェアは落としていない〔AFPBB News〕
中国という競争相手をよそに、ドイツは2000年以降、G7の中で唯一、世界の輸出シェアを落とさなかった。純輸出の増加は過去10年間のドイツのGDP成長全体の少なくとも3分の2を担っており、この割合は他の経済大国よりずっと高い。
日本の純輸出はGDP成長率の半分を担った程度で、中国に至ってはわずか10分の1を占めるに過ぎない。
これは持続可能な成長の原動力とは言えない。これまで通りにGDPに貢献し続けるためには、ドイツの貿易黒字は毎年増加していく必要がある。そうなればドイツはますます、保護主義の反発に見舞われるリスクと他国の景気後退に脆弱になる。
また、黒字の増加が続くことは現実的でもない。ドイツの貿易黒字は、その他先進国の犠牲の上に膨れ上がった面がある。過去10年間で増加した黒字額の5分の2は、新興国との貿易で生じたものだ。
*1=この記事が出た後に発表された1月の雇用統計では、失業率が0.4ポイント低下し、9.0%となった
実際、過去10年間で、ドイツの対米貿易黒字は米国のGDPに対する比率で収縮した。だが、ドイツは確かに他の欧州連合(EU)加盟国に対して多額の黒字を出しており、EUでは今後数年間で需要が大幅に減退すると見られている。
ドイツの対外黒字は、対外的な強さと同じくらい、慢性的に弱い内需を反映したものだ。長引く賃金抑制と高い家計貯蓄率の影響で、ドイツの消費者支出は過去10年間で年平均わずか0.3%しか伸びていない。
ドイツも少子高齢化が進み、人口が減り始めている〔AFPBB News〕
ドイツのように高齢化が進む国は、労働力が縮小するに従い、将来の年金給付の原資となる外国資産の蓄えを築くために、投資する以上に貯蓄をすべきだ(つまり、経常黒字を出すということ)。
だが、ドイツの対外黒字は大きすぎる。また、その多くが米国のサブプライム債券やギリシャ国債をはじめとしたお粗末な投資先につぎ込まれた。
2つ目のドイツの大きな弱点は、生産性の伸びが比較的緩やかなことだ。製造業の生産性は国際基準で見て高いものの、サービス部門では後れを取っている。煩雑な規制が競争を制限していることがその一因だ。
過去10年間は、緩やかな生産性の伸びは、2003〜05年に実施された労働市場改革が功を奏してより多くの人が働くようになったことで補われ た。だが、今後数年は、ドイツの労働力人口は総人口比で縮小していく。生産性の伸びが上向かない限り、1人当たりGDP成長率は鈍化する。
この10年間、ドイツがG7リーグの中でトップに立ったのは、主に同国が信用バブルをうまく回避したからだ。だが次の10年も現在のパフォーマンスを維持していくためには、国内消費とサービス部門双方の活性化を図る必要がある。
朗報は、昨年のドイツの成長の大半が、輸出でなく、内需から来たことだ。企業投資が先導的な役割を果たしたが、第4四半期には実質消費者支出が前年比2%近くも伸びた。ほぼ20年ぶりの低さとなった失業率は恐らく今年賃金を押し上げ、家計が所得のより多くを消費に回すのを後押しするだろう。
このような「ドイツ製」の景気回復は、同国がペースを緩めず成長し続けることを可能にするはずだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5409
ドイツがちゃんと成し遂げたことと、まだできていないこと。
ドイツ経済はこの10年、G7諸国の中でずばぬけた成長を見せてきた(写真はBMWのディンゴルフィング工場)〔AFPBB News〕
西側諸国はいみじくも、中国経済の奇跡に驚嘆してきた。だが、自陣の真ん中で起きている比較的小さな奇跡にはあまり気づいていない。そろそろ、ドイツの新たな「Wirtschaftswunder(経済の奇跡)」に目を向けるべき時だ。
ドイツは製造業受注が涸渇したことから深刻な景気後退に悩まされたが、経済はその後力強く回復し、2010年には3.6%の成長を見せた。この成長率は、他のほとんどの先進国と比べても際立って高い。
ドイツ経済の奇跡再び
確かにこの数字の一部が著しい落ち込みの後の「バンジージャンプ効果」であることは否めないが、これは1年限りの奇跡ではない。
ドイツの失業率は下降を続けており(現在は1992年以降、最低となっている)、経済の繁栄は国民1人当たりの国内総生産(GDP)成長率にも反映されている。こうした複数の指標から見て、ドイツは過去10年間にわたって、G7諸国の中でずばぬけた成功を収めてきたと言える。
アレンスバッハ世論調査研究所の調査からは、ドイツは2000年以降で最も楽観的なムードで2011年を迎えたことがうかがえる。Ifo経済研究所が発表する同国の企業景況感指数は、20年前の調査開始以降で最高の水準となっている。
ドイツの秘密とは何なのか? ドイツが不動産バブルや信用バブルを経験しなかったことや、国家財政を見事に管理してきたことも役に立った。
だが、何にもまして、ドイツの成功は輸出に牽引されてきた。大半の豊かな経済大国とは異なり、ドイツは過去10年間にわたり、中国が台頭する中でも世界の輸出高に占めるシェアを減らすことなく保っている。
積極的な産業政策の支持者はご注意願いたいのだが、ドイツ企業が国の支援を受けた強力な研究機関から恩恵を受けているのは確かだとはいえ、ドイツ の成功の要因は、政策立案者の中に、成功しそうな部門を見分ける天才がいたことではない。ドイツの成功には、運も一役買っている。
ドイツは中欧の玄関口に位置するため、すぐそこに安い労働力を抱える後背地が広がっている。この立地に助けられて、ドイツ企業は生産効率を上げ、賃 金を低く抑えることができた。また、ドイツ企業は偶然にも、まさに好景気に沸く中国が求める製品を製造している。高級車、さらには中国の工場が「世界の工場」になるための各種機械装置もそうだ。
つまり、ドイツはグローバル化の供給サイドでも需要サイドでも大きな勝利を収めてきたわけだ。ユーロ圏の存在も、スペインやギリシャといった国々からの需要(持続的なものではなかったが)という形で、ドイツに金脈を提供した。
だが、ドイツ企業に関する別項でも触れたように、そこには多くの技能の存在もあった。ドイツの企業は、派手ではないが利益の上がるニッチを見つけだす能力に長けている。そして、そのニッチで最高の企業となるために、徹底して力を注ぐのだ。
中小企業群の強さと経済自由化
この傾向は、ドイツ経済の屋台骨を支えるミッテルシュタント、すなわち中小企業で特に顕著だ。ケーニヒ&バウアー(印刷機)やライツ(木材加工用 機械)、ルッド(産業用チェーン)といった企業は、よく知られた名前ではないかもしれないが、その分野では世界を代表するメーカーだ。
近年の自由化に向けた改革も、経済を後押ししている(写真はドイツの商業、金融の中心地フランクフルトの街並み)〔AFPBB News〕
そうしたドイツの伝統的な長所は、近年の経済自由化に向けた改革のおかげで、今やさらにその力を発揮している。
アンゲラ・メルケル首相の前任者である社会民主党のゲアハルト・シュレーダー前首相の下で進められた、いわゆるハルツ改革により、労働市場の柔軟性が高まり、失業手当に頼る暮らしよりも、働く方が多少は魅力的な選択肢になった。
また、銀行の株式持ち合いが緩和されたことで、ドイツ企業では甘やかされた馴れ合いの空気が薄れ、企業経営者は以前よりも自由に業績の悪い事業を切り捨て、成長分野に注力できるようになっている。
加えて、ドイツ企業は景気下降局面で賭けに出た。需要が早急に回復すると信じ、政府の助成金も活用して労働者を保持し続けたのだ。事実、需要は回復し、技術と労働力を保っていたドイツ企業は、景気の好転に素早く反応できた。
中国とよく似たドイツの課題
アンゲラ・メルケル首相は欧州諸国に対し、ドイツを手本にするよう呼びかけているが、ドイツのモデルにはまだ重大な欠点が残っている〔AFPBB News〕
こうした背景を踏まえると、このところのドイツ首脳たちの発言に、ちょっとしたうぬぼれが垣間見えるのも頷ける。1月末、ダボスで開催された世界経済フォーラムを訪れたメルケル首相は、欧州諸国に対してドイツの経験から学ぶように呼びかけた。
ドイツを手本にすればすべてうまくいく――同首相のメッセージはそのように聞こえた。
ドイツ企業の規律や、ニッチへの注力、人材を重視し育成する手法、そして国レベルの労働市場改革や健全な財政を手本にすることは、確かに他国にとって役立つかもしれない。
だが、ドイツのモデルには、2つの重要な点で欠陥が残されている。1つは、国外の需要に頼りすぎていることだ。この点は、2010年にはGDPの 5%に相当する額になった、過剰な経常黒字を見ても明らかだ。その一方で、消費支出に力がない(これが現政権への支持率が低い理由でもある)。
すべての欧州諸国がこの手本にならえば、間違いなく経済の停滞につながるだろう。ドイツに必要なのは、中国と同様、経済成長のバランスを是正し、国内需要の押し上げに力を注ぐことだ。ドイツでの支出が増えれば、景気低迷にあえぐ他の欧州諸国にもプラスとなるはずだ。
お手本となるべきドイツにとって2つ目の汚点は、生産性の向上が進んでいないことだ。製造業分野の優れた能力とは対照的に、それよりも規模の大きいサービス部門は、依然として過剰に保護され、効率も悪いままだ。競争を促進し、規制を減らす必要があるだろう。
国内支出を高め、生産性を向上させなければ、ドイツの成功はいずれ行き詰まる。このところ、消費支出がより大きな役割を果たし始めていることは、 明るい兆しと言える。次に手をつけるべきは、生産性を高めるためのサービス産業の改革だ。ドイツの奇跡は道半ばで、まだ十分とは言えないのである。
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